「賭博破戒録カイジ」地獄チンチロ編。
ここでは人間の欲望・弱さというものを見せつける。
借金で地下労働施設で働くことになるカイジ。
彼は「蠢くミミズか虫けらのように地中で15年働かなくてはならない」
「熱気と騒音、粉塵、悪臭、不衛生」の中で働かなくてはならない。
そんなカイジの希望は「1日外出券」。
1日外出できれば、博打で借金など返せると思っている。
この外出券を得るためには、この地下の通貨で50万ペリカを支払わなくてはならない。
ちなみにカイジが1ヶ月働いて得られる給料は9万1000ペリカ(1日の賃金・約350円)だ。
カイジは給料を貯めて外出券を手に入れようとするが、誘惑が襲ってくる。
給料を払う側も誘惑で這い上がろうとする人間をダメにしようとする。
ビール、おつまみを販売するのだ。
ちなみにビールは5000ペリカ、柿ピーは1000ペリカ。
カイジは最初抵抗するが、次第に誘惑に負けていく。
この過程がエキサイティングだ。
まず給料を使わせようとする班長は「初月給のお祝いだ」と言って、ビールをただで渡す。
体に染み込む冷たいビールの快楽。
「犯罪的だっ!うますぎるっ!労働のほてりと部屋の熱気で暑苦しい体に1ヶ月ぶりのビール。染み込んできやがる!体に!」
「本当にやりかねない!ビール1本のために強盗だって」
と言って、底に残ったビールを手のひらに落としペロペロ舐める。
こういうせりふや描写、この作品の作者・福本伸行さんはすごくうまい。
カイジはさらなる快楽を求めるようになる。
隣でさきイカを食べてビールを飲んでいる男を見て、「あんなものでビールが飲めたら、さぞっ」と思う。
頭の中で計算を始める。
1ヶ月の給料が9万ペリカ。
9万×6ヶ月=54万ペリカ。
外出券は50万ペリカ。
ということは54-50=4万ペリカは自由に使えると計算する。
ビールを1本だけ買うカイジ。
そして自分に言い訳する。
「考えてみれば、1ヶ月我慢した、今日は特別な日だ」
すると販売員が「せっかく飲むんだったら、素ビールじゃ味気ないって」と言ってつまみを誘惑する。
カイジが負けて、柿ピーを買うと、今度は班長が誘惑する。
「欲望の発散のさせ方が下手だなぁ。カイジくんが本当に欲しいのは焼き鳥。だけど、それはあまりにも値が張るから、こっちのしょぼい柿ピーでごまかそうって言うんだ。その妥協は痛まし過ぎる。かえってストレスが溜まる」
実に巧みだ。
飢えて乾ききった人間にはそんな理屈を素直に受け入れてしまう。
作者は再度、別の言い方で表現する。
「食えなかった焼き鳥がチラついてさ、全然スッキリしない。心の毒は残ったままだ。自分へのご褒美の出し方としちゃ最低さ。カイジくん、贅沢ってやつはさ、小出しはダメなんだ。やる時はきっちりやった方がいい。それでこそ次の節制の励みになるってもんだ」
誘惑に負けてしまう弱い人間心理の動きと誘惑の的確なせりふ(それも違う形で繰り返して)、実にうまい。
そして最後にはこう班長に語らせている。
誘惑に負けて給料のほとんどを使ってしまったカイジを見ながら班長は言う。
「ヤツはこう考えるだろう。明日から節制だ。その考えがまるでダメ。「明日からがんばろう」という発想からは、どんな芽も吹きはしない。明日からがんばるんじゃない。今日、今日だけがんばるんだ。今日をがんばった者、今日をがんばり始めた者にのみ。明日が来るんだよ」
実に深い。
こんな班長のせりふもある。
「世の中には利用する側とされる側、この2種類しかいないんだ」
厳しい現実認識だ。
そして主人公たちが日常のベールに覆われていない、過酷な状況に置かれているからこそ言えるせりふでもある。
ここでは人間の欲望・弱さというものを見せつける。
借金で地下労働施設で働くことになるカイジ。
彼は「蠢くミミズか虫けらのように地中で15年働かなくてはならない」
「熱気と騒音、粉塵、悪臭、不衛生」の中で働かなくてはならない。
そんなカイジの希望は「1日外出券」。
1日外出できれば、博打で借金など返せると思っている。
この外出券を得るためには、この地下の通貨で50万ペリカを支払わなくてはならない。
ちなみにカイジが1ヶ月働いて得られる給料は9万1000ペリカ(1日の賃金・約350円)だ。
カイジは給料を貯めて外出券を手に入れようとするが、誘惑が襲ってくる。
給料を払う側も誘惑で這い上がろうとする人間をダメにしようとする。
ビール、おつまみを販売するのだ。
ちなみにビールは5000ペリカ、柿ピーは1000ペリカ。
カイジは最初抵抗するが、次第に誘惑に負けていく。
この過程がエキサイティングだ。
まず給料を使わせようとする班長は「初月給のお祝いだ」と言って、ビールをただで渡す。
体に染み込む冷たいビールの快楽。
「犯罪的だっ!うますぎるっ!労働のほてりと部屋の熱気で暑苦しい体に1ヶ月ぶりのビール。染み込んできやがる!体に!」
「本当にやりかねない!ビール1本のために強盗だって」
と言って、底に残ったビールを手のひらに落としペロペロ舐める。
こういうせりふや描写、この作品の作者・福本伸行さんはすごくうまい。
カイジはさらなる快楽を求めるようになる。
隣でさきイカを食べてビールを飲んでいる男を見て、「あんなものでビールが飲めたら、さぞっ」と思う。
頭の中で計算を始める。
1ヶ月の給料が9万ペリカ。
9万×6ヶ月=54万ペリカ。
外出券は50万ペリカ。
ということは54-50=4万ペリカは自由に使えると計算する。
ビールを1本だけ買うカイジ。
そして自分に言い訳する。
「考えてみれば、1ヶ月我慢した、今日は特別な日だ」
すると販売員が「せっかく飲むんだったら、素ビールじゃ味気ないって」と言ってつまみを誘惑する。
カイジが負けて、柿ピーを買うと、今度は班長が誘惑する。
「欲望の発散のさせ方が下手だなぁ。カイジくんが本当に欲しいのは焼き鳥。だけど、それはあまりにも値が張るから、こっちのしょぼい柿ピーでごまかそうって言うんだ。その妥協は痛まし過ぎる。かえってストレスが溜まる」
実に巧みだ。
飢えて乾ききった人間にはそんな理屈を素直に受け入れてしまう。
作者は再度、別の言い方で表現する。
「食えなかった焼き鳥がチラついてさ、全然スッキリしない。心の毒は残ったままだ。自分へのご褒美の出し方としちゃ最低さ。カイジくん、贅沢ってやつはさ、小出しはダメなんだ。やる時はきっちりやった方がいい。それでこそ次の節制の励みになるってもんだ」
誘惑に負けてしまう弱い人間心理の動きと誘惑の的確なせりふ(それも違う形で繰り返して)、実にうまい。
そして最後にはこう班長に語らせている。
誘惑に負けて給料のほとんどを使ってしまったカイジを見ながら班長は言う。
「ヤツはこう考えるだろう。明日から節制だ。その考えがまるでダメ。「明日からがんばろう」という発想からは、どんな芽も吹きはしない。明日からがんばるんじゃない。今日、今日だけがんばるんだ。今日をがんばった者、今日をがんばり始めた者にのみ。明日が来るんだよ」
実に深い。
こんな班長のせりふもある。
「世の中には利用する側とされる側、この2種類しかいないんだ」
厳しい現実認識だ。
そして主人公たちが日常のベールに覆われていない、過酷な状況に置かれているからこそ言えるせりふでもある。