その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

セクシィ カルメンに悩殺される 新国立オペラ「カルメン」(指揮:大野和士)

2021-07-10 07:36:45 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


2018年11月に新国立オペラ(演出:鵜山 仁)以来のカルメン。馴染みある名曲で彩られた定番オペラを堪能しました。

出色はカルメン役のステファニー・ドゥストラック。私は初めて聴く人ですが、長身かつプロポーション良いスタイル、野性味ある容姿は、カルメンのイメージにぴったり。舞台から放たれるカルメン・オーラが強烈で4階席からでもくらくらするほどです。2幕ではフラスキータ役の森谷真理さんと並んで、森谷さんが小さくみえる驚きの歌手です。歌もしっかりしているのだけど、ビジュアルが凄すぎて、歌は正直印象に残らない。でも、「カルメン」観に行った甲斐があると、彼女だけでお腹一杯になるぐらいの満足度でした。

そのカルメンと対照をなすミカエラを演じた砂川涼子さんも、その田舎臭さ、純朴さがはまっていて適役。こちらは美しいソプラノがしっかり印象に残ります。
男性陣では、ホセの村上敏明さんが大健闘。声量豊かなのだが、表現力や深みといった点で物足りないところは残りましたが、それを補ってあまりある熱演でした。ホセのダメ男ぶり、ストーカーチックで気味悪いところが良く出ていました。反面、闘牛士のアレクサンドル・ドゥハメルは期待外れ。とても闘牛士は出来んだろうと思わせるお腹のでっぱり具合と、声量・声質ともにもう一歩で満足度低しです。

びわ湖ホール声楽アンサンブルが加わった新国立劇場合唱団の合唱は、いつもながら、美しくうっとりさせてくれました。

大野さん指揮の東フィルはまずまずといったところ。第一幕の前奏曲はとっても切れがあって、おおカルメンが始まる、始まるって、期待感を一杯にしてくれました。が、途中、所々にもの足りないところありました。好きな第3幕の前奏曲も何となく流れてしまった感じ。ただ、第3幕終盤は緊張感あふれる演奏でクライマックスを盛り上げてくれました。

一番の不満は、演出でしょうか。オリエ演出は設定を現代に読み替え、金属製パイプで作った巨大格子が使われます。1幕のセビリャのタバコ工場前広場は日本の野外コンサートのような造り。3幕2場も闘牛場外の場がアカデミー賞授賞式入口のレッドカーペットになるなど、何らかの隠喩なのでしょうが、その意味するところや期待効果がよくわからないし、作品そのものの良さを引き立てているとはとても思えないです。現代読み替え演出は嫌いではないのですが、今回の演出は趣旨不明でした。

定番オペラの良さは、こうした意味不明の演出でもしっかり音楽と歌で楽しめることですね。読み替えられた演出を自分で勝手に更に読み替えて、自分イメージのカルメンに塗り替えて見ていました。カルメン最高!

2021年7月6日

ジョルジュ・ビゼー
カルメン<新制作>
Carmen/Georges Bizet
全3幕〈フランス語上演/日本語及び英語字幕

スタッフ
【指 揮】大野和士
【演 出】アレックス・オリエ
【美 術】アルフォンス・フローレス
【衣 裳】リュック・カステーイス
【照 明】マルコ・フィリベック

キャスト
【カルメン】ステファニー・ドゥストラック
【ドン・ホセ】村上敏明
【エスカミーリョ】アレクサンドル・ドゥハメル
【ミカエラ】砂川涼子
【スニガ】妻屋秀和
【モラレス】吉川健一
【ダンカイロ】町 英和
【レメンダード】糸賀修平
【フラスキータ】森谷真理
【メルセデス】金子美香


【合 唱】新国立劇場合唱団、びわ湖ホール声楽アンサンブル
【児童合唱】TOKYO FM少年合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

New Production

Music by Georges BIZET
Opera in 3 Acts
Sung in French with English and Japanese surtitles
OPERA PALACE

CREATIVE TEAM
Conductor: ONO Kazushi
Production: Àlex OLLÉ
Set Design: Alfons FLORES
Costume Design: Lluc CASTELLS
Lighting Design: Marco Filibeck

CAST
Carmen: Stéphanie D'OUSTRAC
Don José: MURAKAMI Toshiaki
Escamillo: Alexandre DUHAMEL
Micaëla: SUNAKAWA Ryoko
Zuniga: TSUMAYA Hidekazu
Moralès: YOSHIKAWA Kenichi
Le Dancaïre: MACHI Hidekazu
Le Remendado: ITOGA Shuhei
Frasquita: MORIYA Mari
Mercédès: KANEKO Mika

Chorus: New National Theatre Chorus, BIWAKO HALL Vocal Ensamble
Orchestra: Tokyo Philharmonic Orchestra


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