音楽ネタを書くときに便利に引用している小説「船に乗れ!」は、別に音楽についての本というわけではなくて、第一義的には「青春小説」のジャンルに属するものである。
←ラノベばっかり読んでないでさ~
そして青春というものは、傲慢と、不安と、友情と、恋と、挫折と、成長と、そんなもろもろがないまぜになったものだったんだなぁとあらためて思いつつ。その全部がどっぱーんと押し寄せてくる相当ディープな小説を、音楽の勢いも加わって一気に読まされた感じ。
なにしろ三冊シリーズ(長い)なので、最初に買うときはためらったんだけど、高校一年生から三年生まで、律儀に一巻ずつで進んでいくので、三冊かかるのはしかたがない(?)
主人公の男の子は、音楽一族の中にあって音楽を専門としない両親から生まれた子で、小さいころから当然のようにピアノを習ったけれども(おばあさまの手ほどきで)、たいしたことなかったので中学生からはチェロに転向し、それは性に合ってたのかぐっと上達した。それでまた当然のように、芸高を受けたんだけど音楽関連のテストは全部通ったあと学科で落ち、おじいさまが学長をしている私立音高に入学するというところから物語は始まる。
著者は実際に音楽高校(洗足)に通い、チェロを弾いていたようなので、主人公の経歴とは矛盾しない。実際のところ、「青春小説」ネタのどのくらいが自分のものだったのか、つまりどのくらい自分史的なのか知らないし、小説なのだから当然フィクションや、ほかの人の経験なども混ざっているだろうけれど、細かいところまであまりに詳細に…青春の恥ずかしさがぎっしり詰まっているところが、ぜんぶご本人のエピソードなのでは(^^;; と錯覚させる力がある。
最初、本屋でパラパラみているとき、「こりゃ買わなきゃ」と思ってしまったのは、ごくはじめのほうにある、次の部分だった:
----
あの頃の僕は(略)むら気で、高慢で、同級生を馬鹿にするのがユーモアだと思っているような子供だった。小学校二年生のときに「小学五年生」を読んでいた。(略)実際に五年生になった頃には、もう小学館の雑誌なんか馬鹿らしくて読むに耐えず、ツルゲーネフの「はつ恋」を読んでいた。
(略)
小学校を卒業してから中学二年の夏休みまでの間に、僕はヴァレリーの全集を読破していた。少なくとも読破したと信じていた。全巻の全頁をめくりはしたわけだから、とにもかくにも。
僕はこういうことを子供時代の自慢話として書いているわけではもちろんない。今の僕はポール・ヴァレリーのことなんか何一つ知らないし、『共産党宣言』にも相変わらず何が書いてあるのかよく判らない凡人だ。だけどこれを、ああこいつ自慢をしてやがる、と思ってもらってもかまわない。あの頃の僕は実際にそういう本の頁をめくっていることが自慢だったからだ。読んでいるとはどう考えてもいえない本の頁をめくって教室で自慢げにしている子供。僕はそういう奴だった。
----
この主人公はこのあとニーチェに傾倒していき、この小説の進行上、ニーチェのからみはキーポイントのひとつになる。
細部は違うけれども、私もそういうコドモだった。私も、中学生時代(あるいは高校生時代にも、たぶん)、ニーチェとか読みながらも、そのあと…大学生以降は一度も読んでいないと思うし、今となってはどんなことが書いてあったのか記憶にない(^^;;
ただ、別に読んでいたときも特にそれが自慢だとは思っていなかったけど(クラスメイトも、仮に何の本を読んでいるか目撃したとしても、なんとも思わなかっただろう)。
自慢ではない(ならない)にしても、純粋にそれが(ほかの本よりも)おもしろいからそれを読んでいる、というのともやはり違う。よくわけのわからない、難しげなものを読んでみたいという、背伸びする気持ちというのは強くあったんじゃないかと思う。
「青春」のただなかで、自分を探している(という表現が適切かどうかわからないけど)ときに重要なのは、ひとつは「親友」(私にとってのyoyoさんのような)、そしてもうひとつが、(こむずかしげな)「本」ではないだろうか。いずれも、発展途上・試行錯誤をしている自分を映す鏡として機能する。
この小説の主人公は、とにかく哲学書をよく読んでいるし、音楽高校の中ではとかく存在感のない一般教科の中で、「倫理」を担当する教師はみんなを引き付ける印象的な授業をし、そして物語の展開の中で重要な役割を果たす。
やっぱ青春って、テツガクでしょ!?
と、思うんだけど、自分の子どもたちとかを見るにつけ、本をよく読んではいても、私が中学時代に愛読してたようなもの、ヘッセとかドストエフスキーとかニーチェとか、そういうの読まないんですよね、ぜんぜん。全部が、読みやすいものばっかり。
背伸び、したくならないの??
わからないままニーチェを読んでいた自分、というのもこっぱずかしいものだけれども(アラフォーとさえいえなくなった今ようやくカミングアウトできるような)、そんな「こっぱずかしい」青春がないのもどうかと思うんだけれど。
にほんブログ村 ピアノ ←ぽちっと応援お願いします
にほんブログ村 ヴァイオリン ←こちらでも
にほんブログ村 中高一貫教育
はじめての中学受験 第一志望合格のためにやってよかった5つのこと~アンダンテのだんだんと中受日記完結編 (BOOKS) ←またろうがイラストを描いた本(^^)
←ラノベばっかり読んでないでさ~
そして青春というものは、傲慢と、不安と、友情と、恋と、挫折と、成長と、そんなもろもろがないまぜになったものだったんだなぁとあらためて思いつつ。その全部がどっぱーんと押し寄せてくる相当ディープな小説を、音楽の勢いも加わって一気に読まされた感じ。
なにしろ三冊シリーズ(長い)なので、最初に買うときはためらったんだけど、高校一年生から三年生まで、律儀に一巻ずつで進んでいくので、三冊かかるのはしかたがない(?)
主人公の男の子は、音楽一族の中にあって音楽を専門としない両親から生まれた子で、小さいころから当然のようにピアノを習ったけれども(おばあさまの手ほどきで)、たいしたことなかったので中学生からはチェロに転向し、それは性に合ってたのかぐっと上達した。それでまた当然のように、芸高を受けたんだけど音楽関連のテストは全部通ったあと学科で落ち、おじいさまが学長をしている私立音高に入学するというところから物語は始まる。
著者は実際に音楽高校(洗足)に通い、チェロを弾いていたようなので、主人公の経歴とは矛盾しない。実際のところ、「青春小説」ネタのどのくらいが自分のものだったのか、つまりどのくらい自分史的なのか知らないし、小説なのだから当然フィクションや、ほかの人の経験なども混ざっているだろうけれど、細かいところまであまりに詳細に…青春の恥ずかしさがぎっしり詰まっているところが、ぜんぶご本人のエピソードなのでは(^^;; と錯覚させる力がある。
最初、本屋でパラパラみているとき、「こりゃ買わなきゃ」と思ってしまったのは、ごくはじめのほうにある、次の部分だった:
----
あの頃の僕は(略)むら気で、高慢で、同級生を馬鹿にするのがユーモアだと思っているような子供だった。小学校二年生のときに「小学五年生」を読んでいた。(略)実際に五年生になった頃には、もう小学館の雑誌なんか馬鹿らしくて読むに耐えず、ツルゲーネフの「はつ恋」を読んでいた。
(略)
小学校を卒業してから中学二年の夏休みまでの間に、僕はヴァレリーの全集を読破していた。少なくとも読破したと信じていた。全巻の全頁をめくりはしたわけだから、とにもかくにも。
僕はこういうことを子供時代の自慢話として書いているわけではもちろんない。今の僕はポール・ヴァレリーのことなんか何一つ知らないし、『共産党宣言』にも相変わらず何が書いてあるのかよく判らない凡人だ。だけどこれを、ああこいつ自慢をしてやがる、と思ってもらってもかまわない。あの頃の僕は実際にそういう本の頁をめくっていることが自慢だったからだ。読んでいるとはどう考えてもいえない本の頁をめくって教室で自慢げにしている子供。僕はそういう奴だった。
----
この主人公はこのあとニーチェに傾倒していき、この小説の進行上、ニーチェのからみはキーポイントのひとつになる。
細部は違うけれども、私もそういうコドモだった。私も、中学生時代(あるいは高校生時代にも、たぶん)、ニーチェとか読みながらも、そのあと…大学生以降は一度も読んでいないと思うし、今となってはどんなことが書いてあったのか記憶にない(^^;;
ただ、別に読んでいたときも特にそれが自慢だとは思っていなかったけど(クラスメイトも、仮に何の本を読んでいるか目撃したとしても、なんとも思わなかっただろう)。
自慢ではない(ならない)にしても、純粋にそれが(ほかの本よりも)おもしろいからそれを読んでいる、というのともやはり違う。よくわけのわからない、難しげなものを読んでみたいという、背伸びする気持ちというのは強くあったんじゃないかと思う。
「青春」のただなかで、自分を探している(という表現が適切かどうかわからないけど)ときに重要なのは、ひとつは「親友」(私にとってのyoyoさんのような)、そしてもうひとつが、(こむずかしげな)「本」ではないだろうか。いずれも、発展途上・試行錯誤をしている自分を映す鏡として機能する。
この小説の主人公は、とにかく哲学書をよく読んでいるし、音楽高校の中ではとかく存在感のない一般教科の中で、「倫理」を担当する教師はみんなを引き付ける印象的な授業をし、そして物語の展開の中で重要な役割を果たす。
やっぱ青春って、テツガクでしょ!?
と、思うんだけど、自分の子どもたちとかを見るにつけ、本をよく読んではいても、私が中学時代に愛読してたようなもの、ヘッセとかドストエフスキーとかニーチェとか、そういうの読まないんですよね、ぜんぜん。全部が、読みやすいものばっかり。
背伸び、したくならないの??
わからないままニーチェを読んでいた自分、というのもこっぱずかしいものだけれども(アラフォーとさえいえなくなった今ようやくカミングアウトできるような)、そんな「こっぱずかしい」青春がないのもどうかと思うんだけれど。
にほんブログ村 ピアノ ←ぽちっと応援お願いします
にほんブログ村 ヴァイオリン ←こちらでも
にほんブログ村 中高一貫教育
はじめての中学受験 第一志望合格のためにやってよかった5つのこと~アンダンテのだんだんと中受日記完結編 (BOOKS) ←またろうがイラストを描いた本(^^)