「頭文字D」の主人公・藤原拓海。
実に昼行灯、ぼんやりとしたキャラクターだ。
そんな拓海が実はすごい走り屋、そのギャップがキャラとして惹きつける。
峠での高橋啓介との闘い(ハチロク対FD-3S)はこう。
まず啓介のFDは350馬力にチューンアップしたもの。
絶妙のクラッチミートのせいもあり、スタートの直線では「ハチロクのフル加速など止まっている様にしか見えない」形で引き離す。
さらにFDは国産最強のコーナリングマシーン。
カーブでもハチロクを引き離すだろうとみんなが思う。
啓介も「遠慮はしねーぜ。二度とバックミラーに映ることはねえ」と思う。
しかし拓海はガードレールのライン5センチと離れていない曲がりでカーブをクリア。
啓介のFDとの距離を縮める。
先入観を裏切った時、キャラが立つという見本だ。
それは他の人物たちのリアクションで描かれる。
「すんげー、なんだ。あのハチロク!すごいスピードでケツ流しながら突っ込んできて、わけわかんない速さで抜けていく」
「見ている方がゾッとするぜ。いつすっとんでもおかしくねぇ。秋名にあんなハチロクいたっけ?」
「あいつ、つっこみ重視のとんでもねえカミカゼ走法だ。下りの恐怖を感じる感覚が欠けているんじゃないのか?あのドライバー」
闘っている啓介も焦る。
「追いつかれた……。何が起こっているんだ。気が変になりそうだ」
そして啓介の兄・涼介のリアクション。
啓介よりも格上の人、ゲームで言えばラスボスだ。
ひとしきりハチロクの戦力分析を語らせておいて、涼介にこうコメントさせる。
「だからといって啓介が負ける理由は見つからない。そんなことがあるとすれば、ハチロクのドライバーはオレの理解を遙かに超えたところにいるというわけか?」
「モンスターなのはクルマではなく、ドライバー」
最高の賛辞だ。
こうして賛辞をどんどん増幅させて語らせると、キャラクターが立ってくる。
いかにリアクションを描き分けることが出来るか?
これは作家の力量に関わる。
描き分けが様々にできる作家がやはりヒット作を描ける。
そんなふうにまわりがヒートアップする中、「モンスター」の拓海。
いつもと変わらない。
ぼんやりしている。
拓海は前を走る啓介を見てこう思うだけだ。
「前よりスキがなくなっている。ずいぶん上手くなったな、このドライバー」
通常なら、対戦相手やまわりが熱くなるに従って、主人公も熱くなるものだが、この主人公・拓海は変わらない。
これが拓海を個性的な主人公にしている。
そして、拓海は「抜かねーと、やっぱ勝ったとは認めてくれねえだろうな、あのクソおやじ。しょーがねー、アレをやるか」とボツリと言って、あっと驚く得意技で啓介を抜き去る。
この得意技・必殺技を持っているというのもヒーロー型主人公の条件だが、やはりここで重要なのは、なかなか心に火のつかないヒーロー像だ。
啓介との闘いを終えて、ガールフレンドと海に来ていた拓海は思う。
「前を走るRXー7がどんどん近づいてきて、気がついたらワクワクしながら追かっけていた。……クルマって結構いいよな」
側にいたガールフレンドには「失礼だよねー、拓海くんて。こんなカワイイ子がとなりにいるのに放っておいて、自分の世界に行くぅ?」と言って注意されるが、拓海の心に火がついたのは、「……クルマって結構いいよな」程度である。
まわりは拓海を倒すのはオレだ、と熱く燃え上がっているのに。
主人公の立て方に定石はあるが、その定石を崩したところに新しさが生まれる。
実に面白い。
実に昼行灯、ぼんやりとしたキャラクターだ。
そんな拓海が実はすごい走り屋、そのギャップがキャラとして惹きつける。
峠での高橋啓介との闘い(ハチロク対FD-3S)はこう。
まず啓介のFDは350馬力にチューンアップしたもの。
絶妙のクラッチミートのせいもあり、スタートの直線では「ハチロクのフル加速など止まっている様にしか見えない」形で引き離す。
さらにFDは国産最強のコーナリングマシーン。
カーブでもハチロクを引き離すだろうとみんなが思う。
啓介も「遠慮はしねーぜ。二度とバックミラーに映ることはねえ」と思う。
しかし拓海はガードレールのライン5センチと離れていない曲がりでカーブをクリア。
啓介のFDとの距離を縮める。
先入観を裏切った時、キャラが立つという見本だ。
それは他の人物たちのリアクションで描かれる。
「すんげー、なんだ。あのハチロク!すごいスピードでケツ流しながら突っ込んできて、わけわかんない速さで抜けていく」
「見ている方がゾッとするぜ。いつすっとんでもおかしくねぇ。秋名にあんなハチロクいたっけ?」
「あいつ、つっこみ重視のとんでもねえカミカゼ走法だ。下りの恐怖を感じる感覚が欠けているんじゃないのか?あのドライバー」
闘っている啓介も焦る。
「追いつかれた……。何が起こっているんだ。気が変になりそうだ」
そして啓介の兄・涼介のリアクション。
啓介よりも格上の人、ゲームで言えばラスボスだ。
ひとしきりハチロクの戦力分析を語らせておいて、涼介にこうコメントさせる。
「だからといって啓介が負ける理由は見つからない。そんなことがあるとすれば、ハチロクのドライバーはオレの理解を遙かに超えたところにいるというわけか?」
「モンスターなのはクルマではなく、ドライバー」
最高の賛辞だ。
こうして賛辞をどんどん増幅させて語らせると、キャラクターが立ってくる。
いかにリアクションを描き分けることが出来るか?
これは作家の力量に関わる。
描き分けが様々にできる作家がやはりヒット作を描ける。
そんなふうにまわりがヒートアップする中、「モンスター」の拓海。
いつもと変わらない。
ぼんやりしている。
拓海は前を走る啓介を見てこう思うだけだ。
「前よりスキがなくなっている。ずいぶん上手くなったな、このドライバー」
通常なら、対戦相手やまわりが熱くなるに従って、主人公も熱くなるものだが、この主人公・拓海は変わらない。
これが拓海を個性的な主人公にしている。
そして、拓海は「抜かねーと、やっぱ勝ったとは認めてくれねえだろうな、あのクソおやじ。しょーがねー、アレをやるか」とボツリと言って、あっと驚く得意技で啓介を抜き去る。
この得意技・必殺技を持っているというのもヒーロー型主人公の条件だが、やはりここで重要なのは、なかなか心に火のつかないヒーロー像だ。
啓介との闘いを終えて、ガールフレンドと海に来ていた拓海は思う。
「前を走るRXー7がどんどん近づいてきて、気がついたらワクワクしながら追かっけていた。……クルマって結構いいよな」
側にいたガールフレンドには「失礼だよねー、拓海くんて。こんなカワイイ子がとなりにいるのに放っておいて、自分の世界に行くぅ?」と言って注意されるが、拓海の心に火がついたのは、「……クルマって結構いいよな」程度である。
まわりは拓海を倒すのはオレだ、と熱く燃え上がっているのに。
主人公の立て方に定石はあるが、その定石を崩したところに新しさが生まれる。
実に面白い。