かっこうのつれづれ

麗夢同盟橿原支部の日記。日々の雑事や思いを並べる極私的テキスト

ハンニバル・レクターって本当に魅力的なダークヒーローです。

2007-04-16 23:09:20 | Weblog
 何か、久々にしっかりまとまった雨が降ったような気がします。多分雨の中をバイクで走ったからでしょう。寒さを覚える通勤の往復でしたが、たまにならこうしてずぶぬれになって走るのも、そう悪くないような気もします。

 さて、「ハンニバル・ライジング」に続けて「羊たちの沈黙」を読み返しているのですが、やっぱりハンニバル・レクターってかっこよいですね。人智を超えた知性と透徹とした冷静な紳士、底知れぬ残忍さ、そして、時に見せる奇妙なほどの愛情が渾然となった闇のヒーロー。その魅力は続けて読もうと思っている「ハンニバル」で更に輝きを増して描かれているはずで、今から読み返すのが楽しみでもあります。このかっこよさは一種死夢羅博士に通じるところもありますが、魅力からすると人喰いハンニバルの方が一段上かもしれません。惜しむらくはこの活躍が「レッドドラゴン」「羊たちの沈黙」「ハンニバル」、そして新刊の「ハンニバル・ライジング」の4冊しかないこと。作者のトマス・ハリスがとにかく寡作な作家で、前作「ハンニバル」から新作まで7年も経っています。「羊たちの沈黙」が平成元年、「ハンニバル」が平成12年。他にはレクター博士の出ていない一冊を除いて本を書いていないそうですから、一体どうやって生活をしているのやら、かえって心配になるほどです。もっとも日本の作家と違い、たびたび映画になって世界中で興行され、本も自国以外で売れているのですから、数冊の著作でも十分やっていけるだけの稼ぎがあるのかもしれません。ファンとしてはもっと多くの作品を読みたいところですが、こればかりは残念ながらそう簡単にかないそうにはありませんね。
 ところでこの「ハンニバル・ライジング」は、この魅力的なハンニバル・レクターがどういう経緯で誕生したのか、残酷な死を強制された妹の復習譚をベースに幼少時から青年期を描いた作品なのですが、これまでとは少々おもむきが異なり、怪物さがやや抑え気味で親しみを覚える青少年として描かれています。その復讐劇として重ねられる殺人の数々も、一種の青臭さを覚える清冽な感じがなんとなく漂っている気がいたします。それと、随所にあふれる「和」の世界観。日本人から観ると少々おかしな点も多々見られますが、それでも全体を通じてその理解はかなりなものです。巻末の解説にも欧米人でこの本の内容をそのまますんなり理解できる人がどれだけいる事か、とありましたけど、日本人にだってこれだけしっかりと「和」の世界を描き出せる人はそういないのではないか、と思いますし、読んで理解できる人が果たしてどれだけいるか怪しいものではないでしょうか。
 それはともかく、「ハンニバル・ライジング」を読んでから「羊たちの沈黙」を読み返すことで、更に両方の話への理解が深まる気がいたします。映画も、もう一度観たくなってきました。一つの神話と例えてもよさそうな、稀代の「怪物」のすばらしい物語です。

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