アンダンテのだんだんと日記

ごたごたした生活の中から、ひとつずつ「いいこと」を探して、だんだんと優雅な生活を目指す日記

バッハの「魔法」

2014年01月08日 | バイオリン
長年、「四十になったらバイオリンを始めよう」と考えていたわりに、バイオリン曲に関する知識は非常に少なかった。

「こんな曲が弾けたらいいな」という憧れ曲は、あるにはあったんだけど…

   にほんブログ村 クラシックブログ ヴァイオリンへ←今のところ、チョビくんには魔法かかってない(^^;;

私が今、ハマっている小説の一節に、こんな記述がある。
主人公がこれからチェロを習おうとして、初めて先生のところに行き、最初に買う楽器を奨めてもらっている場面。先生がそのチェロを弾いて聞かせてくれる。
---
空気が引き締まって、部屋が縮まったようにさえ感じた。お腹のあたりにずんとくる低音から、空気になって空へ抜けていくような高音まで、分散和音(アルペジオ)を一気に駆け上がり、メロディのかけらをかいま見せると、また分散和音に戻っていく。その繰り返しがえんえんと続いた。十六分音符のほかは休符ひとつ、和音ひとつない。単なるアルペジオの羅列のようでもある。けれどもそれは同時に、単旋律でパイプオルガンのように豊かなハーモニーを浮かび上がらせる、魔法のような音楽だった。
---「船に乗れ! (1) 合奏と協奏」(藤谷治)

この曲というのが、バッハの無伴奏チェロ組曲第一番の最初、ト長調のプレリュード。
(ミーシャ・マイスキーさんの演奏でどうぞ)

これぞ弦楽器という、シンプルな音の中に凛とした美しさのある曲ですね。これが頭の中でエンドレスでかかると止められないというか。

それで、このイメージなんですよ。私が、「弦楽器やりたい」と思ってたのは。

…え。はい。これは、チェロですね。

私が習ったのは、バイオリンです。なんでこういうことになったかというと、「弦楽器やりたい」のイメージが先行して、漠然とした憧れ曲はチェロ曲なんだけど、そこのところははっきり意識に上らないまま、「弦楽器の王様はやっぱバイオリンでしょ」とか「持ち運びしやすいほうが」みたいなことを考えてバイオリンになったんですよね。

だから、白状しますと、バイオリンを習い始めてしばらくしてからようやく、「あ、あの曲ってバイオリンじゃないじゃん!!」と気がついたんです。ばかですね。すごく。ありえん。

チェロの曲をバイオリンで弾くというのは、ないことではなくて、たとえば「あたばよ」教本の二冊目に載ってる「バッハ ブーレ」は無伴奏チェロ組曲に含まれている曲です。

というか、そもそもハナっからバイオリン用の曲を、バイオリン初心者が弾けるわけないのでね。そういうことになるんですが。確かに、ブーレなら、バイオリンで弾いても悪くない曲です。でも、ト長調のプレリュードはありえませんね。

そんなこんなで、自分のバカさ加減に思わずクラッとくる状況だったのですが(バイオリンを習ったこと自体はちっとも後悔してませんけどね)、ここんとこ、無伴奏バイオリンパルティータ第三番プレリュードと格闘して、あらためて「コレだ!!」という気分になりました。

曲は違いますけど、上記に引用したような、バッハの「魔法」の曲ですね。おんなじです。それが、ちゃんとバイオリンの特性を極限まで生かした形で表れている。

チェロでもバイオリンでも、私が憧れた「魔法」にちゃんと道がつながっている。と思ったんです。
(つながっているだけ。遠いんだけど。)

にほんブログ村 ピアノ  ←ぽちっと応援お願いします
にほんブログ村 ヴァイオリン ←こちらでも
にほんブログ村 中高一貫教育
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする