小児アレルギー科医の視線

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「第4回栃木県アレルギー連携フォーラム2019」に参加してきました。

2019年12月20日 08時06分02秒 | アトピー性皮膚炎
 2019.12.19夜、宇都宮で開催された件名のフォーラムに参加してきました。
 栃木県の獨協医科大学にアレルギーセンターが設置され、アレルギー拠点病院として活動しています。
 その連携確認、成績報告の会という位置づけです。

 センター長の吉原Dr.(獨協医科大学小児科教授)から概要が説明され、その後にアレルギーセンターに属する①総合診療科、②眼科、③麻酔科からの演題、最後に④特別講演として谷口正実Dr.(国立相模原病院臨床研究センター長)から成人喘息についてのレクチャーがありました。
 昨年に引きつづき、当院PAE(小児アレルギーエデュケーター)とともに参加しました。

① 総合診療科(本田優希Dr.)からは、薬疹との鑑別に苦慮した風疹症例の経験を報告。
 上気道炎罹患中に薬を飲んだ後に皮疹が出現すると薬疹を疑いがちですが、臨床所見(耳介後部/後頭部リンパ節腫脹)と皮疹の分布と経過(顔面周囲から始まり体幹四肢へ拡大)から風疹の可能性を疑い血液検査で確認できた患者さんのお話でした。
 小児科医は「耳介後部/後頭部リンパ節腫脹」→ 「風疹ではないか?」とピンとくるのですが、一般内科医は先に薬疹が頭に浮かぶようですね。風疹はCRS(先天性風疹症候群)を引き起こすので、見落としは避けたい感染症です。
 皮膚科の先生から「薬疹は顔面から始まり全身へ拡大するという経過は取らない」との解説があり、勉強になりました。
 また、薬疹の出現時期は、
・初めての薬では、投与開始後4〜2週間かかる。
・既に感作されている薬では1〜3日。

という経過の説明も勉強になりました。
小児科医がよく経験するのは、溶連菌性咽頭炎に対してペニシリン系抗菌薬を10日間投与したときです。だいたい、投与開始後1週間前後で出現する印象を持っていたので、今回の説明と合致します。

② 眼科(鈴木重成Dr.)からはアレルギー性眼疾患の概要説明。
 アトピー性白内障の手術動画はリアルでした。レンズを金属先端でグチャグチャに砕いて吸い取り、そこにレンズをはめ込む手技。なんだか目がムズムズしてきました。
 質疑応答で、乳児のアトピー性眼瞼炎の治療について質問させていただきました。
・どのランクのステロイドを使うべきか。
・安全域(期間・量)はどうか。
 しかし、わかってはいたものの、明確な回答は得られませんでした。やはりデータがないようです。ステロイド外用薬の強さよりも、感染症の管理を考えるべきである、眼圧はトノペンという器械があるので外来でも使用可能、患児の目を押して自分の目の硬さと比較する簡易法も紹介してくれました。
 ちなみに、鈴木Dr.は「乳児アトピー性眼瞼炎のステロイド緑内障治療経験はない」そうです。
 いろいろな講演で、注意喚起ばかり聴くのですが、実際の症例提示を見たことがありません。実態はどうなっているのでしょう。
 実は当院近隣医療圏にある眼科開業医・総合病院眼科に「乳児の眼圧測定はできますか?」と電話で確認したことがあるのですが、すべて「対応できない」というご返事でしたので、やはり大学病院とは事情が異なります。
 講演終了後、鈴木Dr.が私の元に来て「こんな眼圧測定器なら小児科外来でも使えるかもしれません」とスマホ画面で紹介してくれました。
 真面目なよい先生です。

③ 麻酔科(大谷太郎Dr.)からは術後アナフィラキシーの報告がありました。
 麻酔科は蘇生のプロですから、事前の準備は完璧です。ただ、緊急手術の場合は情報が不完全なことがあり、頻度は低いながらもアナフィラキシーを避けることができません。
 フロアの内科医から「局所麻酔薬の皮膚テストでは陰性でも、実際に診療で使う量ではアナフィラキシーが起こることがあるが、どこまで事前に検査すべきか」という質問がありましたが、正解はなさそうでした。

④ 特別講演「成人喘息の病態と最適な治療」は新しい情報満載で、とても勉強になりました。
 アレルギー検査をすると、時々カビ類が陽性に出ます。しかし、それをアレルギー疾患と関連づけて説明することは、小児では従来ありませんでした。
 谷口Dr.の勤務する相模原病院の膨大な患者データを解析すると、重症喘息患者のアレルギー検査にある傾向があることが判明したそうです。それは、
・小児〜青年期ではアルテルナリア
・成人期ではアスペルギルス

 の感作率が高いのです。
 アレルギー体質を持つ患者さんの感作の自然史として、
(ダニ/ペット)→ (アルテルナリア)→ (アスペルギルス)
 という構図が見えてきたのでした。
 しかし最近、ダニやアルテルナリアの感作を飛び越えて、いきなりアスペルギルスが陽性になる成人重症例が目立つことに気づき、解析すると、吸入ステロイド薬であるフルチカゾンを500μg/日以上使用例に感作例が多いことがわかりました。
 重症だから感作されるのか、感作されたから重症化したのか・・・ニワトリと卵のどちらが先かという議論になりそうです。
 とにかく、従来の吸入ステロイド一辺倒の治療では、重症例は解決できないことが見え隠れし始めています。
 現時点でのスタンダードの喘息治療は「シムビコートのスマート療法」であるとのコメント。
 それでもコントロール不良例には抗体医薬を考慮します。
 何を選択するかは、血液検査のパラメーターよりも臨床病型で判断する方がヒット率が高いそうです。
 例えば、アスピリン喘息(アメリカではAERD、EUではN-ERD)にはオマリズマブ(ゾレア®)が著効するそうです。
 いくつも認可され、今後も期待される抗体医薬(TSLP、IL33関連)が目白押し。
 ただ、軽症〜中等症を診療する開業医には縁がありません。
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