その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

ロンドン交響楽団 / ジョン・エリオット・ガーディナー / ベートーベン交響曲第9番 ほか

2011-12-16 00:29:24 | コンサート (in 欧州)
 もうこちらに来て丸3年になりますが、初めて年末の第九なるものを聴きに行きました。イギリスでは年末にベートーベンの第9交響曲を演奏する慣習は全くないのですが、今年はたまたまプログラムの都合上、うまく当たったようです。LSOとジョン・エリオット・ガーディナーによる第9は2010年2月に聴いています(こちら→)が、プログラムはその時と全く同じで、交響曲1番との組み合わせ。しかも、合唱のモンでヴェルディ合唱団も同じで、独唱者もテノールを除いては同じというデジャブ・コンサートです。

 背が高く、難しそうな顔をしたガーディナーは、威圧感というか威厳たっぷりで、つたが絡まる歴史的な建物に囲まれた大学の研究室で、文献を読み込んでいる姿がぴったりです。なので、私は勝手ながら「教授」と呼んでいます。

 冒頭の交響曲第一番。音の強弱が明確でメリハリの効いた小気味のよい演奏でした。ティンパニーのアクセントが良く効いていて、気持ちの良い演奏です。

 休憩後の第9。前回はその快速演奏に肝を抜かれましたが、今回もスピードは健在でした。凄いスピードで畳み掛けるような勢いで音楽が進んでいきます。第1、第2楽章はそのスピード感が、リズムと勢いを作っています気がします。ピリオド奏法による演奏は、無駄な虚飾がなく、筋肉質な印象です。

 そして、最終楽章も早いペースの筋肉演奏は続いたのですが、ちょっと残念だったのは、独唱者と合唱。独唱者はオーケストラの後方、合唱の前に位置していて、あくまでも合唱の一部という位置付けなのでしょうが、今回は存在感を殆ど感じませんでした。また、合唱も、教授自らが1964年に結成したモンテヴェルディ合唱団で、前回の第9に加えて昨年夏のプロムスでも素晴らしい合唱を聞いているのですが、今回のパフォーマンスはもう一つ。前回は少数精鋭ながらもそのパワフルな歌唱に圧倒されたのですが、今回は、ちょっとパワー不足を感じてしまいました。オーケストラに負けてしまった感じです。

 演奏のほうは、最後のフィナーレに向かう激流は、凄まじいものでした。普段から音が大きいロンドン響ですが、その彼らが必死の形相で、ガーディナーの煽りについて行きます。いつもより更に大きい音が出ていました。

 結局、手持ちの時計で1時間3分。この快速第9は2回目なのでもう慣れましたが、比較的定型的な演奏を聞き慣れている日本人には本当に衝撃的な演奏です。好きか?と問われれば、正直言うと、好みとは言い切れないないのですが、間違い無く記憶に残る演奏なのです。「やっぱり、年末には第9」としみじみと思った次第です。


(カメラを忘れて、携帯撮影)

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London Symphony Orchestra / Sir John Eliot Gardiner
Beethoven Symphonies No 1 and No 9 ('Choral')
15 December 2011 / 19:30
Barbican Hall

Beethoven Symphony No 1
Beethoven Symphony No 9 (‘Choral’)

Sir John Eliot Gardiner conductor
Rebecca Evans soprano
Wilke te Brummelstroete mezzo-soprano
Michael Spyres tenor
Vuyani Mlinde bass-baritone
Monteverdi Choir
London Symphony Orchestra

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ロンドン交響楽団/ コリン・デイヴィス、内田光子/ ベートーヴェン ピアノ協奏曲第5番

2011-12-14 23:41:46 | コンサート (in 欧州)
 内田光子さんとロンドン交響楽団、コリン・デイヴィスのベートーヴェンピアノ協奏曲シリーズも今回が最後。一音たりとも聴きもらすまいと、この日は朝走った以外は、夕方まで完全に部屋に引きこもり体力温存に努めました。

 チケット完売のコンサート。聴き手の期待感の高いコンサートは、開演前から不思議に高揚した雰囲気が流れています。私もウキウキ気分でトイレを出て準備完了のところで、 voyager2artさんに遭遇。しばし会話を交わして、いよいよ会場入場です。

 この日のプログラムは、トリがベートーヴェンピアノ協奏曲第5番の前に、ハイドンの交響曲93番とニールセンの交響曲第4番という組み合わせ。

 デイヴィス翁が登場すると、暖かい拍手で包まれます。負けずに拍手で迎えた私でしたが、一目見てとっても不安な気持ちが胸をよぎりました。デイヴィス翁の指揮を聞くのは今年3回目ですが、明らかな体力と精気の衰えを感じてしまったのです。前回の9月のコンサートと比べても、体全体から感じるエネルギーが弱くなっている。確か83か84歳だし、今年に入ってから指揮台でも椅子に腰かけての指揮になっているので、加齢による衰えは自然のことと分かりつつも、何か言い知れぬ不安な気持ちになってしまいました。

 ただ、ハイドンが始まると、そんな不安は吹き飛びました。特にエキサイティングな音楽ではありませんが、とても優美で、しみじみと音楽を聴く喜びを味わせてくれます。音楽ど素人の私が言うのも何なんですが、デイヴィス翁の指揮と言うのはとっても大雑把な感じで、あの棒先から楽団員が何を感じとって演奏しているのか不思議なくらいなのですが、そこから生み出される音楽は不思議と均整がとれていて、美しいのです。高い相互の信頼感に支えられた「あ・うん」の呼吸のようなものを感じさせてくれます。

 続いては、私にとっては初めて聴くニールセンの交響曲第3番。Wikiによると、「いわばニールセンの田園交響曲」らしいのですが、なかなかどうして、雄大でパワフルな曲でした。確かに途中、北欧のフォークソングをベースにしたメロディとかも交じり、初めてでもすんなり聴くことができます。LSOは、デイヴィス翁のよた(失礼!)棒から、これでもかというぐらい凄いパワーがみな切る演奏をしてくれました。オーボエのソロも美しく、個と全体のバランスが絶妙でした。



 そして休憩後は、いよいよ内田光子さんの登場。本当にこの方はイギリスで人気があります。足取り軽く、でもデイヴィス翁の足元を気に掛けつつ登場した瞬間から会場が内田モードに変わってしまうのです。そして、その演奏も素晴らしいものでした。
第1楽章から痺れっぱなしでした。今まで聴いたことのない、若くて、純粋な「皇帝」でした。外に向かうエネルギーと内に向かう思索が、見事に両立しています。第2楽章の美しさは涙が出てきました。時として、消えるのではないかと思うような弱音や高らかな叫び。こんなピアノ協奏曲5番は初めてでした。年齢的には、決して若くはない内田さんとデイヴィス翁から、こんな瑞々しい純粋な音楽が湧き出るのはどうしたことなのでしょうか?最高レベルのプロ達である、指揮者と独奏者とオーケストラが、高い信頼感と相互の敬意に満ちて、一体となって、この瞬間限りの、この組み合わせでなければできない音楽を創っています。素晴らしい瞬間に立ち会っている自分の幸運にただただ感謝でした。

演奏後は、スタンディングオベーションによる凄い拍手。きっと疲れたマエストロに気を遣ったのでしょう。コンサートマスター君は、まだヴィリュームが全く衰えない拍手のなかで楽員に引き上げを命じていました。

感動をかみしめながら帰路に着きましたが、やはりデイヴィス翁の健康だけは気になります。どうか、お体を大切に、いつまでも指揮姿を見せてほしいです。








London Symphony Orchestra / Sir Colin Davis
Nielsen Symphony No 3 and Beethoven Piano Concerto No 5
11 December 2011 / 19:30
Barbican Hall

Haydn Symphony No 93
Nielsen Symphony No 3 ('Sinfonia Espansiva')
Beethoven Piano Concerto No 5 ('Emperor')

Sir Colin Davis conductor
Mitsuko Uchida piano
Lucy Hall soprano
Marcus Farnsworth baritone
London Symphony Orchestra

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BBC交響楽団/ エドワード・ガードナー/ ベルシャザールの饗宴

2011-12-11 23:06:46 | コンサート (in 欧州)
 イングリッシュ・ナショナル・オペラ(ENO)の音楽監督を勤めるエドワード・ガードナーは、私の今注目の指揮者。彼が振るENOは、音が生き生きとして、活力がみなぎっている。パッパーノがロイヤルオペラを振ると音が全然違うのと同じ。今年の夏にはプロムスでラストナイトの指揮をやったぐらいだから、業界でも期待の若手なのだろう。今日はそのガーディナーがBBC交響楽団を振るということでバービカンに足を運んだ。プログラムには1曲も知っている曲がなく、行く前はかなり不安だったのだが、終わってみれば素晴らしいコンサートだった。

 冒頭のブリテンのシンフォニア・ダ・レクイエムは、もともとは日本政府が皇紀2600年を記念して委嘱した曲だったとのこと。ダイナミックな曲。出だしのティンパニーの連打ではじまり、途中、感傷的なメロディーも交じり、最後まで聴くものをそらさない。1曲目から、いきなり全力投球の演奏だった。

 続いての、シベリウスの短い歌曲を3つ。1、2曲目は、とても感傷的なメロディ。3曲目はとてもドラマチックな音楽。バリトンのジェラルド・フィンレーの落ち着いた安定感のある声がホール中に響く。

 休憩後は、旧約聖書の『ダニエル書』にあるベルシャザールの酒宴を題材にした2曲。初めは、シベリウスがもともとは劇用の音楽として作曲したものを、組曲として編曲したもの。美しい音色の音楽でしみじみと聴き入る。

 そして、圧巻は最後のウォルトンのオラトリオ。インディジョーンズの映画音楽と言ってもそのまま通用しそうな、勇ましく雄大な音楽。前曲のシベリウスの組曲と同じ題材を元にしているとはとても思えない音楽だった。主役は、迫力のコーラスとバリトン独唱。混声合唱はボリュームもハーモニーも素晴らしい。フィンレーの独唱も堅実で、充実していた。BBCSOも切れと勢いのある素晴らしい演奏で聴かせてくれた。途中、3階席からのブラス部隊も加わって、ホール全体がスペクタクルな歴史空間に変っていたような気がした。久しぶりに鳥肌が立つ演奏で、圧倒されまくった30分だった。。聴衆は皆さん同様の思いだったらしく、拍手もものすごいものだった。

(バリトンのジェラルド・フィンレー)


(合唱指揮とガードナー)


(一部しか見えませんが、コーラス)


 ガーディナーは初めて近くで見たが、えらくカッコイイし、指揮ブリもカリスマティックなところがある。これからも要マークだと思う。

(エドワード・ガードナー)



Belshazzar’s Feast
BBC Symphony Orchestra and Symphony Chorus
10 December 2011 / 19:30
Barbican Hall

Britten Sinfonia da Requiem
Sibelius Songs
Sibelius Belshazzar’s Feast – Suite
Walton Belshazzar’s Feast

BBC Symphony Orchestra
Edward Gardner conductor
Gerald Finley baritone
BBC Symphony Chorus
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ロンドン交響楽団/ ゲルギエフ指揮/ ショスタコーヴィチ交響曲第10番ほか

2011-12-07 22:19:05 | コンサート (in 欧州)
 不調な体調を押して出かけても何も良いことがないという典型例。最後まで行くかどうか迷ったのですが、チケットがあるのに行かないのはもったいないということで行ってみましたが、やっぱり駄目でした。ただ、一応記録のため。

 一曲目はソフィア・グバイドゥーリナというロシアの女性現代作曲家がこの日のヴァイオリン独奏アンネ=ゾフィ・ムターのために書いたヴァイオリン協奏曲。舞台にいろんな楽器が揃い壮観でしたが、曲はいわゆる現代曲で、私には全くのチンプンカンプン。理解の範囲を完全に超えてました。まあ、ムターさんを見に来たと思うしかないか。





 休憩後は ショスタコーヴィチ交響曲第10番。「せめてショスタコーヴィチはしっかり聴こう」と気合を入れなおしたものの、体調の悪いときは気持ちだけでは駄目ですね。パーツパーツでLSOのメンバー奏でる美しい演奏に唸るものの、自分にぶつかってきた音がすべて自分を通り抜けていくような感覚で、居眠りしているわけではないのですが、全く音が自分に残らないのです。ゲルギーのタコと言うことで楽しみにしていたのですが、私自身がペケ。



 ただただ、こういう時は家で寝てるもんだなあ(でもこの日は日中はずっと寝てたんですけどね)と反省し、帰路につきました。ゲルギー先生、ごめんなさい。




London Symphony Orchestra / Valery Gergiev
UBS Soundscapes: Artist Portrait – Anne-Sophie Mutter
27 November 2011 / 19:30
Barbican Hall

Sofia Gubaidulina In tempus praesens*
Shostakovich Symphony No 10

Valery Gergiev conductor
Anne-Sophie Mutter violin*
London Symphony Orchestra
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チェコフィルハーモニー管弦楽団/ インバル/ マーラー交響曲一番 @アテネ

2011-11-25 22:41:42 | コンサート (in 欧州)
 わざわざアテネに来てまでコンサートに行かなくても良いと思うのだが、演奏会があるとついつい足が向いてしまう。今回はたまたまチェコフィルの引っ越し演奏会と重なったので、アテネでチェコのオーケストラを聞くという妙な取り合わせとなった。

 会場はアテネの中心部シンタグマからも近いメガロムシキ(アテネ・コンサートホール)。アテネ市内の建物はどれも古ぼけていて冴えないのだが、このコンサートホールは新しく、眩いばかりのコンサートホールだった。ホール内も、舞台後ろにオルガンが設置され、木の壁に囲まれた雰囲気は、なかなか本格的で高級感も漂うものだった。

 



 この日の演奏はマーラーシリーズ。1曲目はプレガルディエンのテノールによる「さすらう若人の歌」。意外とあっさり終わってしまったが、前菜としては丁度良かったかも。

 休憩後はマーラーの「巨人」。これは素晴らしい演奏だった。インバルさんは名前はもちろん知っていたが実演に接するのは初めて。後頭部の薄さと言い、髪型と言い、後ろから見ているとお茶の水博士そのもので笑ってしまったが、指揮ぶりは強い情熱に溢れるものだった。しかも、チェッコフィルの音の特徴なのだろうか?とっても重心の低く、かつパワフルな演奏だった。この重量感は10月に聴いたライプツィヒ・ゲヴァントハウスすらも超えるものだ。







 第一楽章の前半は少し退屈な出だしだったが、途中でギアチェンジし、そこからは憑かれたような勢いを感じた。「これぞ生演奏の醍醐味」と言う感じでで、どんなオーディオルームもこの迫力、このレンジは再現できまい。

 それにしても、お客が全体の6割ぐらいしか入っていないのはとっても残念だった。1階ですら7割、2階は5割も入っていない感じだった。これも経済危機の影響の一つなのだろうか?

(地下鉄のエスカレーターから。そういえば。カラスってギリシャ人だった)



Friday, 11 November 2011, 20:30
ATHENS CONCERT HALL- CHRISTOS LAMBRAKIS HALL

Mahler Year: Tribute to Gustav Mahler for the centenary of his death (1911-2011)

Gustav Mahler:
- Lieder eines fahrenden Gesellen
- Symphony no 1

Christoph Prégardien tenor

Czech Philharmonic Orchestra
Conductor: Eliahu Inbal



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ロンドン交響楽団 / ニコライ・スナイダー指揮 / ブラームス交響曲第4番ほか

2011-11-13 23:51:59 | コンサート (in 欧州)
 もう2週間も前のコンサートの記録です。
 
 スナイダーさんのLSO指揮デビューコンサート。ここ2年ばかりで、スナイダーさん関連では、ヴァイオリン・ソロとしてのLSOやウイーンフィルとの共演を聴いた。ウイーンフィルとの共演だったザルツブルク音楽祭では、演奏後はCDのサイン会で、CDにサインをしてもらい、握手もした。テクニックもさることながら繊細で優しいヴァイオリンの音は大好き。指揮者としては、どんなスタイルなのかとっても楽しみだった。

 プログラムはワーグナー、シューマン、ブラームスというドイツプログラム。

 冒頭の ニュルンベルクのマイスタージンガーの序曲は、暗譜だった。190センチぐらいあるのではという長身だから、指揮台は要らないぐらい。曲の持つスケール感を十分に引き出し、大きな音楽を聴かせてくれた。なぜか呼び戻しなしで拍手が終わったのが残念。

 続いてのシューマンのピアノ協奏曲はいかにもロマン派という音楽。 サリーム・アッボウド・アシュカール(Saleem Abboud Ashkar)のピアノは、はっきりとした輪郭のなかに、優しさが一杯の音楽で、うっとりと聴き入った。



 サプライズは休憩後のブラームス交響曲第4番。第一楽章、ゆったりと優しく始まった。ブラームスの4番と言えば、重厚な弦が畳み掛けるように襲ってくるイメージなのだが、私のイメージとは全く異なる優しいメロディ。これがブラームスの4番かと驚きを隠せなかった。第2楽章になるとペースは更にスローになる。弦のメロディ部分は普通にしても、木管がリード部分はことさらにゆっくりで聴かせる。モーツァルトやシューマンの如く優しく、ロマンティックだ。まるで全く別の音楽を聴いているようだった。途中でいったいこの曲はどうなるのか?と心配になったぐらい。このペースは結局第3楽章、第4楽章になっても変わらなかった。良く言えば、一つ一つの音節を噛み締めて味わうように音楽が構成されるし、悪くいうとブラームスの交響曲らしい勢い、厚み、流れが感じられない。最後のフィナーレも盛り上がりはあったものの、大きな波を被るようなうねりを感じることは少ないままに終わった。

 人により好き嫌いがある演奏だと思う。私は驚いたまま終わってしまったのでもう一度聞きたい。新しいブラームスの交響曲を聴いたことだけは確かだ。

 しかしデビュー戦をこれだけ挑戦的な解釈で振るスナイダーは逆に大したものだと感心した。無難に常識的(そんなものがあるのか知らないが)な演奏ではなく、確固たる自信を持った自分の音楽の提示に見えた。しかし、ヴァイオリンと指揮の2足のわらじをこれからどう履きわけていくのだろう。とっても興味がある。





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London Symphony Orchestra / Nikolaj Znaider
Music by Wagner, Brahms and Schumann
30 October 2011 / 19:30
Barbican Hall

WAGNER Overture: Die Meistersinger von Nürnberg
SCHUMANN Piano Concerto
BRAHMS Symphony No 4

Nikolaj Znaider conductor
Saleem Abboud Ashkar piano
London Symphony Orchestra
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ロンドン交響楽団/ マリン・オールソップ / Voices of Light (Richard Einhorn)

2011-11-11 00:08:17 | コンサート (in 欧州)
 今年は15世紀のフランスの英雄ジャンヌダルクの生誕600年にあたるとのことで、バービカンセンターでは先週末にジャンヌダルク企画特集をやっていた。(恥ずかしながら、このコンサートのチケットを買うまで英語のJoan of Arcがジャンヌダルクだとは知らなかった)。金曜日にはオネゲルのオラトリオ「火刑台上のジャンヌ・ダルク」、日曜日にはマリン・オールソップのジャンヌダルクをネタにした講演会、そして、その締めくくりがこのコンサート。1928年製作の白黒無声映画「裁かるゝジャンヌ」(Carl Dreyer監督)という映画にあわせて、1988年にRichard Einhorn というアメリカ人が作曲した「Voices of Light 」とセットで上映上演するというもの。曲は映画に完全に合わせて作られている。

(開演前:ステージ後方に設けられたスクリーン)


 感動的公演だった。白黒映像の力に圧倒された。映画は、裁判から火やぶりの刑に処せられるまでのジャンヌダルクが描かれる。白黒画像に登場人物をアップに大写しにするカメラワーク。無声映画であることが、更に見る者の気持ちを画面に集中させる。主演女優のルイーズ・ルネ・ファルコネッティの熱演に、役80分の上映時間、目と気持ちがスクリーンに引き込まれ離れない。今回はLSOの演奏会なので、メインは演奏とコーラスで、映画は添え物なのだが、映像のメディア力の強さに主役の座を譲らざる得なかった。

 しかし、主役にはなれなかったものの、コーラス、オーケストラの美しさも格別だった。合唱は、独唱部分をシナジーコーラスという6名からなるグループがそれぞれマイクを使って歌ったのだが、その声は透明感があり、思わず背筋を伸ばすような神聖さを感じるものだった。ロンドンシンフォニーコーラスの合唱はいつもながらの上手さ。オーケストラもヴィオリンやチェロの独奏が悲しさを引き立てる。映画を見ながらBGMのようにLSOの生演奏を聴くなんて、なんとも贅沢。

 日曜日の夜に見る公演としては、ちょっとヘビーすぎる内容だったが、それほど日本では知られた映画ではないとおもうが、是非、映画だけも見ておいて損はないと思う。好みは分かれるかもしれないが、お勧め。

(中央は指揮のマリン・オールソップと作曲のRichard Einhorn)


(後ろがンドンシンフォニーコーラス、シナジーコーラスは中央ですが影になって見えない)


 ※なんとこの映画YouTubeで観れます→

London Symphony Orchestra / Marin Alsop
Einhorn Voices of Light and Carl Dreyer’s The Passion of Joan of Arc
6 November 2011 / 19:30
Barbican Hall

Richard Einhorn Voices of Light

Marin Alsop conductor
Synergy Vocals
London Symphony Chorus
London Symphony Orchestra

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シャイー指揮、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団、ベートーベン・チクルス

2011-10-27 22:54:03 | コンサート (in 欧州)
本シーズンのバービカンセンターの目玉企画の一つ、シャイー指揮、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団コンビによるベートーベンチクルス初日を聴きに行く。初日は、ベートーベンの交響曲2番と5番の組み合わせ。

ロンドンに来て以来、このコンビのコンサートは3回目だが、この日も体が震える演奏だった。

特にラストの交響曲第5番は、凄まじい演奏。比較的早めのピッチで始まった頭から、最後までずうーっとエンジン全開。ベートーベンにしてはコントラバスが8人も居る大きめの編成だからということだけではないだろうが、とにかく音がとてつもなく大きい。アンサンブルの美しさもさることながら、重厚な音で、ブルドーザの如く突き進む。シャイーの情熱的、エネルギッシュな指揮姿を見ていると、「耳や頭できくな、体で聞け!」「俺の音を全身で受け止めろ!」とシャイーに言われているような気がする。管のエッジの効きかたも桁外れで、そんなに吹いて肺がつぶれないか、大外しするんじゃないかと心配させるほどに、吹き上げる。このヴォリューム感には、聴いていて体がワナワナ震える興奮を覚えた。

冒頭の交響曲第2番も重厚な演奏だった。ついこの間聴いたセガン指揮ロンドンフィルの演奏はとっても整然としたスマートな演奏だったが、同じ曲とは思えないような、力で押す演奏。また、休憩後は5番の前にパーカッションが印象的な現代曲を1曲やってくれた。

それにしても、ヨーロッパのオーケストラは本当に色んな個性があって面白い。スペインのサッカー、オランダのサッカー、ドイツのサッカー、イタリアのサッカー・・・が其々違うように、オーケストラ毎に明確な違いがある。きっと、そうじゃないと生き残っていけないのだろう。

(会場は割れんばかりの大拍手)




(2曲目の作曲者Carlo Boccadoroさん)




Chailly / Beethoven Cycle
Beethoven Symphonies No 2 and 5
25 October 2011 / 19:30
Barbican Hall

Beethoven Symphony No 2
Carlo Boccadoro Ritratto di musico (UK Premiere)
Beethoven Symphony No 5

Gewandhaus Orchestra Leipzig
Riccardo Chailly conductor




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ロンドンフィルハーモニック/ スターバト・マーテル(ロッシーニ)

2011-10-18 23:22:42 | コンサート (in 欧州)
 週末に、私としては今シーズン初となるロンドン・フィルのコンサートにロイヤル・フェスティバル・ホールを訪れました。フェスティバル・ホールは何と5月末に訪れて以来です。

 この日のお目当ては、主任客演指揮者のセガンさんとロイヤルオペラの若手育成プログラムを卒業して昨シーズンからバイエルン国立歌劇場で歌っているソプラノの中村絵里さん。

 1曲目のベートーベンの交響曲第2番はコンサートで聴くのは私の記憶が正しければ初めてです。エネルギッシュな中にも均整がとれた演奏でした。ただ、私自身が、開演前にホール前で実施されていた「ワイン&チーズ」フェアで飲んだワインが残っていて、ほろ酔い気分で集中力不足。寝てはいませんが、細部はあまり記憶に残ってないです。

 休憩で気合いを入れなおして臨んだロッシーニのスターバト・マーテル。ロンドン・フィルは去年もこの季節に、スターバト・マーテルをやっています。昨年はドヴォルザーク版だったのですが、ロッシーニ版は全く初めて聴く曲です。

 まず、曲全体の派手とも言える程の劇的さに胆を抜かれました。イエスが磔となった時のマリアの悲しみを歌う曲なのですが、まるでオペラ曲のように仕上がっています。パンフレットの歌詞を追いながら聴いているので、何について歌っているのか、演奏しているのかはわかるのですが、もし歌詞を見ないで聴いていたら、まさかこれがマリアの悲しみを歌っているとは思わないでしょう。パンフにも、この詩にロッシーニが付けた音楽には賛否両論だっと言うことが書いてありました。私自身はクリスチャンではありませんし、音楽が楽しめればいいですが、このドラマティックな音楽は好みです。

 そして、パフォーマンスも素晴らしかったです。セガンさんが凄い集中力でオケや合唱をグイグイ引っ張って行くのが良く分かります。音楽の陰影が凄くはっきりしていて、劇的で、純粋に心が揺さぶられます。どの独唱も出来がよく、合唱も素晴らしかった。

 中村さんの声は個人的にとっても好きです。美しい高い声は、繊細な中に微かな華を感じるもので、そのデリケート感が西洋人のただ声がでかいソプラノとは一線を画すものです。ロイヤルオペラでも何回も聴きましたが、久しぶりに聴く彼女の声はやっぱり美しかった。コンサートで聴くのは初めてなのですが、失礼ながら、オペラでは声は良くても、2廻りも大きな西欧人たちに囲まれるとどうしても見栄えでは損をしてしまうところがあります。むしろコンサート形式の方が彼女の声をしっかりと集中して聴くことができ、声の美しさを味わえると思いました。

 私は大満足の大拍手です。演奏後、私の真後ろに座っていたとっても綺麗な韓国人の女性が、うれしそうにハングルで話しかけてくれました(きっと、韓国人テノールの応援でしょうか?)が、残念ながらハングルは分からず、会話は中断しましたが、今日のソプラノ、テノールの日韓揃い踏みはなかなかでした。

(皆さん、良い笑顔です)



Royal Festival Hall

London Philharmonic Orchestra
Rossini's Stabat Mater
Saturday 15 October 2011

Ludwig Van Beethoven: Symphony No.2
Interval
Gioachino Rossini: Stabat mater

London Philharmonic Orchestra
Yannick Nézet-Séguin conductor
Eri Nakamura soprano
Ruxandra Donose mezzo-soprano
Ji-Min Park tenor
Matthew Rose bass
London Philharmonic Choir

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LSO/ デイヴィス/ ベートーベン ピアノ協奏曲第3番 (内田光子) ほか

2011-10-03 23:16:45 | コンサート (in 欧州)
 暑い日中はフラットに引きこもり、夕方、満を持してバービカンホールへ出撃。

 もう19:00過ぎには暗くなるまで日が短くなったが、日中の陽の余熱を持ったバービカンセンターのテラスは、10月とは思えないほどの暖かさで、ビールがぴったりの気候。



 この日は、デイヴィス御大による、ハイドン、ニールセン、そしてトリが内田光子さんのベートーベンピアノ協奏曲第3番というプログラム。

 冒頭のハイドンの交響曲第92番は、「つべこべ下手な理屈を考えるよりも、素直に音楽の美しさ、楽しさを存分に味わいなさい」とお説教をされているような演奏。リラックスしてただ音に浸る。そんな感じ。

 好対照に2曲目のニールセン交響曲第1番はすごい爆演。最初からフィナーレまでペースやパワーが緩まることなく、ほとばしる若さで駆け抜けるような演奏。1階席の前から12列目ぐらいの位置だったが、凄い音に耳が痛くなるほど。ただ、初めて聴く曲のためか、結局、私には聞き所がわからず、ただただ呆然とパンチドランカーのように打たれまくって、訳もわからないまま、圧倒されただけということになった。圧倒はされたが、感動はない。ちょっとニールセンは苦手かもしれない。



 そして、圧巻は休憩後の内田光子さんのベートーベンのピアノ協奏曲3番。内田さんのピアノはこの日が3回めだが、間違いなくは今までで最高に胸が揺さぶられた。

 ベートーベンとは思えない優しい暖かさ一杯の演奏で、一つ一つの音が弾んでいて、気持ちが入っている。いつもの顔芸は控えめだったけど、全身全霊を傾けて弾いているのが良くわかる。この人のピアノを聴いて思うのは、とても純粋な方だろうということ。ベートーベン的な激しさとか、厳しさという情熱よりも 純粋に音楽を楽しもうとする思いが音ににじみ出ている。彼女がモーツァルト弾きであることは有名だが、このベートーベンもモーツァルトの曲のように優雅なピアノに聴こえた。ピアノやオーケストラが一方的に目立つわけでなく、デイヴィス御大やオーケストラとの息もぴったりで、厚い信頼関係の上にある、至福の演奏だった。

 ロンドンの聴衆に内田さんは大人気である。演奏が終わると、明らかに電車の時間を気にしてすぐに席をたつ人以外は、立つ気配が全くない。止むことのない拍手に何度も呼び出されていた。



2 October 2011 / 19:30
Barbican Hall

HAYDN Symphony No 92 ('The Oxford')
NIELSEN Symphony No 1
BEETHOVEN Piano Concerto No 3

Sir Colin Davis conductor
Mitsuko Uchida piano
London Symphony Orchestra
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ロンドン交響楽団/ ゲルギエフ/ チャイコフスキー交響曲第4番ほか

2011-09-26 22:37:42 | コンサート (in 欧州)
 ロンドンのオーケストラは、先週あたりから徐々にシーズン開幕コンサートが始まっています。私も、日曜の夜、ロンドン交響楽団の演奏会を聞きに、3ヶ月ぶりにバービカンホールを訪れました。この日は、主任指揮者ゲルギエフによる、ブラームスのピアノ協奏曲第2番ととチャイコフスキーの交響曲第4番という重量級プログラムです。

 しょっぱなのブラームスのピアノ協奏曲第2番は随分有名な曲のようですが、私は初めてです。ピアニストのネルソン・フレイレ(Nelson Freire)は1944年のブラジル生まれということなので、もう結構なお歳のようですが、2階席からはもうすぐ70歳とは思えない溌剌とした壮年のおじさんに見えました。ピアノの方も、とっても力強いタッチで、音も大きいので、最初は驚きましたが、乱暴に大きいというのではなく、細部にもすごく丁寧に弾いているのが良く分かります。ピアノを弾く姿勢が型にはまった美しさがあり、ピアノをまるで自分の体の一部のように自由自在に操っているように見えます。均整がとれていて、安定しているので、聴く方は安心して音楽に身をゆだねることができる、そんな感じでした。

 ピアノ以外も第3楽章のチェロ独奏の美しさも格別でした。柔らかく、滑らかで、至福の時間です。オケも弦のアンサンブルが美しく、交響曲的なピアノ協奏曲をピアノとしっかりコラボしてました。フレイレさんは、大拍手に応えて、アンコールまでやってくれました。誰でも知っている有名な曲(ですが、恥ずかしながら、私は曲名を知りません)で、重厚な協奏曲の後にぴったりのデザートでございました。

(拍手に応えるネルソン・フレイレ)


 休憩を挟んでのチャイコフスキーは、これまた凄じい演奏。完全にゲルギエフの十八番なのでしょう。譜面台に譜面はおいてありましたが、一度も振れることもなく、終始、完全なゲルギーワールドの展開でした。木管、金管の個人技(特にオーボエ、フルート、クラリネット、ファゴットなどなど)に加え、弦を含めた全体のハーモニーも完璧。ヘビー級でありながら「蝶のように舞い、蜂のように刺す」と言われたモハメッドアリのボクシングのような、重量級のオケにきれが加わる演奏で、完全にノックアウトされました。特に、第2楽章の深く、寂しいロマンティックなメロディ、第3楽章の弦のリズミカルなピチカートが心地よかったです。最後、フィナーレが終わったときは、心臓パクパク。こんなチャイコフスキーの4番はそうは聴けないでしょう。

 日曜の夜にこの衝撃は重すぎるよ~、と暖かな秋の夜風にあたりながら、胸の鼓動を無理矢理治めつつ、帰路につきました。

(満足げなゲルギエフ)




London Symphony Orchestra / Valery Gergiev
25 September 2011 / 19:30
Barbican Hall

Brahms Piano Concerto No 2
Tchaikovsky Symphony No 4

Valery Gergiev conductor
Nelson Freire piano
London Symphony Orchestra

コメント (4)
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Prom 67: Beethoven/ Missa Solemnis

2011-09-05 22:30:26 | コンサート (in 欧州)
プロムスもいよいよ今週末の土曜日で終了。毎年のことだが、シーズンが始まった7月はあんなに高かった夕陽が、シーズン後半の9月にはめっきり傾いている。過ぎ去った夏がもう懐かしい。

今日はベートーベンのミサ・ソレムニス。録音も含めて、聴くのは初めての曲。今日は定期演奏会(こんな言い方はホントはしてないけど)ではおなじみだが、プロムスでは初めてのコリン・デイビス御大とLSO(ロンドン交響楽団)のコンビ。とっても楽しみにしていたコンサート。

神々しい音楽だった。主役は間違いなくコーラス。ロンドン・シンフォニー・コーラスとロンドン・フィルハーモニック・コーラスの2つの合唱団、総勢250名近くの素晴らしいハーモニーがホール一杯に響いた。グロリアとクレドの壮大なスケールは第9交響曲の第4楽章のクライマックスを聴き続けているような感覚になる(なので少々、疲れる)。そして、最後のアニュス・デイの神聖な響き。心が洗われる合唱だった。独唱の4名も、ソプラノのHelena Juntunen、メゾのSarah Connollyを筆頭に、しっかりといい仕事をしたという感じだった。

LSOはさすが上手い。プロムスのおかげでアルバート・ホールでいろんな楽団を聴かせてもらっているが、やっぱりLSOはトップクラスであることを確認。個々の管楽器の個人技、伸びやかかつまとまった弦。デイビス御大の指揮は、いつもとっても大雑把に見えるのだが、そこから極めて繊細かつ迫力もある音楽が産み出されるからとっても不思議だ。主役は歌に委ねたものの、歌と演奏がしっかりと噛み合った、素晴らしい公演だったと思う。

熱気に満ちたホールを出ると、思わず襟元が開いたジャケットを閉じて、体を一回り縮めるような冷たい空気が待っていた。プロムスが終わるということは、秋本番ということなのだ。

(秋の夕陽に照らされるアルバートホール)


(終演後のカーテンコール)






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Sunday 4 September
7.00pm – c. 8.40pm
Royal Albert Hall
Choral music and singing events

Beethoven
Missa Solemnis (90 mins)

Helena Juntunen soprano
Sarah Connolly mezzo-soprano
Paul Groves tenor
Matthew Rose bass
London Philharmonic Choir
London Symphony Chorus
London Symphony Orchestra
Sir Colin Davis conductor
コメント (2)
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Prom 56: Strauss & Mahler/ BBC交響楽団

2011-09-02 23:57:06 | コンサート (in 欧州)
もう一週間もたってしまったのですが、先週金曜日に出かけたプロムスの感想です。

最初の曲はリヒャルト・シュトラウスのブルレスケ。初めて聞く曲ですが、冒頭のティンパニーの連打から始まって、とっても格好いい曲でした。シュトラウスにしては、とっても耳さわりも良く、聴きやすい曲です。なので、いつも通り、途中で沈没。まあ、今日の目的は、後半のマーラー6番だからと自分に言い訳。

目を覚まさなければと、間の休憩時に、席を立って廊下に出ると、ミクロス(こちら→)さんに遭遇。世間話をして、目がしっかり覚めました。ミクロスさん、ありがとうございました。

目が覚めた後の、マーラー6番は凄い演奏でした。ビシュコフの指揮は早めのペースで始まりましたが、キレとメリハリが効いた演奏です。オペラ畑出身の人だからか、目の前で物語が語られるように音楽が流れていきます。第3楽章なんかは、危うく再び眠る寸前まで言ったほど、美しい音楽でした。オケがビシュコフの棒に一生懸命ついていこうとするのも、良く分かります。そんなにこの曲を聴きこんでいるわけではないですが、まさに王道のマーラー6番とはこういう演奏を言うのだろうと思いでした。

演奏終了後、絶大なる拍手とともに、疲れはてたビシュコフの姿が印象的でした。

ピアノのKirill Gerstein


疲れ果てていたSemyon Bychkovが印象的でした。




Friday 26 August
7.30pm – c. 9.50pm
Royal Albert Hall
Piano music

R. Strauss: Burleske (20 mins)
INTERVAL
Mahler: Symphony No. 6 in A minor (85 mins)

Kirill Gerstein piano
BBC Symphony Orchestra
Semyon Bychkov conductor

コメント (2)
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Prom 61: Fitkin & Beethoven/ BBC交響楽団

2011-09-01 00:24:15 | コンサート (in 欧州)
今日で8月も終わり。新聞報道によると今年のイギリスは20年ぶりの冷夏だったそうです。そんなに寒いとは思わなかったけど、確かに7月から暑いと思う日は数えるほどしかなかったような・・・。

エジンバラフェスティバルの模様や先週のPromsなど、まだ書いていないことが沢山あるんですが、取り急ぎ今日のレポート。
――――――――――――――――――――――

ヨーヨー・マ聴きたさに、仕事を強制終了して、プロムスへ出撃しました。2年前の深夜プロムスで彼の演奏に魅せられた(→こちら)ので、私としては今シーズンの目玉公演の一つです。

ヨーヨー・マが演奏する曲は、今日が世界初演のフィトキンのチェロ協奏曲。フィトキンという人は1963年生まれのイギリス人で、本作品はヨーヨー・マを念頭に置いて作られたとか。

曲はとてもデリケートな曲でした。耳をそばだててチェロの微妙な力の入れ加減を追うような音楽です。ヨーヨー・マのチェロから生まれる音は繊細で、優しく、表情豊かです。ただ残念なことに、一生懸命聴こうとする気持ちが強すぎたのか、私自身が途中で沈没。拍手で演奏の終了に気づくというだらしなさ。なんとも情けない気合いの空回りでした。顔洗って、BBCのWebサイトで聴き直します。





休憩を挟んで後半は、ベートーベンの交響曲第9番。早めのテンポで進んだデイヴィッド・ロバートソン指揮の演奏は、スタンダードではありましたが、正直、面白味には欠けるものでした。BBCSOの演奏は今日もすばらしく、特に第3楽章の美しさは天国にいるかのようでした。合唱も2つの合唱団による大合唱で、心が洗われます。でも、全体を通しての印象は、どうも耳には心地よく入ってくるんだけど、そのまま通り抜けてしまう。教科書を読んでいるような、パンチや個性のなさを感じてしまった演奏でした。

う~ん、ちょっと残念。




Wednesday 31 August
7.30pm – c. 9.45pm
Royal Albert Hall
Choral music and singing events

Graham Fitkin
Cello Concerto (c27 mins)
BBC Commission, World Premiere
INTERVAL
Beethoven
Symphony No. 9 in D minor, 'Choral' (70 mins)
Yo-Yo Ma cello
Christine Brewer soprano
Karen Cargill mezzo-soprano
Toby Spence tenor
Iain Paterson bass-baritone
Philharmonia Chorus
BBC Symphony Chorus
BBC Symphony Orchestra
David Robertson conductor
コメント (2)
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BBCスコティッシュ交響楽団/ マーラー交響曲第2番 (エディンバラ インターナショナル フェスティバル)

2011-08-28 23:49:43 | コンサート (in 欧州)
クリスマス前最後の連休を利用して、フリンジ・フェスティバルとインターナショナル・フェスティバルの2つが開催中のエディンバラへ来ている。今夜は、そのインターナショナル・フェスティバルのプログラムである、ドナルド・ラニクルズ指揮BBCスコティッシュ交響楽団(BBCSSO)演奏によるマーラー交響曲第2番を聴きに出かけた。

素晴らしい熱演だった。この曲は、今月、プロムスでドゥダメル指揮、シモン・ボリバル交響楽団で聞いたばかりなのだが、シモン・ボルバル響が若者らしい真摯な情熱に溢れた演奏だったのに対して、今夜は対照的に、成熟した大人の情熱が感じられる演奏だった。

全曲を通じてドナルド・ラニクルズの強烈なリーダーシップが印象的だった。剛と柔、明と暗を明確に浮き上がらせた指揮ぶりで、劇的な音楽つくりだった。特に盛り上げどころでの体全体を使った炸裂の指揮ぶりはすさまじく、狂気すら感じるほど。楽団もよく応え、情熱的な演奏を聴かせてくれた。失礼ながら、知名度ではロンドンのオーケストラに遥かに劣るスコットランドのオーケストラからこんな演奏が聴けるとは思いもしなかった。

独唱、合唱も素晴らしかった。特にMeagan Miller (ミーガン・ミラー)のソプラノはホールを貫く美声。メゾのKaren Cargill (カレン・カーギル)も良かったが、ちょっとこのロールには声が太すぎやしないかと思った。コーラスは、かなり平均年齢が高そうな合唱団だが、ホール一杯に響く音は天からの声だった。

また、アッシャーホールの音響の良さには驚かされた。1914年完成のこのホールは、ロンドンにある現代型ホールと違い、アムステルダムのコセントへボウに少し似た、歴史的香りがするホールである。舞台正面後方にオルガンが備えられ、独特の風格を感じさせるが、音響の方も素晴らしかった。オケの音、コーラスの声がバランスよく反響する。

残念だったのは、僕でもわかる金管のミスが数回、それも大事なところ(例えば第4楽章の合唱が復活の賛美を歌う直前のファンファーレのパート)で出てこと。気合を入れて聴く、聴き所であるだけに、聴く方もかなりずっこけた。正直、きっと指揮者的には切腹を申し渡したくなるミスが幾つかあったに違いない。

しかし、そうした個人のミスを十分補って余りある全体として充実した演奏だった。わざわざエジンバラまで来た甲斐があったと心底思った。会場も凄い拍手だった。

写真は戻りしだいアップします。

29 August 2011, 20:00
Usher Hall

BBC Scottish Symphony Orchestra
Donald Runnicles Conductor

Meagan Miller Soprano
Karen Cargill Mezzo soprano

Edinburgh Festival Chorus
Christopher Bell Chorus Master
コメント (2)
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