その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

蜷川 幸雄 『演劇ほど面白いものはない 非日常の世界へ (100年インタビュー) 』 (PHP、2012)

2017-08-16 08:00:00 | 


 先日「NINAGAWA・マクベス」を観て、これまで名前をしっているだけなので、もう少しその哲学や生き様を知りたいと思い、手に取った。NHKのBSでの番組「100年インタビュー」の書籍化である。

 対談形式なので簡単に読めるが、氏の半生や考え方が端的に理解できて興味深かった。特に第九章「可能性と願望」には氏の考えがダイレクトに語られている。

「ある日ある時ある場所へ、自分が選んで行かなければ出合えない、唯一の媒体です。実演の魅力といいうか、生身のリアクションを見ながら成立する、最も根源的で、人間的なメディアだと思う。限定された場所でしか共有できない、現在進行形の芸術。それが演劇で、この世に芝居程面白いものはないと言えるでしょう。」

「演劇が一番シンプルな形で動き、演劇的な想像力の世界を、人の手作業によって創っていくという、僕らの方法に固執したい。そこにこそ、演劇の面白さがると思うからです」

「僕自身は、中心的なテーマを失ったと言われる現代において、多層的な舞台で、多数の観客の眼差しに耐えうる多層の物語を、骨太の大きなテーマを願望しながら、それらを組み合わえて創り上げたいと考えているんです」

 すでに他界されている氏であり、新しいものを観ることは叶わないが、機会を見つけては作品を追いかけていきたい。


目次
第1章 少年時代
第2章 演劇との出合い
第3章 新宿小劇場時代
第4章 千の目とナイフ
第5章 商業演劇の世界へ
第6章 新しい演出を求めて
第7章 海外公演の評価
第8章 演劇という魔力に憑かれて
第9章 可能性と希望
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする