夕飯を食べていたら、テレビで綺麗な満月が、と言っていた。
直ぐに玄関を開けたら、大きな満月が近くのマンションの傍に出ていた。
そういえば、玄関を出ると、直ぐ目の前にまん丸の大きな満月を見る時は、いつ頃だったかな。
私と夫は、家を買おうと決めてから、それこそ、数え切れないほどの物件を見に行った。
私の勤めている会社に一本で行ける路線の、京王線と有楽町線の沿線のマンションを探していた。
住んでいた川崎から、今のマンションを見に行った時、車の両側の景色に、ここは本当に東京都?と思うほどの田舎風景だった。
後で知ったけど、梨畑がずっと続いていたのだ。今は、梨畑が減って寂しい。
着いた京王線の稲城駅の周りには、何にも無かった。
ロータリーにはバスとタクシーが止まっていて、寂しい風景だった。
コンビニと酒屋とパチンコ屋があった。郵便局もあった。
でも、直ぐ目の前に緑豊かな里山が続いていた。
それを見て、「あ、私、ここに決めた。ここに住む」と夫に言った。
ロータリーの傍に建てていたマンションは14階建て。そこから2本目の道の角に立つマンションは7階建て。どっちにしょうかと考えたけど、里山に近い奥のマンションにした。
そして、もう一つの決め手になったのが、大きなまん丸の満月だった。
会社の帰りに、通勤の事を考えてそのマンションを見に行った。
電車を降りて階段を上って改札を出た瞬間、息をのんだ。
駅の周りは何も無く、はるか遠くの都心が目の下に広がり、遮るものも無い広がりに街の灯りを煌めかせていた。
そして、その街の灯りの上に、ちょうど目の前に、大きな大きなレモンイエローの満月が浮かんでいた。
とても本物のお月さんとは思えないほどの、不思議は眺めだった。
あの時の感動を、いまでも忘れない。ここに住む最後の決め手だった。
今は、駅ビルも建ち、もうあの満月を見る事は出来ない。
でも、季節によっては玄関を開けると、目の前に、あの大きなレモンイエローの満月を見る事が出来る。
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