
ジャズピアニストの小曽根真さんとアラン・都響のコンビでラフマニノフのピアノ協奏曲第2番が演奏されることを知り、当日券をネット購入し、サントリーホールへ出かけた。
小曽根さん目当ての演奏会だったのだが、大きなサプライズだったのが、前半のペッテション交響曲第7番。スウェーデンの作曲家により1967年に作られた本格的な交響曲である。今年からスウェーデン王立歌劇場音楽監督に就任するアランならではの選曲。
現代曲らしい難しい音楽であるが、深い感動だった。曲全体を覆うのは暗く不安定な楽想なのだが、弦楽のみの「第3楽章」(プログラムノートの分類による)は天上の響きのような美しさ。都響の美しい合奏に心が洗われる。そして、この「第3楽章」以外は、聴きやすくはないが、聴き応えある音楽、演奏にぐっと引きつけられた。オペラにでもなりそうなドラマチックなところや、低音の重い響き、打楽器の連打らが、不安な今の世相を表しているように感じられた。
後半は、お目当ての小曽根さん登場。シルバーのジャケットを着て登場した小曽根さんは未来星人のようだった。どんなラフマニノフを弾くのがとても楽しみだったが、第1楽章は思いのほか普通。むしろP席からだと、正面観客席に向かって出るピアノの音に都響のオーケストラの厚い音塊が覆いかぶさるように壁になって、良く聴こえなかったところが多々あった。が、それは第2楽章のカデンツァ(私は良く分からないが、ツイート群によると小曽根さんオリジナルらしい)ぐらいからピアノの音が突き抜けるように聴こえてきた。音が活き活き飛び跳ねるようだ。小曽根さんのピアノは実に軽快で、優しく、格好良い
ピアノに呼応するオケも素晴らしい。最近、N響の演奏会ばかりに足を運んでいるが、都響のアンサンブルの美しさ、表現の豊かさも秀逸で舌を巻いた。小曽根さんの個性あふれるピアノ、実力オーケストラ、そして両者を止揚させるアランと、3つの役者がしっかりと噛み合い、充実の演奏となった。
鳴りやまない拍手が聴衆の感動を表していた。タオル、ノートによるBravo! 感謝!といった「歓声」も多く見える。そして楽団員が解散した後、弱まることのない拍手でアラン、小曽根がツインで登場し、コールに応えてくれた。
それにしても相変わらず小曽根さん格好いい。私自身は、2009年のエディンバラ・ジャズ・フェスティバルで彼の演奏を初めて聴いて魅了され、エディンバラからロンドンに向かう飛行機が一緒で、CDにサインを貰って以来の(熱心でない)遅れたファンである。その小曽根さんも今年で還暦とのことだが、とても還暦には見えない。私が還暦になったときにこんな若々しさを保っていられるだろうか。アラン、都響、小曽根さんから一杯の元気をもらった演奏会だった。

第931回定期演奏会Bシリーズ
7月1日(木) 19:00開演(18:00開場)
会場 サントリーホール
出演
指揮/アラン・ギルバート
ピアノ/小曽根 真
曲目
ペッテション:交響曲第7番 (1967)
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 op.18