その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

これから凄いことになるかも・・・N響定期演奏会 Aプロ/ パーヴォ・ヤルヴィ指揮/ マーラー交響曲第1番 他

2015-02-09 23:52:32 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)
 次期常任指揮者のヤルヴィさんとニュー・ボスを迎えるN響が、お互いに意識し合った、すさまじい緊張感があふれる公演でした。自宅に辿り着くまで全くの興奮状態で、胸の鼓動が収まりませんでした。私もかれこれN響の演奏会に出かけ始めてうん十年になりますが、これほどのマーラー交響曲一番を聴いたのは初めてと断言できますし、昨日はいつもとも全く違った次元にN響はいました。

 昨年12月にヤルヴィさんがドイツ・カンマ―フィルを振った時に、初めて実演に接したのですが、カンマ―フィルの熱い演奏に感動するとともに、果たしてN響との相性はどうなるのか一抹の不安を覚えました。しかし、それはど素人の杞憂だったようです。N響とは10年ぶりの指揮ということですが、N響が持つ実力と情熱をここまで引き出すことができるのですから、この9月に常任指揮者になった以降、どんな変化がN響に起こるのでしょうか?

 3階席から一望するN響メンバーの姿勢や動きは、普段の定期演奏会の残像とは全く違うものでした。失礼ながら、Jリーグの試合に目が慣れた私が、初めてイングランドでプレミアリーグの試合を見たときぐらいの驚きがありました。前のめりの姿勢、調和も大切にしつつもリスクを取って鳴らそうとする気持ち、指揮者に対する集中力、美しい音・アンサンブルはいつもと同じながら、その音には明確な意志が感じられました。これから新たなステージに飛躍するN響を大いに予感させるもので、聴衆からの過去に聞いたことのないような大拍手が何よりも皆の思いの代弁です。

言いたいことは以上なのですが、備忘録的に付記すると、マーラー交響曲1番では、ヤルヴィさんはテンポ、強弱共にアクセントをしっかつつけ、音楽がメリハリ良く見通しの良い音楽作りでした。爽やかで情熱的、若きマーラーを思い起こさせる実に気持ちの良い音楽です。N響は弦・管共にヤルヴィさんのリクエストにしっかり応えた演奏でした。

 また前半のエルガーのチェロ協奏曲も良かったです。チェロ独奏のアリサ・ワイラースタインさんは、非常に暖かく包み込むような音。3階席からは音量はちょっと物足りないところもありましたが、美しい響きに安心して身を委ねることができます。N響とのコラボレーションの良さも光っていました。それなりの大編成オケだったのですが、大きく鳴らすことはせず、チェロとのバランスがとても心地よかった。

 演奏への衝撃と酔い、そしてこれからN響の「変化」への楽しみが掛け合わさって、春めいたウキウキ気分でNHKホールを後にすることができました。間違いなく私の記憶に残る公演になるでしょう。



《開演前は冷たい雨》


《この日はゲストコンマス》


《ワイラースタインさんのアンコール曲》



第1802回 定期公演 Aプログラム
2015年2月8日(日) 開場 2:00pm 開演 3:00pm

NHKホール

エルガー/チェロ協奏曲 ホ短調 作品85
マーラー/交響曲 第1番 ニ長調「巨人」

指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
チェロ:アリサ・ワイラースタイン

No.1802 Subscription (Program A)
Sunday, February 8, 2015 3:00p.m. (doors open at 2:00p.m.)

NHK Hall

Elgar / Cello Concerto e minor op.85
Mahler / Symphony No.1 D major “Titan”

Paavo Järvi, conductor
Alisa Weilerstein, cello
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする