“00(ダブルオー)”の地位に昇格したばかりのジェームズ・ボンドの物語。 任務は世界中のテロリストの資金源となっている“死の商人”ル・シッフルの資金稼ぎを阻止すること。
ル・シッフルの資金稼ぎの手法はテロリストから金を預かり、航空機事故などを起こして株価を操作し、利益を得るというもの。しかし、それがボンドに阻止されて、カジノでの高額掛金1500万ドルのポーカー勝負になるわけだが……。
この作品、ボンドの人間像が最初とラストで大きく変わっているのがいい。
最初のボンドは獲物を追いつめるハンター。
目的のためなら手段を選ばない。ワイルドで荒っぽい。
今までのボンド像である英国紳士の優雅さなどかけらもない。
お得意の情事も情報が得られれば、相手の女性を平気で放っていく。
女性は情報を得るための手段・道具であり、愛することをしない。
そんなボンドが変わるのは掛金1500万ドルの監視役として財務省から送り込まれた女性ヴェスパー・リンドが現れてからだ。
ボンドは彼女を恋する様になる。
本気でのめり込む。彼女のためならスパイの仕事を辞めてもいいと思う。
駆け引きと裏切り、まわりはすべて敵だと思わなければならない不信の世界に生きているボンドにとって彼女は「鎧をまとわなくてもいい」存在だった。
しかし……。(以下、ネタバレです)
彼女はボンドを裏切る。
自分の愛する人がル・シッフルに囚われの身になり、協力する。
ボンドがポーカーで得たお金を引き出そうとするのだ。
そのためにボンドを愛するふりをした。
裏切られたボンド。
しかし人間とは矛盾を抱えた生き物。
彼女は恋人のためにボンドを騙したが、同時に愛し始めてもいる。
わざと敵と通信をした携帯を残し、自分が裏切ったことをボンドに告げる。
事件の黒幕をボンドに教える。
こうした行動をとったのは、ボンドを愛するがゆえだ。
この作品は矛盾したふたつの心を抱えた人物像を描き出した所が素晴らしい。
そしてボンド。
この裏切った彼女、ヴェスパー・リンドのことで、彼の「女性像」「女性観」が形作られる。
ボンドの女性像・女性観とは「女とは愛すべき存在であるが、同時に愛のために平気でウソのつける存在」。
以後、ボンドはこれまで描かれてきたボンド像となる。
彼は女を愛するが決してのめり込まない。
いつも片目をつむって女を愛している。
女を平気で裏切ることのできる存在として見据え、そんな存在である女を可愛いと思っている。
それはある意味、大人の余裕。
ボンドの女性に対する優雅さの理由はここにある。
そんなボンドだが、ここで一歩踏み込んで考えてみれば、こんな解釈も出来る。
ボンドは彼が愛して死んだヴェスパー・リンドを永遠に求めているのだ。
以後の事件でボンドが愛した女たちは、みんな彼を愛して裏切った。
ボンドはそんな女たちの中に、ヴェスパー・リンドを求めているのかもしれない。
あるいは彼を愛して決して裏切らない女性を求めているのかもしれない。
そう考えてみると、ボンドの心の中は非常に孤独でせつない感じがする。
ボンドはスパイであると同時に愛の放浪者でもあるのだ。
ジェイムス・ボンド誕生秘話であり、ボンドの心に新しい解釈を加えたこの作品、実によくできている。
以後はこのボンド像で行くのだろうか?
ル・シッフルの資金稼ぎの手法はテロリストから金を預かり、航空機事故などを起こして株価を操作し、利益を得るというもの。しかし、それがボンドに阻止されて、カジノでの高額掛金1500万ドルのポーカー勝負になるわけだが……。
この作品、ボンドの人間像が最初とラストで大きく変わっているのがいい。
最初のボンドは獲物を追いつめるハンター。
目的のためなら手段を選ばない。ワイルドで荒っぽい。
今までのボンド像である英国紳士の優雅さなどかけらもない。
お得意の情事も情報が得られれば、相手の女性を平気で放っていく。
女性は情報を得るための手段・道具であり、愛することをしない。
そんなボンドが変わるのは掛金1500万ドルの監視役として財務省から送り込まれた女性ヴェスパー・リンドが現れてからだ。
ボンドは彼女を恋する様になる。
本気でのめり込む。彼女のためならスパイの仕事を辞めてもいいと思う。
駆け引きと裏切り、まわりはすべて敵だと思わなければならない不信の世界に生きているボンドにとって彼女は「鎧をまとわなくてもいい」存在だった。
しかし……。(以下、ネタバレです)
彼女はボンドを裏切る。
自分の愛する人がル・シッフルに囚われの身になり、協力する。
ボンドがポーカーで得たお金を引き出そうとするのだ。
そのためにボンドを愛するふりをした。
裏切られたボンド。
しかし人間とは矛盾を抱えた生き物。
彼女は恋人のためにボンドを騙したが、同時に愛し始めてもいる。
わざと敵と通信をした携帯を残し、自分が裏切ったことをボンドに告げる。
事件の黒幕をボンドに教える。
こうした行動をとったのは、ボンドを愛するがゆえだ。
この作品は矛盾したふたつの心を抱えた人物像を描き出した所が素晴らしい。
そしてボンド。
この裏切った彼女、ヴェスパー・リンドのことで、彼の「女性像」「女性観」が形作られる。
ボンドの女性像・女性観とは「女とは愛すべき存在であるが、同時に愛のために平気でウソのつける存在」。
以後、ボンドはこれまで描かれてきたボンド像となる。
彼は女を愛するが決してのめり込まない。
いつも片目をつむって女を愛している。
女を平気で裏切ることのできる存在として見据え、そんな存在である女を可愛いと思っている。
それはある意味、大人の余裕。
ボンドの女性に対する優雅さの理由はここにある。
そんなボンドだが、ここで一歩踏み込んで考えてみれば、こんな解釈も出来る。
ボンドは彼が愛して死んだヴェスパー・リンドを永遠に求めているのだ。
以後の事件でボンドが愛した女たちは、みんな彼を愛して裏切った。
ボンドはそんな女たちの中に、ヴェスパー・リンドを求めているのかもしれない。
あるいは彼を愛して決して裏切らない女性を求めているのかもしれない。
そう考えてみると、ボンドの心の中は非常に孤独でせつない感じがする。
ボンドはスパイであると同時に愛の放浪者でもあるのだ。
ジェイムス・ボンド誕生秘話であり、ボンドの心に新しい解釈を加えたこの作品、実によくできている。
以後はこのボンド像で行くのだろうか?