夕刻の予定がお相手様の都合でキャンセルとなり予定がぽっかり空いた。さて、どうするかと思いネット検索したところ、なんと都響とアラン・ギルバートの演奏会があるではないか!この時季ぴったりの「夏」プログラム。ということで、当日券で東京文化会館へ突撃。
一期一会という言葉がぴったりの、素晴らしい演奏会だった。
冒頭のウェーベルン<夏風の中で―大管弦楽のための牧歌>は初めて聴く曲だが、とっても優しくデリケートな楽曲。13分程度の音楽の中に、様々な変化が織り込まれていて魅力的だった。この日は前列3列目という座席も、微妙な弱音がしっかり聴こえてきたのも幸運。1曲目からかなり満足度高い。
続いて、モーツァルトのホルン協奏曲第4番。今回のホルン独奏のシュテファン・ドールはベルリンフィルの首席ホルン奏者ということで、大物ならではの横綱演奏。悠々自在のホルンの音色が実に伸びやかだった。アランと都響の演奏は、伴奏というよりも一緒に音楽を楽しむ仲間という風情。近くに座ると、楽員さんの表情まで楽しめるのは良いですね。
しかし、何といっても圧巻は後半のアルプス交響曲。今年4月にパーヴォ/N響で聴いたばかりの楽曲で記憶もまだ新しいのだが、アランと都響ってこんな演奏をするんだと舌を巻いた。デフォルトがNHKホールの3階席なので、楽団の違いか、座席の違いか、(もちろん指揮者の違いか)の区分けなど私にはできないのだが、音量・音圧の凄まじさ、管・弦・打の夫々の楽器の主張が際立っていた。
中でもアルプスならではのホルンの響きが凄まじく。文化会館を突き抜けるほど。こんな凄い金管陣が都響には居るのだと感嘆した。が、これは演奏終了後に、前半のソロ奏者シュテファン・ドールが後半もホルン隊を引っ張っていたということを知り、あとからさもあらんと感じた次第。
前列3列目、それも右端からだと、メンバーを視認できるのは弦部隊の前から数列。管・打楽器隊はまったく見えないので、ただただ音が前から横から飛び込んでくる感じ。だが、この雨あられのように降り注ぐ、音色にただただ驚嘆するばかり。
あとから考えると、ドール効果がかなりあったに違いない。あれだけ突き抜けた音がホルンから出てくれば、他のセクションも負けるわけにはいかないと思うはず。矢部コンマスの気合もひしひしと伝わって来た。
パーヴォの機能的で理知的なアプローチよりも、アランの指揮はより抒情的というか聴き手の五感に訴えるところが大きい気がした。アルプス登山のプロセス、山の様子が目に浮かぶ解像度がより高い。山頂のクライマックスなどはエクスタシーそのものだった。見た目で判断してはいけないだろうが、堂々とした体躯とプレイヤーに向き合う姿勢がとっても安心感と信頼感を誘うのだ。
あっという間の50分で曲が終了した時には、もう心身ともにへとへと。登った経験も無いのだが、アルプス登山をやり切った感が、単に座って聴いているだけなのに生まれる。充実感一杯の気持ちに満たされた。
カーテンコールでは私も大きな拍手を寄せたが、中でも驚いたのは、ステージに現れたバンダ隊。なんと、総勢20名ぐらいいる大部隊。座席が近いので、一人ひとり良く見えるのだが、若い(それも女性)奏者が多い。こんなに多くのバンダ隊もあの名演奏を後ろから支えていたのねと思うと、拍手も1.5倍強となった。
相当年の記憶に残ることが想定される、ヤバい演奏会であった。もともとの約束がキャンセルになって大感謝。
第979回定期演奏会Aシリーズ
日時:2023年7月19日(水) 19:00開演(18:00開場)
場所:東京文化会館
出 演
指揮/アラン・ギルバート
ホルン/シュテファン・ドール
曲 目
ウェーベルン:夏風の中で―大管弦楽のための牧歌
モーツァルト:ホルン協奏曲第4番 変ホ長調 K.495
R.シュトラウス:アルプス交響曲 op.64
Subscription Concert No.979 A Series
Date: Wed. 19. July 2023 19:00 (18:00)
Venue: Tokyo Bunka Kaikan
Artists
Alan GILBERT, Conductor
Stefan DOHR, Horn
Program
Webern: Im Sommerwind
Mozart: Horn Concerto No. 4 in E-flat major, K.495
R.Strauss: Eine Alpensinfonie, op.64
バンダ隊、ってなんですか?
こんにちは、wiki引用ですが、
「バンダ(伊: banda)は、オーケストラなどで、主となる本来の編成とは別に、多くは離れた位置で「別働隊」として演奏する小規模のアンサンブル。」
とのことです。