平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

ファイヤーフォックス

2007年03月23日 | 洋画
 冷戦時代。
 ソ連の最新鋭戦闘機ファイヤーフォックスを奪うアメリカ人パイロット・ガント(クリント・イーストウッド)の物語。
 このガントの人物造型がいい。
 まず陸ではまったくシロウトなのだ。
 彼はパイロットでスパイ活動などはやったことない。
 そんな彼を助けるのは、アメリカが送り込んだ地元の諜報部員たちだ。
 彼らの役割はガントをファイヤーフォックスまで連れていくこと。
 ガントは彼らの指示に従って言われるがままに行動する。
 偽のパスポートで商人スプラグと名乗りモスクワに潜入するがKGBの追及は厳しく、ガントは地元の諜報部員たちが用意した偽パスポートを使い、別の人物になってかわしていく。
 しかしガントは陸のシロウトだからミスも犯す。
 そんな時は地元の部員から「無能」呼ばわりされる。
 実に精彩に欠ける。 

 そんなガントだが、ファイヤーフォックスを奪い、空に出ると人物が一変する。
 プロフェッショナルになる。
 旅客機とわざとニアミスを起こし、飛んで行った方向を偽装する。
 これのせいで奪われたファイヤーフォックスを追うロシアの軍部は一時、ガントは南に飛んだと勘違いする。
 ガントの飛行技術と最新鋭のファイヤーフォックスのテクノロジーで、ガントは無敵になる。途中、ミサイル巡洋艦と遭遇するが、放たれたミサイルも迎撃して難なくかわす。
 彼はファイヤーフォックスを評して言う。
「イカす機械だ」
 そんな無敵のガントだが、やはり障害は出て来る。
 障害があるからエンタテインメントになる。
 最初の障害はファイヤーフォックスの燃料だ。
 マッハ5で飛ぶファイヤーフォックスだが、飛行距離は4000キロ。
 燃料補給が必要になってくる。
 その燃料補給をいかに行うか?
 ここはアイデアだ。
 エンタテインメント作品では、障害を乗り越えるためのあっと驚くアイデアが必要になってくる。
 それは北極の永久氷原から浮上してくるアメリカの潜水艦。
 ガントは氷原にいったん着陸して潜水艦から補給を受ける。
 しかし、ロシアの追及も激しく「貴艦はそこで何をしているのか?」と問いつめてくる。潜水艦は「気象観測をしている」ととぼけるが、敵の巡洋艦から飛び立ったヘリコプターが迫っている。ヘリに補給をしていることを目撃されたらアウトだ。
 ここでタイムサスペンスが生まれる。
 間一髪、補給は間に合い、ファイヤーフォックスはヘリに目撃されずに飛び立つことが出来るが、飛び立つ時、「世話になったな」と語るガントに潜水艦艦長はこう返す。
「とっとと消え失せろ」
 普通なら「ご無事で」とか「気をつけろよ」と返す所だが、敢えて憎まれ口を言う。実にかっこいいせりふだ。
 こうして飛び立ったファイヤーフォックス。
 もはや帰還するだけでガントは「もう大丈夫だ。ビールを冷やして待ってろ」と軽口を叩くが、最後に大きな障害が待ち受ける。
 ファイヤーフォックスの2号機だ。
 同じ性能を持った戦闘機どうしのドッグファイト。
 実にサービス精神旺盛だ。
 こうして見応えのあるエンタテインメント作品が誕生した。

★追記
 ガントは飛行記録を残すため飛行時に行った行動をすべてブラックボックス(ボイスレコーダー)に録音する。
 これが思わぬ効果を生んだ。
 戦闘機操縦のディティルが見ている者に伝わるのだ。
 うまい使い方だ。

★追記
 ガントのトラウマ(ベトナムで罪もない少女が殺されたこと)については作品中あまり深く描かれていない。これをもっと突っ込んで描けばガントのという人物がさらに魅力的になるのだが残念だ。
 原作で確認してみたい。


コメント
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