主演の役所広司がカンヌ国際映画祭男優賞を受賞し話題になった作品。劇場で観たかったが、時機を逸し今回DVDで視聴。
東京渋谷区の公衆トイレ清掃員として真摯に働き、清貧で充足した日々を過ごす中年男性を淡々と追うドキュメンタリー風の映画。
主人公の平山を演じる役所広司の存在感が終始スクリーンを圧している。性格的に極めて無口な設定なこともあり、台詞が非常に少ない(というか、殆ど無い)。そのため、言葉でなく、表情、仕草で人物の感情、思考を表現するのだが、その制約を超えて役所の演技は平山の人物造形をクリアに浮き上がらせていた。さすが。他の役者が演じたら、どういう映画になるのだろう。
リアリティ高い映像で、都会ならでは孤独や静謐さが表現されていたのも印象的。映画の中にあった台詞(正確ではない)だが、一つの世界の中で人は別々の違う世界を生きている。
60年代から70年代前半の洋楽を中心にした音楽は、主人公の人物理解のためにも、作品を支えるのにも重要な役割を果たす。時代は令和だが、平山が生きる「いま」とは時間的にズレがある。平山の「完璧な日々」には欠かせないアイテムだ。
計算された感動ではなく、観るもの夫々の人生経験や想いが反映される映画であると感じた。なので、人により感想は巾があると思う。私自身は平山的生き様には共感はできないし、真似たいとも思わなかった。ただ、様々な人生を追体験するのは、自分の世界が広がるし、作品としての質は高いので、観て良かったと思った映画であった。
PERFECT DAYS(パーフェクト デイズ)
2023年(日本/ドイツ)
監督:ヴィム・ヴェンダース
脚本:ヴィム・ヴェンダース、高崎卓馬
音楽:ルー・リード、ヴァン・モリソン、ニール・ヤング他
キャスト:役所広司、柄本時生、中野有紗、アオイヤマダ、麻生祐未、石川さゆり、三浦友和、田中泯、他