都市徘徊blog

徒然まちあるき日記

渋谷マークシティ 1

2008-03-03 | 渋谷区  

 地形に少しだけ関連がある建築的階段

渋谷マークシティ・ウェスト1F、井の頭線改札口付近
所在地:渋谷区道玄坂1-12
Photo 2008.2.22

 地形の高低差のあるところにビルを建てると、どうしてもあちこちに階段やスロープを造ることになる。この場所も道路に対して半地下になったり中二階になり、微妙に外の道路と食い違っているため、どちらに行くにも階段を介さねばならない。

 本のなかでは屋外階段しか扱わなかった。建築内部の階段は、建築設計的にきちんと計画されていることが多く、破綻していることは少ない。計画者が一人かごく少数で、一つの階段が一つのタイミングで造られていることにも因っている。

 これに対して屋外階段は長い時間の経過で、何度も部分的に改変されていることが多いし、自然地形の起伏に左右されてしまうことも多い。周囲の住宅地の残地を道に充てることもあるため、その都合で弾力的に造られて更に改修されてしまっている。

 路上の階段と、建築的な屋内階段の大きな違いの一つはこの点にある。計画性の違いというか、意外性や破綻の有無というか・・・。全てがそうというわけではないのだが、私道上にある階段には珍階段が多い。

 デザインされた階段を見ると綺麗だなぁ、美しいなぁと思うし、かっこいいなぁ、凄いなぁとも思う。当初は建築を志した以上、それは当然なのだが、どこかで敗北感のようなものも感じているのも事実だ。こういう美しいのは考えつかないなぁ、自分ではデザインできないなぁと思うわけで、降参してしまうのである。

 一方、屋外階段の中で、場当たり的・非計画的なものはお世辞にも良いデザインではないことが多々ある。そりゃイカンだろっ!、と思うこともしばしば。また、なんでそうなるの??と言いたくなるモノも多い。不条理感さえ漂う姿だったり、珍空間体験だったりするわけだが、それらの階段はどこか憎めない天然ボケ的なものであり、愛すべきキャラクターであることが多い。

 逆にそれをデザイナーが「デザイン」したら、それは「あざとい」。計算されたボケには素直に笑えず、むしろホーッと感心してつい唸ってしまう感じでもある。なんだそりゃとかこれアホや~と言いながらも、自分まで笑ってしまい、つい嬉しくなってしまうのが、非計画的な屋外階段の魅力である。

 どちらが優れているという話ではなくて、どうも両者は質が違うようだ。計画的な階段を見れば、デザインというものの可能性に感嘆するし、計算された美しさを素直に楽しむことができる。一方の非計画的な階段を見れば、並大抵のデザインを超越した「神の手」?に驚くわけで、意外性から来る刺激が独特の感興を呼び起こす。

 また計画された階段でもエイジング(老朽化)が加わると侘び寂び的な手が自然に加わって、非計画の類に次第に近づく。廃墟の美なども、なぜそうなるの?とか、やっちまった系の感動から来るもので、意外性や破綻の意味で私たちに強く訴えかけてくる。

 さて、マークシティのこの階段は、完全に建築の一部なのだが、地形の影響を受けつつそれを利用したものである。モノとしては極めて計画的だが、背後には自然地形の起伏という与条件があり、それを消化する必要に迫られてこうなった。とはいっても建築設計的に計画されたものであり、意外性や破綻からは遠い存在である。

 だが、単純にかっこいいなーと思った。2Fに上る薄く軽い感じのステップと、1Fに下る大きな階段。対照的な上下二つの階段を歩く人を遠近感の中に同時に見ることができる。場所はガード下的な空間なのだが、建築パースに描いたらちょっとかっこよく魅力的に見えそうだ。ああ、やっぱり建築設計をやる人って、いろいろ考えながら設計してるんだな、と思ったのでした。

#屋内階段  #夕景・夜景 
コメント
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