第97話 あけない夜明けの夜明け

2005年07月03日 13時38分20秒 | Weblog

ご無沙汰しております。
更新できない日も、毎日HPを覗いていただいているようで…
みなさんのお気持ちを励みに、裏画面にて毎夜台本に取り組んでいます。

現在、私は長編小説の脚色に挑戦しています。
小説として416頁、約一年のお話を、舞台では1時間半~2時間にまとめなければなりません。
書き始めてすぐ、舞台上の制約にぶち当たります。舞台はひとつ、場面転換です。
ファミレス、公園、テニスコート、学校、家、家、春、夏、秋、冬…どうするよ、これ?
松竹座のような大ホールでない限り、8時だよ全員集合のように、床が回転し…なんて
ありえない! そんなお金、工面できない!
お金がない分、アイデアが浮かぶまで時間をかけます。
映画やドラマのように、次の瞬間そこはもう…できないところを工夫します。

脚本は主に会話で成り立っています。
役者の台詞をききながら観客は物語を追っていくので、観客は役者の言葉をききとらなければなりません。
台詞は流れていく音、活字として視覚的に遊ぶということはできません。
日常ではあっちでもこっちでも話しているという風景、会話の同時進行、
音楽ならハーモニーとして美しいのですが…舞台上では雑音になりかねません。

書きながら、できないことを知り、できることが見えてきます。
小説、映画、音楽、絵画、舞台、表現方法は様々に、
だからこそできることがあって、にしかできないことを探る。 人生も…?

中国にある「石工」の物語を思い出しました。
昔、ひとりの石工がいて、自分の境遇に嫌気がさします。
裕福な商人を見て、商人のようになれたら…と願うとあら不思議、突然商人になります。
ほどなく身分の高い役人が通りかかります。その行列の前ではだれもが頭を低く下げます。
なんと力のあることか! 男は役人になります。
ある夏の暑い日、男は太陽を見上げ、なんと、強力なことか! 今度は太陽になりました。
ところが黒い雲に邪魔され、下界のあるゆるものを照りつけることができません。
嵐の雲のなんと強いことか! 男は雲になりました。
ところが、気がつくと大きな力に押し返されます。風です。
風になり、あらゆるものを吹き飛ばし、恐れられます。
ところが、どんなに力を込めてもビクともしないものがありました。
大きくそそりたつ石です。あの石はなんと力があるんだろう…石になりたいものだ。
石になってじっとしているとノミをうちこむ槌の音が響いてきます。
おれの形が変えられていく! 石の俺より強い奴は一体誰なんだ? 見ると、石工でした…。
原典を読んでいませんので出典わからず勝手に伝承、大まかにこんなお話だったかと…(すみません)

自分以外の何者かに生まれ変わることは、どんなにお金をかけても時間をかけても
それこそできないでしょう。
どちらがよくてどちらが強いのかなんて…わかりません。
私は私という制約の中で、私だからできる自由を探るのです。悪戦苦闘中ですが…。

夜ごと、無数にある言葉の中から選んでいく…私にしかできない物語を紡いでいます。
といえば格好よく聞こえますが、ま、私レベルに、ということになりますか。
2作目、まだまだ未熟者でございますから、執筆は難航中。
HPの更新も途絶え、訪問者の期待を裏切り続けていますね。お許し下さい。
最近は私ばかりカプチーノの扉をたたいてくれる方々に力をいただいています。ありがとうございます。
台本が捗らず、あけないと思われた夜明け、第1稿がもうすぐ仕上がりそうなので、
久しぶりにほころびました。
雲の切れ間に、このまま調子に乗って、劇団掲示板にまた自ら書き込みをして
…台本に向かいます。


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