ルイガノ旅日記

あちこち出かけた場所で目にとまったもの、
心惹かれたものを紹介しています。
よかったらおつきあい下さい。

バンクシー展~天才か反逆者か(前編)

2021年10月13日 | お出かけ
手に汗を握る接戦となった昨晩のサッカー・ワールドカップアジア最終予選。スピード感のある展開で、日本がオーストラリアに競り勝ちましたね。これで勝ち点6、グループB 4位とまだ厳しい状況に変わりはありませんが、この勢いを来月11日に行われるベトナム戦に繋げ、カタール本大会出場に向けて挽回してほしいと思います (^-^)ゞ
さて、緊急事態宣言やまん延防止重点措置が全国的に解除となった今月初め、福岡・天神で開催中の「バンクシー展 天才か反逆者か」を観に行ってきました。


バンクシー(Banksy)は、ロンドンを中心に活動する神出鬼没の覆面アーティスト。誰も彼の名前や顔、年齢などを知らない、謎に包まれた存在です。建物の外壁や塀、橋などをキャンバスに、主として「ステンシル」という型紙を用いたグラフィティアートを残してきました。秘密裏に世界各都市を訪れてはステンシルアートを描き上げ、誰も知らない間に立ち去ることから、「芸術テロリスト」とも呼ばれるバンクシー。反戦、反消費主義、難民問題など平和主義的メッセージを込めた彼の作品は人々の共感を呼ぶ一方で、皮肉や風刺を込めた作風や、公共の場や個人の所有物に作品を描くというパフォーマンスには賛否両論があるようです。(写真は、”Love is in the air”)


「バンクシー展 天才か反逆者か」の会場、天神大名UNITED LAB。地下鉄空港線の天神駅、あるいは赤坂駅から歩いて10分弱です。
日本では、2020年から2022年にかけて開催されているこの展覧会は、横浜、大阪、名古屋を経て現在はこの福岡会場。次は広島(11月6日~12月5日)、東京(12月12日~2022年3月8日)を巡回する予定です。


消毒、検温、代表者名と連絡先の記入を終えて会場へ。チケットは予約制で、基本的には日時指定となっているため、あらかじめ密は避けられるようなシステムになっています。


入口を入ってすぐの部屋では、バンクシー作品を大きなスクリーンで紹介していました。
《PARKING》
2010年、ロサンゼルスの地下駐車場の壁に描かれたブランコに乗る少女。PARKINGから"ING"を消して"PARK”……子供たちの遊び場であった公園が駐車場へと姿を変え彼らの遊び場が失われているというメッセージが込められています。
《狙われた鳩》
イスラエル軍の監視塔に面した、パレスチナ・ベツレヘムの壁に描かれた2007年の作品。オリーブの枝を咥えた平和の象徴 ハト。防弾チョッキを着た胸には、よく見ると照準が描かれており、イスラエル軍の銃口に狙われていることを示唆しています。

《インスタレーション・アーティストスタジオ》

バンクシーが制作活動の拠点にしているスタジオを再現した空間。雑然としスタジオの片隅に佇んでいるのが、覆面アーティスト バンクシーですね。

《Shop 'til You Drop》

ショッピングカートを握りしめて落下する女性。ロンドンの高級ショッピング街のビルに描かれたこの絵は、消費社会・格差社会への風刺を表現していると受け止められています。

《BOMB LOVE》
《Laugh now, but one day we’ll be in charge》


左:大きな爆弾を抱いて、うれしそうに微笑む女の子。無垢な少女と爆弾を対比させ、戦争の愚かさや非情さをクローズアップしたもの。
右:バンクシーがまだ無名の時代、社会的地位の低い若者の気持ちを表現した作品。プラカードには、”Laugh now, but one day we’ll be in charge(今は笑えばいい、いつか俺たちの出番が来る)”と書かれています。バンクシーの作品には、チンパンジーを擬人化したキャラクターが度々登場します。

《Christ with shopping bags》

慈悲や思いやり、寛容、感謝の祝日であったはずのクリスマスが、プレゼントなどで大量に消費する日に代わってしまったことへの皮肉を込めた作品。

《GRIM REAPER》

ロンドン塔の大時計の上に座る死神の顔は「スマイリー」。既に使い尽くされてしまったアイコンを風刺したものでしょうか。

《Donut Police Escort》

上のグリン・リーパーと同じく、グラフィティではなくアトリエで制作された作品。
資本主義の象徴として描かれたドーナツが、警察(権威)によって守られていることを揶揄しています。

《out of time》

2003年に発売されたイギリスの人気ロックバンドBLURのシングル盤ジャケット。
バンクシーが商業ベースの作品を手掛けるのは非常に珍しいのだそうですが、BLURとは反戦思想を共有していたと言われています。

《Think Tank》

同じくBLURの7枚目のアルバム『Think Tank』のアルバムジャケットとして描かれた作品。
ガスマスクを着けて抱き合う恋人同士が描かれています。

《Festival》

屋台に並んでいるのは、若い母親やパンクス、ヒッピー、フリーガン、左翼学生など、世間から「反資本主義者」と見なされている人々。そんな彼らが並んでまで買おうとしているTシャツには “Destroy Capitalism(資本主義をぶっつぶせ)”の文字が書かれています。資本主義に反発する人々が、資本主義にどっぷりと取り込まれている様子を皮肉った作品と想像できます。

《His Master’s Voice》

ロンドン中心部ショーディッチのナイトクラブの中庭に描かれた作品(写真右端)。日本ビクターやレコード会社HMVのトレードマークとして知られる、蓄音機に耳を傾ける犬 ニッパー(元になったのは、フランシス・バローが描いた”His Master’s Voice”)。そのニッパーがバズーカ砲を蓄音機に向かって構えています。
この絵の「主人」と「飼い犬」の関係を、バンクシーは「権威」と「民衆」などに置き換えて反権威的メッセージを伝えようとしたものなのでしょう。

《Very Little Helps》

子どもたちが忠誠を尽くすように掲揚しているのは、国旗ではなくイギリスの大手スーパーマーケットチェーンTESCOのショッピングバッグ。資本主義の下では、TESCOのような大企業が市場を独占し、肥大化した企業は「国家」のように強力な存在となって、人々を盲目的・従属的にしてしまうことを風刺したもので、いかにもバンクシーらしい作品だと思います。
タイトルの ”Very Little Helps(ほとんど何の役にも立たない)”は、TESCOの企業スローガン ”Every Little Helps(どんな小さなことでも役に立つ)”をもじってつけられました。(この作品は、他の多くのストリートアーティストから上書きを繰り返され、原形をとどめていないそうです)

《Pants》

こちらはその派生バージョンで、難民支援のためのチャリティキャンペーンのために制作されたもの。
圧政や内戦を逃れてアフリカや中近東から渡ってくる難民は、その日の生活にも困窮しており、とりわけ下着不足は衛生上大きな問題となっていました。主催者はそのことを広く知ってもらうため、有名人にサインしてもらった下着をオークションで販売し、収益を難民救済に当てるキャンペーンを企画。バンクシーは、パンツの代わりにユニオンジャックを描いた作品を提供することによって、収益に寄与するのみならず、英国政府が難民に手を差し伸べるべき(紛争地域に強制送還しないよう難民認定を行う)というメッセージを込めたと言われています。

《Soup cans》

イギリスやフランス、アメリカなど世界の著名な美術館(ルーヴルを含みます)に潜入したバンクシー。それらの美術館に、自らの作品を無断で展示したことは一度や二度ではありません。しかも、作品を持ち込み、壁に展示し、その場を立ち去るまでの様子をYou Tubeで流すというパフォーマンスまでやってのけ、世界を驚かせました。
2005年3月25日、MoMA(ニューヨーク近代美術館 )でアンディ・ウォーホルの名作《Campbell's Soup Cans》の隣に、自らのパロディ作品《TESCO’s Soup Cans》を無断で展示。この絵は、なんと、美術館のスタッフや警備員、入場者を含め、誰にも気づかれることなく、6日間にわたって展示(放置)され続けました。(このとき無断展示したのは、スープ缶1個の絵)

《バンクシーのネズミ》

バンクシーは、ネズミをモチーフにしたグラフィティを多く残しています。


回し車(ハムスターリング)に見立てた時計。


『ネズミはどのような状況でも生き抜くことのできる動物で、都会環境に最も適合した唯一の野生動物だ。私たちはみな、ある意味でネズミなのだ。私たちは、システムが作り出す環境のなかで生き抜こうともがき、そのシステムを出し抜こうと、ずるく、巧妙に生きている』(上記パネルより)

《I love London rat》

上の写真と同じネズミの絵ですが、プラカードには ”I ❤️ LONDON ROBBO” と書かれています。
キング・ロボも、ロンドンを中心に活動するストリートアーティストですが、バンクシーとは犬猿の仲。お互いのグラフィティを修正し、上書きしあってきました。これもその一つで、バンクシーが描いたネズミのプラカードに、ロボが書き加えたのだそうです。

《IF GRAFFITI CHANGED ANYTHING…》

ロシア生まれの米国人で、無政府主義や女性の権利を主張した活動家、エマ・ゴールドンの "If voting changed anything they'd make it illegal(もし選挙で世の中が変えられるのなら、彼らは選挙を禁止しているはずだ)”というスローガンをもじって、バンクシー自身のメッセージに置き換えた作品。ここにもネズミが描かれていますね。

《Banksy’s rat in Tokyo ???≫

バンクシーのネズミと言えば、東京でもそれらしきステンシル画が見つかっています。2019年初め、臨海線「ゆりかもめ」の日の出駅近くの防潮堤に描かれた、傘を手にしたネズミの絵。本当にバンクシーが描いたものかどうかは明らかになっていませんが、小池東京都知事が、ご自身のインスタグラムにアップされたことが話題になりましたね。(写真はそのインスタからお借りしました)

バンクシー展の紹介はもう少し続きます。長くなりましたので初回はここまでとし、残りは次回アップしたいと思います (^-^)ゞ

コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 週末は男子ごはん~サーモン... | トップ | バンクシー展~天才か反逆者... »

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
バンクシー (hirorin)
2021-10-13 18:41:53
風刺が効いていて、政権や体制の批判もユーモアを織り込みながら描かれてますよね。
えっ?こんなとこに?ってくらい小さいのが可愛くて好きです。
スープの缶のいいですねえ。
面白い。

NHKだったかな?バンクシーの正体を探るドキュメンタリーみたいなの見たことあります。
ある程度特定されてるようですが、謎のままで置いといて欲しいです。
返信する
re:バンクシー (Duke)
2021-10-13 19:12:55
hirorinさん、こんばんは〜 (^-^)ゞ
屋外のパフォーマンスだけではなく、緻密な絵画も描く人なんですね。
知りませんでした(^^;;
風刺を効かせたアートって、欧米には多いですよね。
かなり前ですが、とある美術館で、自分の作品を押し込むように壁に貼り付けている様子を、何かのテレビで見たことがあります。
その頃はバンクシーをよく知らず、大胆な行為にただただ驚くばかりでした(笑)

バンクシーの正体は、きっとある程度わかっているのでしょうね。
あれだけのパフォーマンス、かなりのマンパワーが必要でしょうから、知っている人は実は多いのだと思います。
でもhirorinさんと同じく、謎に包まれた正体不明のアーティストのままでいてほしいです〜(*^^*)
返信する
Unknown (ビオラ)
2021-10-15 14:26:47
今日は~。

先日の、サッカー~、日本対オーストラリア戦は、見なかったですが、後で、TV、ネット、ブログ仲間の方々の発信で、知りました~💗
終始観戦なさっていた方々は、ハラハラだった事でしょう~。
最終的に、
勝利につながって~、良かったです~(^-^)q


バンクシー~、公共の場、一目につくところに、風刺画を・・・。
よい意味でも、そうでない意味でも・・・、インパクトありますね・・・。

記事最後の、小池さんのエピソードは、記憶にあります。
このワンショットは、それらしき絵も、インパクトありますが、
ファッショナブルなカラーのお召し物の、小池さんも、インパクトあります~♪
返信する
Unknown (Duke)
2021-10-15 15:08:52
ビオラさん、こんにちは〜 (^-^)ゞ
対オーストラリア戦は白熱したいいゲームでした。
開始間もない先制点。
田中選手の冷静なシュートが光りました。
今回の予選で初めて田中選手をスタメン起用した森保監督の采配がビシッと決まった瞬間でした〜*\(^o^)/*

バンクシーの作品や行動には賛否両論あって当然だと思います。
神出鬼没に現れて、作品を残して消え去るというスタイルには感嘆するほかありません。
ただ個人的には、風刺や皮肉が過ぎて嫌味だなと感ずる作品もあります。
好きなのは、花束を投げる男や少女と風船、EU旗などです。。
やはり、ポジティブな夢のある作品がいいですね。

小池都知事のインスタ、話題になりましたね。
こんなところはお茶目でかわいいと思います(笑)
小池さんのファッションに着目されるなんて、さすがビオラさんですね〜♪
返信する

コメントを投稿