都市徘徊blog

徒然まちあるき日記

鳥居の彼方に

2006-03-14 | 千代田区 

 アイストップが気になる-九段下編。

九段坂下、俎橋付近から、首都高速のガード越しに靖国神社の大鳥居を望む
Photo 2006.1.27

 高さ約25m。離れてみると巨大な鳥居であることがよく判る。

 さて、鳥居の彼方に背の高い鉄塔が見えるが、実はこれは市ヶ谷の防衛庁にある通信塔である。

 偶然なのだろうが、九段下から見たとき、靖国神社の鳥居の延長線上に、防衛庁(旧陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地)はある。参道の軸線とはわずかにずれてはいるが、ほぼお参りの方向に一致する。参拝することとはもちろん基本的には関係がないことなのだが、自衛隊に向かってお辞儀をしていると考えてみると、少々不思議な気分になる。

 九段下・俎橋付近は台地の下側で、地形的には下町の側に属する。一方、靖国神社及び自衛隊は台地上に位置するので、九段下から見ると、坂を見上げたやや上方の彼方にこれらは見えている。靖国神社の大鳥居は当然九段坂の下から見上げられることを意識して作られたものだろう。坂の上方に施設を設け、見上げさせる視覚構造を創ること自体は、靖国神社に限らず神社一般、宗教施設一般に見られることで、特別なことではない。一方の自衛隊の通信塔。こちらも市谷の高台上に高い鉄塔を建て通信を確保するというのは理にかなったことで、妙なことではない。だが、両者が奇妙に一致する特異点が存在するとき、そこでは不思議な感覚が呼び起こされる。

 靖国神社は明治になってから招魂社として設置された施設である。一方、市ヶ谷の防衛庁は江戸期には尾張藩の屋敷だったところで、維新後、これが陸軍のものになり、戦後は陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地に、さらに六本木から防衛庁が移転してきて、現在は防衛庁になっている。市ヶ谷の自衛隊には昔から通信用の鉄塔が建っていたのだが、建て替えられてより高くなり、市ヶ谷の周辺ではあちこちからこの通信塔が見えるようになった。

 そして靖国神社との視覚的な関係も、おそらくその際にはからずも生ずることになった。参道の延長線上に防衛庁があること自体は、地図上では昔から判っていたことなのだが、施設が実際に現場で見えるようになったことで、不思議な関係が不意に意識されるようになった。繰り返すようだが、もちろん両者の施設配置の間には直接の関係はない。あくまで、あちこちから見える市ヶ谷の通信塔が、靖国神社と九段坂の所からもたまたま見えているということであって、拝礼して貰おうとして塔を建てるなんていう、アナクロ・ナンセンスな発想で通信塔を建てるほど自衛隊は暇じゃない。

 ただ一部には、都心部におけるこの手の施設の配置に、何らかの意図が働いているとか、隠された計画が存在する、ということを指摘する向きもある。江戸城と江戸の町が、風水学的にデザインされていると言われるのだから、明治以降の皇室、官公庁関連施設の配置にも、風水などの企図が大なり小なり働いているはずだ、という意見である。東京都心から西へ向かって一直線に皇室関連施設が立地しているとも言われる。その辺の込み入った事情に関しては知らないことが多いので、私はこの件に関して、意見を述べることは全く不可能である。

 政教分離の世の中では、そのようなことが事実かどうかはほとんど検証不能で、そのような説はあくまで仮説に過ぎないともされるが、九段下からのこの光景に接すると、にわかに東京の都市空間には隠された構造があるのではないかと勘ぐりたくなったりする。

#ヴィスタ  #神社  #塔  #階段・坂 千代田区
コメント
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