「伝説の投資家」と言われている(らしい)ジム・ロジャース氏がこれからの世界経済やマネーについて語った一冊。昨今の米国や日本の株価は、私にはバブルとしか思えない。そんな数値をぼんやり眺めつつ、「暴落が近いのか」は気になるので、未来を予測するためのヒントになればと思い手に取った。
外国人著者の著作は、原典のColophon(日本語書籍で言うところの奥付。著者、出版社、出版年等が記されたもの。)を確認するのだが、この書籍はColophonがない。あとがきを読んだら、どうも本書はジム・ロジャース氏へのインタビューを元に、日経BPが書き下した本のようなので、原書はないようである。
原書があろうと無かろうと中身があればよいと思い読み始めた。週刊誌への寄稿記事集のような、軽く読み易いエッセイの集合体である。なので、読みながら思考が深まるタイプの読書にはならなかったが、なるほどそういう見方もあるのかと、新たな視点や気づきを得るところは幾つかあった。
まず筆者は、現状の世界の国々による金融緩和政策で巨大な借金を抱えた世界経済はリーマン以上の経済危機を引き起こすと予言している(本当に知りたいのは「それがいつか」と言うことなのだが、もちろんこんなことは誰にも分からない)。そして深刻な経済対立は戦争を引き起こす可能性も秘めているという。
筆者が見る明るい未来は巨大な資源と国内市場、そして軍事力を有するロシア中国にある。中でも、中国の成長は間違いないとする。今更、ジム・ロジャース氏に言われるまでもないとも感じるが、個人的に興味を引いたのは、教育もアメリカやイギリスに留学するのではなく、世界で一番成長している国、中国で学ぶべきだと言う。アメリカの教育機関の価値劣化について厳しい見方をしているのは意外であった。
更に、筆者はインドと日本には悲観的で厳しい。ともに、規制が厳しく内向きの国だからだ。「日本人は海外への移住を考えろ」とまでアドバイスされているのでとっても残念だ。まあ、「都立高 4割余が地毛証明求める」(2021.2.25 NHKニュース)のような国にロクな未来は訪れないとは思うが、これが自分の国だとは情けない。
肩ひじ張らず、通勤電車や出張途中の新幹線で読むのにお勧め。