「大阪革命」は、「反革命」によって、当面頓挫しました。しかし、橋下市長の発言は、革命の火種が決して消えていないことを示しました。
当初共産党が提出を決め、要請も運動もしていた辞職勧告に対して、自民・民主が「問責」で賛同一致し、そこに公明が乗るか反るか、でしたが、同時選挙の脅し(けん制)で公明がビビり、日和、採決の結果、いずれも実現しませんでした。
こうした動きは、今沖縄の自民党と県民が普天間の県外・辺野古移設かどうか、公約をめぐって「体験」していることです。鳩山バージョンが進行形です。鳩山首相を攻撃していた自民党が、です。
このことは、北海道を中心としたTPPの攻防、原発廃炉を決めた福島も、同じです。東京の本部と地方の県連の矛盾、「ねじれ」です。国民要求に寄り添った対応ができるかどうか、参議院選挙は、公約をめぐって国民的討論が発展できれば、大きな動きが起こるかもしれません。それもこれも、マスコミが正しく伝えるかどうか、です。そのような事態をつくりだすために、どのような運動が展開できるか、それもベクトルの要因として考慮していく必要があります。
さて、以上のような矛盾=「ねじれ」が、大阪でも起こるかどうかでした。橋下維新の会の推進してきた政治の「成果」に対して、慰安婦問題に端を発した一連の動きは、本質的には、安倍自公政権の政治を推進していくかどうか、大阪市民の要求の深刻さを浮き彫りにしたように思います。
そこで、橋下市長の記者会見の発言です。
橋下市長「誤解が生じたこと、市民に申し訳ない」 2013/5/30 22:24 http://www.nikkei.com/article/DGXNASHC3003K_Q3A530C1000000/?dg=1
一連の従軍慰安婦などを巡る発言については「誤解が生じたことは市民に申し訳ないと思う」とおわびの言葉も口にした。一方、発言自体は「今も正しいと思っている」と述べ、撤回しない考えを示した。 橋下市長は「問責という言葉は政治家にとって『辞めろ』『審議に応じない』という意味。関係を断ち切る最後通告のようなもので大変重い」と強調。問責決議には法的拘束力はないが「問責を突き付けられても市長を続ける人もいるが、信を問う市長もいる。これまで送ってきた人生スタイルも影響する」と語った。 松井一郎府知事や野党会派幹部らとの交渉内容を問われても「議会との話の中で解決したこと」「議会とは決着がついたので、それで十分」と、詳細は明かさなかった。 自民、民主系、共産が提出した問責決議案は否決されたものの、公明が同じ文面の「猛省と責任の自覚を促す決議」を提出し賛成しており、「(2つの決議を合わせれば)過半数になる。重く受け止めないといけない」と繰り返した。(引用ここまで)
大阪市議会で市長問責否決 橋下氏、辞任の意思がないことを明言
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00247086.html
松井幹事長は「問責(決議)は(市長を)辞めろということです。可決されれば、まさに動かない政治になってしまいます。そのときは(出直し市長選を行い)、民意をしっかりと問うということになるんでしょうね」と述べた。出直し市長選を示唆する松井幹事長の発言に、事態は急変した。問責決議案に賛同する予定だった第2会派の公明党が、一転、反対に回った。予定より、およそ5時間ほど遅れて始まった議会。そして、橋下氏の問責決議案は否決された。日本維新の会の国会議員は「こっちは、ダブル(選挙)でも受けて立つ気持ちだったけどね」とした。午後9時50分、橋下氏は「もう全て、今回の件は終わりましたんで」と述べた。(引用ここまで)
もう一つ。この「「議会との話の中で解決したこと」「議会とは決着がついたので、それで十分」という橋下氏発言は橋下氏のネライ、頭の中を象徴しています。アメリカも一市長のことは問わないとなりました。市議会も否決。これで起死回生を狙った手を打ってくつことでしょう。しかし、橋下氏の本質は何ら変わっていないのです。
今回の問題の本質は、侵略戦争の責任と歴史認識問題、慰安婦問題の正当化をとおして、侵略戦争の反省のうえに確定した憲法の改悪世論を高めていくために「自由主義史観」「靖国神社史観」「大東亜戦争正当化史観」グループが仕組んだ扇動でした。
こうした時代錯誤に対して、戦後の教育や政治、学問の世界やマスコミ報道を要因として、日本国民総体としてけじめをつけていない到達点が改めて明らかになったことでした。
これは「屈辱の日」を「祝日の日」として、天皇陛下万歳をさせるという演出にも象徴されていました。こうした一連の動きが国際社会から孤立していることを改めて示しましたが、国民的討論を経て克服していくと言う点では、まだまだでした。偏狭なナショナリズムの沈殿物が妨害しているからです。
こうした不純物をいっそうするための特効薬として国民的討論を起こす絶好のチャンスでした。しかし、マスコミはそのような特効薬を投薬するのではなく、政局報道に終始し、政治的不信を煽ることで妨害しているのです。それが、今回の問責決議「報道」でも、充分検証できる、というのが、愛国者の邪論の見方考え方です。
橋下市長への問責決議案は否決 5月30日 23時26分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130530/k10014968631000.html
大阪市議会で市長問責否決 松井幹事長の発言で公明が方針転換(05/31 06:25)
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00247094.html
…橋下市長は「文章が同じもの(決議案)が、過半数を超える議席で、議会から出てきたわけですから、しっかり重く受け止めなければいけません。(出直し市長選は?)しません」と述べた。橋下市長は「一連の発言が誤解を招き、市民に申し訳ない」と話す一方で、「言っていることは正しい」と、あらためて強調した。(引用ここまで)
この傲慢発言に対して、公明党はどのように対応するのでしょうか?
「俺の言ってることは正しい」がそれを誤って報道(誤報)したマスコミが悪い。それを「誤解」した、誤って理解された市民も悪いということを橋下市長は言ってしまったのです。この発言の意味は大変大きいと思います。しかし、現段階において、この発言を問いただしているマスコミはいません。ここに大きな問題が潜んでいるのです。政局報道に集中しています。
この発言こそ、橋下氏の思想のバックボーンなのです。都合が悪ければ、口で誤り、訂正し、謝罪する、しかし腹の中の中は、「俺は正しい」のです。この視点で政治が振り回されてきましたが、未だこのことを見抜いて報道がなされているとは思えません。
NHKは、トンチンカンのニュースを流しました。ここにマスコミの立場が見えてきます。同時に橋下市長がマスコミを使って躍進してきた手法が見えてきます。
橋下市長問責否決も市議会対応が課題 5月31日 4時27分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130531/t10014972823000.html
…橋下市長は、記者団に対し、「文章の中身が同じ決議案が過半数の議席から出されたことは、重く受け止めなければいけない」と述べるとともに、出直しの市長選は行わない考えを示しました。問責決議案は否決されたものの大阪市議会で、与党会派の大阪維新の会は、過半数を確保しておらず、橋下市長が掲げる大阪府と大阪市を再編する「大阪都構想」の実現に向けた取り組みや、市営地下鉄の民営化などは進んでいません。このため、橋下市長にとっては、こうした政策の実現に向けて、どのように公明党など野党側の理解を得るのか、市議会への対応が引き続き課題になりそうです。(引用ここまで)
重く受け止めるのであれば、というか、そもそも、市民に迷惑をかけたのであれば、辞職すべきと報道すべきです。この間の大阪市職員の刺青問題や君が代口パク問題、体罰による自殺事件問題などなど、その都度過激な、挑発的言動を繰り返してきた橋下氏が、己自身にも、過激な挑発的な言動をすべきです。そうすれば、市民は、またまた拍手喝采をしたでしょう!
もう一つ、NHKは、「大阪都構想」や民営化などが進んでいない、政策実現に向けて野党の理解を得るために引き続き課題があると、市長の進める政策を応援しているのです。こうしたトリックは安倍自公政権に対しても随所で行っています。こうした言葉を聴いている国民がどのような回路を結んでいくか、分析が必要です。
批判しているようでいながら、応援しているのです。批判的装いで政治に対する不満を感じている国民との接点を作り出しながら、実はその不満を取り込み、とんでもない方向に扇動していくのです。
橋下市長問責否決:公明、参院選への影響懸念で 毎日新聞 2013年05月31日 02時05分(最終更新 05月31日 02時47分)http://mainichi.jp/select/news/20130531k0000m010152000c.html
公明党にとって、大阪選挙区は公認候補を擁立し、比例票の上積みを目指す重点地域だ。橋下氏が出直し市長選に出馬すれば、相乗効果で参院選でも維新が票を伸ばし、公明党の選挙運動にも影響する恐れがある。党幹部は「出直し市長選になれば『橋下氏一色』になり、参院選がかき消されかねなかった」と説明する。 一方で、単純に問責決議案に反対しただけでは、橋下氏の一連の発言を容認したととられかねない。このため「猛省と責任の自覚を促す決議案」を単独で提出するというわかりにくい対応となった。結局、問責決議案の否決で橋下氏が一矢報いた形となり、自民党幹部は「放っておけば維新の支持率は落ちていくのに、稚拙だ」と同党市議団の対応を批判した。 しかし、維新の厳しい状況が大きく変わったわけではない。維新の国会議員団内では、橋下氏の出直し市長選という「奇手」に対し、小沢鋭仁国対委員長が記者団に「(選挙戦が)盛り上がる」と発言するなど期待感もあった。問責決議が否決されても意気は上がらず、ベテラン議員は30日、「参院選で大敗すれば橋下氏には責任を取って共同代表を辞めてもらう」と漏らした。(引用ここまで)
橋下市長への問責決議案を否決 公明が反対に転じる 2013年5月30日23時30分
http://www.asahi.com/politics/update/0530/OSK201305300021.html
問責決議案とは別に、公明は単独で、表題から「問責」の言葉を抜いた「橋下市長に対し猛省と責任の自覚を促す決議案」を提出。内容は3会派が提出した決議案と同じだったが、こちらも他会派の反対多数により否決された。本会議閉会後、橋下氏は記者団に「決議には至らなかったが、文章が同じものが過半数を超える議席から出てきたことは重く受け止めなければならない」と述べ、出直し市長選は「しません」とした。 公明は市議会で維新と協調路線を取ってきたが、支持母体・創価学会の婦人部を中心に発言に対する反発が強く、29日、問責決議案に賛成する意向を固めた。(引用ここまで)
さて、毎日・朝日の記事を読むと、公明党の思惑を紹介しながら批判しているようにも思います。しかし本当に批判しているでしょうか?辞職勧告決議から問責決議へ、そうしてチャラにした経過を踏まえるのであれば、共産党の動きと見解を紹介すべきですが、それはありません。
共産党の動きを紹介したのは、愛国者の邪論の調べた限りでは、以下の記事だけです。たったこれだけです。ここに日本のマスコミ報道の仕方と本質があります。
「出直し選」盾に窮地脱出=公明、苦渋の方針転換-橋下氏 (2013/05/30-23:26)
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2013053000984
共産党の志位和夫委員長は記者会見で「橋下氏に公人たる資格はない」と辞任を迫った。(引用ここまで)
大阪市議会腰砕け=橋下流「独特の手法」に屈する (2013/05/30-23:44)
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2013053001078
これに対し、共産党市議団の北山良三団長は「公明党が屈したことは、批判を浴びても仕方ない」と無念の表情。幹部の一人は、出直し市長選を持ち出した橋下市長らに「逆ギレして、そこまでするかという感じだ」と憤った。
以下、証拠として、一連の報道を掲載しておきます。
橋下氏「重く受け止め」問責否決、出直し選否定(2013年5月30日23時27分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130530-OYT1T01139.htm?from=main2
【橋下氏慰安婦発言】橋下氏一問一答「(出直し市長選)公には言っていない」2013.5.30 23:41
http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/130530/waf13053023460034-n1.htm
橋下氏問責を否決 出直し大阪市長選回避 2013年5月30日 22時15分
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013053001001611.html
橋下市長の問責決議案が否決 公明党が反対に転じ(05/31 05:50)
http://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000006299.html
橋下市長「揺さぶり」に市議会迷走…問責否決 (2013年5月31日07時06分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130531-OYT1T00010.htm?from=popin
以上、橋下・松井両氏が仕組んだメディア作戦を、昨日とあわせてみてみました。彼らは、シメシメと喜び合っていることでしょう。当面辞職しなくてすんだのですから。しかし、それは甘い!と言えます。反革命的策謀に対しては、国民の要求を対置していくしかありません。どれだけ、国民の要求を踏みにじった行為であるか、そこにすべてがかかっていると思います。道理は国民の側にあるのですから。それは日本の歴史に数限りなくある事例です。