
ポーラ美術館開館15周年記念展と銘打った展覧会。まだ15年だったのですね。

同時代に生きた巨匠の絵画を画家の生い立ちや時代背景と併せて展示してあります。作品の8割がたはポーラ美術館の所蔵品。民間の美術館でこれだけの作品を持ってるって凄いですね。
通してみると二人の個性の差が浮かび上がります。ピカソは、時代により大きく画風が変われど、絵からほとばしる才能が痛いほど伝わってきます。観る人に緊張感を与えますね。シャガールは一貫してほのぼの、ほっこり。暖かい気持ちに浸れます。
印象的だった作品は、2つの大きなタペストリー。一つ目は、ピカソの版画をもとにイヴェット・コキール=プランスが制作した「ミノタウロマキア」。「牛頭人身の怪物ミノタウロスを主人公とする物語。人々を襲う怪物の恐怖は、迫りくる第二次世界大戦への不安に重ねられている」(展覧会Webピカソがページより)というものです。タペストリーの前に立つと、放たれる強いエネルギーに圧倒されます。

もう一つは、シャガールのステンドグラス《平和》(ニューヨークの国連本部の記念講堂に設置)の下絵に基づいたタペストリー。「シャガールの原画によるタペストリーのなかでも最大である本作品には、宗教の違いや国境を越えた、彼の平和への願いが込められている。」(展覧会Webピカソがページより)とのことです。こちらは「ミノタウロマキア」とは逆に、タペストリーの中に自分自身が取り込まれていくような感覚になります。

箱根の山あいで、素晴らしい美術空間を提供してくれるこの美術館。これからも、興味深い企画を提供してほしいです。
第1章 故郷-バルセロナとヴィテブスク
第2章 旅立ち-前衛芸術の都パリへ
第3章 愛しきものたち-変容する絵画
第4章 戦争-悲劇への抵抗
第5章 南仏のアトリエ-愛と平和の讃歌