ルイガノ旅日記

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ぐるっと瀬戸内 アートな旅②~直島(町歩き)

2022年10月25日 | お出かけ
瀬戸内のアートな島、直島散策2日目です。朝のうちは低い雲がやや多めながらも、その上には穏やかな秋の空が広がっていました。ゆっくりめの朝食のあと、ホテルからさほど離れていないつつじ荘周辺から、この日の散策をスタートです。

【琴弾の浜】
島の南端で弧を描く砂浜。グーグルマップには、「琴弾地(ごたんぢ)海水浴場」と記載されていました。写真中央の小高い丘の上の建物は、前日訪ねたベネッセハウスミュージアムです。


琴弾の浜に建つ恵美須神社の鳥居の前に、直島散策の心強いパートナーとなったレンタサイクルを置いて記念写真を……。この鳥居には、笠木の上に石を載せると願いごとが叶うという言い伝えがあるそうです。
(本来の駐輪場は、写真右手の奥に見える空き地。この後すぐにそちらに移動しました)


その言い伝えは後で知ったのですが、なぜか鳥居には石を置いてみたくなるもの(笑)
この鳥居は半分ほど砂に埋もれているので、石を放り投げることもなく笠木の上にじか置きできます。


この浜を西に進むと、小さな桟橋の先端に草間彌生さんの『黄かぼちゃ(作品名:南瓜)』が見えてきます。1994年に直島で開催された「Open Air '94 "Out of Bounds" ―海景の中の現代美術展―」で公開された作品で、宮浦港にある『赤かぼちゃ』と並んで、直島のシンボルといってもよい存在です。


ところが昨年8月、この黄かぼちゃは台風9号の強風にあおられ、波に飲まれて大きく破損してしまいました。管理するベネッセアートサイトにより回収され、修復が行われていましたが、なんと!私たちが直島を訪ねる直前の10月4日、修復を終えて再展示が始まったのです。この旅では見られないものと諦めていただけに、絶妙のタイミングでの復元に感謝しました


ジャンプして少しだけ上から撮ってみました。ヘタの先端まで、びっしり水玉模様が描かれているんですね~。このヘタは、私たちが次に訪れる高松市の方向を向いているそうです。
草間彌生さんの『南瓜』はいくつか制作されていますが(北九州市立美術館にもあるんですよ)、直島の黄色いかぼちゃは大きさも最大級で、海の蒼と空の青、木々の緑を背景に際立つ存在感を放っていました。


……松山や 松のうら風 吹きこして しのびて拾う 恋忘れ貝……
保元の乱に敗れて讃岐国に配流される前、直島にひととき滞在した崇徳上皇の歌碑です。栄華を極めながら都を追われた上皇は、京の都を偲びながら貝を拾うという傷心の日々を、ここ琴弾の浜で過ごされたのですね。
ちなみに「直島」という名は、島民の素直さに感動した崇徳上皇が名付けたと言い伝えられています。


【本村エリア】
続いて直島の町の中、まずは本村地区から散策します。
総ヒノキ葺きの大きな屋根が印象的な、三分一博志氏の設計による直島ホール。周囲は盛り土され、建物の半分はその中に埋まっているのも珍しい造りです。


こちらは、石井和紘氏設計の直島町役場。直島には、小学校や保育園など石井さん設計による建物が多いのだそうです。


南北に並んだ町役場と直島ホール。アートの島という名に恥じない存在感がありますね。


直島郵便局も、そこはかとなくアートな雰囲気 (^-^)ゞ


家プロジェクトの『南寺』。ベネッセアートサイトによると、「家プロジェクト」とは『点在していた空き家などを改修し、人が住んでいた頃の時間と記憶を織り込みながら、空間そのものをアーティストが作品化』したもの。この『南寺』は、ジェームズ・タレル(地中美術館に恒久展示されるアーティストの一人)の作品サイズにあわせ、安藤忠雄氏の設計で新たに作られた建物です。残念ながらこの日は休館日で内部の見学はできませんでした。


こちらは、かつて歯科医院兼住居であった建物を、アーティスト大竹伸朗氏が作品化した『はいしゃ』。


家プロジェクトでは現在、『角屋』『南寺』『きんざ』『護王神社』『石橋』『碁会所』『はいしゃ』の7軒が公開されています。
直島のほとんどの施設や商店などは、月曜日がお休み。月曜が祝日の場合は、翌日の火曜が休みとなります。この日は3連休明けの火曜日だったので、外から見るだけになりました。


宮浦港とは反対側、島の東岸にある本村港は、四国汽船の旅客船(岡山・宇野港~本村港)、豊島フェリーの高速船(香川・高松港~本村港)が発着する小さな港。湧き上がる入道雲のような『直島港ターミナル』は、格子状に組んだ木の柱梁の上に球体のFRPを積み上げた作品です。


民家の壁に描かれたバス停やドア。


ガイドブックによると、直島産の天日塩を使ったハマチのフライにタルタルソースをかけた直島バーガーの店、「maimai」。ハマチフライのバーガーを食べてみたかったのですが、こちらもお休みでした。


本村地区の狭い路地には、ユニークな絵や飾りがたくさん。自転車を置いて、徒歩で散策するのもお勧めです。


「お休み」の看板も見ていて楽しくなります。


家々の壁面や庭先にも……。




【宮ノ浦エリア】
高松行きのフェリーの時間が近づいてきたので、直島の玄関口、宮ノ浦地区に戻ってきました。
こちらは、家プロジェクト『はいしゃ』と同じく、大竹伸朗氏が手がけた『直島銭湯 I ♥ 湯』。外観・内装をはじめ、浴槽やタイル画、各種陶器まで、氏の世界観が反映された作品で、実際に入浴できる美術施設となっています。


直島銭湯「I ♥ 湯」のすぐ近くの古民家を改修し、アート作品を展示するギャラリー「NaoPAM」。


ガラス張りのフェリーターミナル、海の駅なおしま。アートの島のエントランスにふさわしい斬新なデザインです。広いスペースに、乗船チケット売り場や観光案内所、カフェや待合所などがあり、外側には、バスの発着所や車の待機スペース、イベント広場などが設けられています。


桟橋を海のほうに歩くと、草間彌生さんの『赤かぼちゃ』やSANAA(サナア)デザインの椅子が見えてきます。SANAAとは、妹島和世(せじまかずよ)さんと西沢立衛(にしざわりゅうえ)氏の建築家ユニットで、本村港で見た入道雲のような『直島港ターミナル』や、上の写真の『海の駅なおしま』もSANAAの作品です。


フェリーが直島に近づくと、遠くからでも真っ先に目に入る巨大な『赤かぼちゃ』。この作品については、「太陽の『赤い光』を宇宙の果てまで探してきて、それは直島の海の中で赤カボチャに変身してしまった」と、草間さんご自身が語っておられます。


内部は空洞で、床には水玉模様が描かれていました。窓から差し込む自然光が眩いほど。夜間はライトアップされるそうです。


窓の外に広がる瀬戸内の風景も、作品の一部でしょうか。


こちらは建築家藤本壮介氏のデザインで、浮島現象(海岸から遠くの島や岬を眺めたとき、海面との境界が切れて浮き上がって見える現象)をイメージした『直島パヴィリオン』。「直島諸島の28番目の島」というコンセプトで造られました。直島町は実は、27の島々から構成される直島諸島なんです。


三角形のステンレス製メッシュ約250枚を組み合わせた『直島パヴィリオン』。こちらも中に入ることができ、夜はライトアップされます。


フェリーターミナルの横に設置された観光案内板とウェルカムボード。直島の特徴を描いた絵とオブジェを組み合わせた看板で、ポルトガル人アーティスト、ジョゼ・デ・ギマランイス氏の作品です。青い地図に直島諸島が描かれていますね。


芝の緑に映える青いモニュメント『BUNRAKU PUPPET』。これもギマランイス氏が、島で継承される「直島女文楽」の人形の動きや着物の裾さばきにインスピレーションを得た作品です。夜間はライトアップされて、蛍光管のようなカラフルな光を放ちます。


2日間に亘って、楽しく得難い体験ができた直島のアート巡りもおしまい。直島と高松を結ぶフェリーに乗り込み、この日、島で何度かすれ違った高松の高校生たちと一緒に四国本土に渡ります。


直島は、国内外から多くのアートファンが訪れる"現代アートの聖地"として知られています。小さな離島ながらアクセスがいいので、朝早く自宅を出発すれば、午前中のうちに宮浦港に到着。島に宿をとれば一泊二日でも十分な日程が組めると実感できました。今回見逃した作品も多いので、機会があったらまた行ってみたいと思います。

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13 コメント

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直島諸島 (tango)
2022-10-26 04:39:33
説明が詳しく書いてありますので私も
一緒に回っている錯覚・・
部分をネットで調べましたが、このように
楽しく見ることが出来る島とは知りませんでした。楽しい時間ですね
鳥居に石を置くのは記事を読んだことが
ありました。アートな旅ですね~~
続きを楽しみにしております♪♫
高校生の旅行には楽しい良い旅ですね!
返信する
Unknown (Unknown)
2022-10-26 05:25:01
おはようございます。

コロナ前に行った直島が懐かしく思い出されます。現代アートには疎いのですが、とても楽しかった場所。
浅い考察の日記ですが、わたくしの直島の記事のURLです。
https://blog.goo.ne.jp/nan_nan_august/e/dbd78492d91601f3484bc81028a0fb97
地中美術館、南寺、護王神社を見ています。

つい最近、知人が過去に地中美術館のスタッフとして働いていたと知りました。地域のトップ校から美大に行き、看護師となり、助産師となり、今はNPOを立ち上げている背景を持つ方です。
地中美術館で白い服を着てアート作品として参加していたとは!?
人の人生とは面白いものだ!と驚いたばかりです。

そんなこんなで直島が懐かしいです。

葉月
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re:直島諸島 (Duke)
2022-10-26 16:34:07
tangoさん、こんにちは。
旅を終えてから、いろいろ調べて書いています。
もちろん、事前にも資料をあたってはいたのですが、なかなか現地では思うようにはいきません(^^;
いま思えば、ここにも行けばよかった、あそこも良さそう…なんてことがよくあります(笑)
でも、旅がお好きで行動力のあるtangoさんにそう言っていただくと、とても励みになります。
直島二日目は、最後の写真の高校生とよくすれ違いました。
高松の高校生、素直で可愛らしかったです。

記事のアップが遅くて申し訳ありませんが、瀬戸内の旅はもう少し続きますので、ご覧いただければうれしいです。
返信する
Unknown (Duke)
2022-10-26 18:05:49
葉月さん、こんばんは。
芸術に疎いのは私も同様で、とりわけ現代アートってよくわかりません。
でも、ジェームズ・タレルの作品には驚きと感動があり、これでよかったのかなぁと思っています(^^)/

教えていただいた記事から入り、小豆島から始まるシリーズ全編を読ませていただきました。
かなり旅先や感想が重なるところがあって、今回の旅を振り返ることもでき、とても楽しかったです。
地中美術館のジェームズ・タレルの作品に覚えた感動を共有できていたのではと感じました。
小豆島のオリーブの輪、そうでした。一枚一枚に地元の小学生からのメッセージが刻まれているんですよね。
小豆島の銀四郎そうめんにも行きましたよ~♪
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Unknown (chorus-kazeアッコ)
2022-10-27 20:55:57
こんばんは〜
数年前、妹と旅行先を考えていた時に
直島も候補にあったのですが、情報収集不足で魅力を感じず
鹿児島旅行になったのだったかと思いますが
Dukeさんの詳しい旅紀行で
また旅したい気持ちに唆られました。
当方色々忙しいのですが
是非行ってみたいと思います。
ありがとうございます❣️
返信する
Unknown (chorus-kazeアッコ)
2022-10-27 20:58:42
追伸
鹿児島旅行の霧島アート美術館?だったか
草間彌生さん制作の大きなハイヒールが
これもてんとう虫のような柄だったような、、、
美術館のロビーに展示されてました。
返信する
Unknown (Duke)
2022-10-27 21:50:25
chorus-kazeアッコさん、こんばんは。
直島、一泊で楽しめました。
近くからだと、日帰りされる方もいらっしゃるようです。
私も十数年前に直島を強く勧められていたのですが、長いことスルーしていました (^-^)ゞ
念願かなって行けてよかったです。
見逃した作品も沢山ありますので、いつかまた訪ねることができればと思います。

霧島アート美術館は行ったことはありませんが、草間彌生さんのハイヒールは見てみたいですね。
いい情報、ありがとうございましたヽ(^o^)丿
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Unknown (AZM)
2022-10-28 05:15:59
おはようございます。
直島に行ってみたくなりました。
懐かしい昭和の雰囲気も残ったいいところですね。

それにしても見事な秋らしい空
これだけでもいい旅だったと思います(^^)/
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Unknown (Duke)
2022-10-28 07:32:43
azmさん、おはようございます。
見逃した作品も多いのですが、2日間の直島散策は楽しい思い出です。
島のほとんどの施設や商店、飲食店は月曜日(月曜が祝祭日の場合は翌火曜)が定休日ですので、行かれるときは避けた方がいいと思います。
私は、閉館するのは主だった美術館くらいとたかを括っていて、2日目は島全体がお休み状態でした(^^;;
それでも、天候には恵まれたしたので、秋空の下、爽やかなサイクリングやウォーキングが楽しめました。
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Unknown (tsubone)
2022-10-28 07:39:01
おはようございます
直島の旅シリーズ まさに「役にたった」を2度押ししたいくらいの記事でした。
一度は行ってみたいなーと思いながら、ちょっと遠くて未踏です。
島全体を現代アートをコンセプトに統一されてるような所がいいですね。
日本の観光地って時々統一感に欠けてガックリみたいなのがあるので…
ますます行ってみたくなった記事、ありがとうございました。
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