都市徘徊blog

徒然まちあるき日記

Pentax ME-F

2009-07-15 | 写真・カメラ
 父は割合新しいものが好きだった。

Pentax ME-F(1981年11発売)
 Pentax ME-Fは、当時、世界初のオートフォーカス一眼レフを謳っていたような記憶がある。Wikipediaを見ても、Pentax ME-Fこそが世界初の製品化されたAF一眼レフカメラだとある。だが一眼レフカメラのAF化が急速に進んだのは、1985年2月に発売されたミノルタのα7000以降。Pentax ME-Fはそれより3年以上前に発売されていたのに、大したブームにはならず今では半分忘れ去られている。確かに初だったのかもしれないが、AF自体が開発途上のもので問題が多かったらしい。α7000以降、使い勝手の良いカメラが次々に出て、一気に一眼レフもオートフォーカスの時代になったのだった。

 ME-Fは初のAFカメラだったので、発売時に対応するレンズも一種類だけ発売された。しかしこの専用ズームレンズ(SMC PENTAX AF ZOOM 35-70mm F2.8)がエライ代物。後にも先にもこんな形のものは恐らくこれしかないという珍品だった。
 写真にもあるが、レンズ下に大きく出っ張った部分がある。ここに単四乾電池4本を入れて、内部の小さなモーターを動かし、ギヤを介してピントを合わせるのだった。この4本の電池は完全にレンズ用で、本体側ではSR44などのボタン電池をこれまた4つ使う。AFを使わないときは、レンズ前面下のスイッチをOffにする。レンズ駆動専用の電池があってレンズ側に電源スイッチがあるのは、今考えるとかなり面白い。

 現在のAFレンズは本体側に駆動モーターがあるものが多い(レンズに超音波モーターが内蔵されているものもある。)。だがME-Fの専用レンズはレンズ側に軸モーターがあり、これを使ったレンズ駆動に時間が掛かった。無限大側にピントがあった状態から1mぐらいにピントを動かすと、ジーッという音ともに、ハイハイちょっと待っててねー、ピント合わせるからねー、てな感じ。頑張ってる気分が良く出てるので、嫌いではなかったが、動く被写体だったりすると、もうお手上げ。面倒なので目測で適当にレンズを回してから、微調整をお願いするという変な使い方になる。それってAFじゃなくて半AF。
 また、薄暗かったりコントラストが低い対象だと機能しないというのも、初モノゆえの弱点だった。消費電力も大きくしばしばレンズ側で電池切れが起こる。単四電池4本がレンズ側にあるので、ボディ部分を持つと電池の重みで前へ傾いてしまう。仕方がないのでレンズを下から支えるクセがついた。構え方の基本が否応なしに身に付いたのが、なんだか哀しくおかしい。

 父は研究者だったので、実験機材同様カメラも最新型を買いたいと思ったのかもしれない。また老眼だったので、ピント合わせを速く正確にするためにAFカメラを買ったとも言っていた。でも、少々不便だったので結局あまり使わなくなってしまった。
 大学に入学して上京してから暫くの間、私はキヤノンFT+50mmレンズを使っていた。しかし父がこのPentax ME-Fをあまり使わないまま、新しくOlympusのAFカメラを買ったため、私はお下がりを88年に頂戴した。

 建物や街の風景を撮る場合はほとんどの場合、ピントは無限大で事足りる。「撮り鉄」でもないし、運動会を撮るパパでもないので、AFはほとんど不要。スイッチを切って電池を節約するだけでなく、結局は電池も抜いてMF状態にして総重量を軽くしてしまった。合焦の検知は本体側でやっており、ピントが合ったかどうかは分かるので、全く問題なかった。

 学生でお金もなかったので、このカメラは長く使った。後に広角28mmをカバーするズームレンズを購入し、珍品AFレンズの方はあまり使わなくなったが、ボディの方は結局10年間も使っていた。
 このカメラは、1998年にフィルムの巻き上げノブ(巻き上げも手動)が摩滅して壊れてしまった。既に修理用部品のストックが会社に無かったため、修理不能となってしまったが、それまでにフィルムにして450本弱、約15,000コマを撮り、最後まで使い切った感じだったのでほぼ満足だった。新宿三井ビル内にあったPentax Forum(現在は新宿センタービル内)にカメラを持ち込んだ時、「長い間、継続して使っていた割に他は痛んでいませんね。大切に使って頂き有り難うございます。」と言われて、ちょっと嬉しかった。そしてこの時、新しい製品を割安で提供しますと言われ、MZ-3を購入。他の修理屋さんに行けばあるいは修理できたのかもしれなかったが、その時は、もうそろそろ新しいのにしようかなと思っていたので、意地になって修理をすることはせずに素直に新品に替えた。
 カメラなどはできるだけ、大切に長期間使いたい。もちろん使わずに持っているのではなく、ちょこちょこ使って。
Wikipedia > ペンタックスの銀塩一眼レフカメラ製品一覧:35mm判 (KマウントMF機種)
非公式PENTAXファンサイト「PENTAX-FAN」> Pentax ME-F
コメント (2)
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