平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

麒麟がくる 第25回「羽運ぶ蟻」~貧しい人を助けたい義昭、皆に褒められたい信長──すでに亀裂が……

2020年09月28日 | 大河ドラマ・時代劇
「将軍になれば人を救える。
 貧しい人、私の手の届かなかった人を助けられる。
 そう考えると将軍になるのも悪くない」

 これが義昭(滝藤賢一)が将軍になる理由だった。
 確かに。
 権力を持つとはそういうこと。
 権力を持てば大きな力を使えるから、たくさんの人を救える。
 政治家かくあるべし。
 しかし現実は私腹を肥やし、自分に親しい人のために大きな力を使うのがほとんど。

 一方、信長(染谷将太)。
 信長の行動原理は「いくさ」で「褒められたい」から「皆が喜ぶ」から。
 完全に子供の論理だ。個人的な動機だ。
 堺を手に入れて外国のめずらしい物を見て見たい、という動機もそう。
 年を重ねれば、もう少し成熟するかと思ったが、信長の幼児性は昔と変わらないようだ。
 とは言え、光秀(長谷川博己)との対話で、将軍を戴いて近畿を抑え、大きな国をつくるという方向を見出した。
 しかし、それはいくさをする動機であり、麒麟がくる平和な国づくりのためではない。

 だから、信長と義昭がいっしょになったらいけないのになあ。
 ふたりはまったく価値観が違う。
 これは光秀の大きな見誤り、失敗だ。

 義昭も甘い。
 理想は大切だが、自らの力を持たなければ神輿でしかない。
 力を持った者に利用されるだけ。
 志、価値観が同じ者と組まなければ、いずれ矛盾・破綻が生じる。
 これも足利義輝(向井理)を見てればわかることなのになあ。
 自らの力を持たなかった義輝は周囲に翻弄され、無力を嘆き、見捨てられて死んでいった。

 足利幕府再興にこだわる光秀。
 これが光秀の限界なのだろう。
 まあ、その後の歴史を知っている現代人だから言えることなんだけど。
 …………………

 駒ちゃん(門脇麦)パートも同じく価値観の話。

・貧しい人に薬を無償で与えるのは良いこと。
・薬を又売りして稼ぐのも良いこと(なぜならそれで家族が飯を食べられる)。

 世の中の善悪・正義なんて相対的なものなんですね。
 立場、境遇によって違ってくる。

 光秀、信長、義昭、駒、又売りの子供──
 この作品は登場人物の価値観がさまざまで豊かですね。

 光秀が主人公だから当然なんだけど、義輝、義昭を描いて、信長の美濃攻略を省略するのも面白い。


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4 コメント

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新機軸 (TEPO)
2020-09-28 13:13:37
>まあ、その後の歴史を知っている現代人だから言えることなんだけど。

これをどこまでひっくり返すことができるのかが本作の課題であり、そのために

>光秀が主人公だから当然なんだけど、義輝、義昭を描いて、信長の美濃攻略を省略するのも面白い。

これがその「キモ」とも言うべき仕掛けでしょう。

先週のコウジさんが「次週」と言われた「答え合わせ」。
「光秀自身が義昭に対する評価を変えた」というのが正解だったようです。
結局は「無力な将軍」という既存の史実像と重なっていってしまうのかもしれませんが、「本来は僧侶」というところからくる純粋さは義昭についての新視点。

他方、「幼児性」という信長像も本作ならでの視点。
けっして「英雄」には描いていない。

稲葉良通が「早決め」していたように、光秀は信長に仕官するために美濃入りしたように見えましたが、信長からのスカウトに対しても「イエス」とは言いませんでした。
信長と二人、「大きな国」で「大笑い」するところまでは描かれていましたが、まだ光秀の態度は「保留」のままなのではないでしょうか。
母牧は美濃に帰ったものの、「子どもたちにとってはここが故郷ですから」と熙子は越前に留まったままであることが、現時点での光秀自身の軸足を暗示しているように思います。

あと、気になるのは牧の「土岐源氏の血の誇り」という言葉。
「足利幕府再興にこだわる光秀」の「保守性」の暗示とも取れますが、それだけでは面白くありませんね。

極力既存の史実像を「括弧に入れて」本作を味わうよう心がけたいと思っています。
返信する
池端首ですな (ロギー)
2020-09-28 22:59:18
本当に池端を脚本家にしたのは失敗でしたな。
明智憲三郎氏が新説を出したのに活かしきれてない。

光秀を鎖果てた室町幕府に固執している保守派の盆暗にしてる時点で終わりです。
ただ、染谷信長は面白いです。
光秀の大きな国と聞いて、目をきらきらと輝かせて面白いと楽しそうに語り合ったのは評価できます。

正直言って、麒麟の光秀はあほですよ。
もう終わっている足利幕府には平らな治世をのぞんでも無理なのは分かり切ってる事です。
実力と先の時代が見える信長に賭けるのが筋ですよ。

後、光秀に限らず最近の大河の主役は馬鹿に書いてますな。
火縄銃にしてもポルトガル人が持ってきた物だって、直ぐにわかる事です。

光秀が信長と決裂するのって、恐らくは宣教師から世界の広さや様々な情報や技術を教えてもらって、信長は日本を平定したら、スペインやポルトガルみたいに海洋帝国を築こうと考えるのでしょうな。
裏切られた光秀はクーデターを起こす。
でも、グローバルに動く信長が正解なんですがね。
巨大国家を維持運営するには莫大な富と強力な武力が必須ですからな。
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極力既存の史実像を「括弧に入れて」 (コウジ)
2020-09-29 09:21:06
TEPOさん

いつもありがとうございます。

「答え合わせ」間違っていました!
今回、義昭の言葉を聞いて考えを改めた、が正解でしたね。
とは言え、義昭や光秀が描く「理想主義」は力を物を言う「現実」では無力。
たちまち潰されそうですね。

信長との面会では、信長に仕えることに「イエス」と答えると思いましたが、「仕えたいのは亡き義輝様」という返事。
確かに今まで描かれてきたことを素直に読み取ればこう返事をするのは当然なのですが、どうも既存の光秀像から抜け出せないとテキストを読み誤るようです。
おっしゃるとおり、極力既存の史実像を「括弧に入れて」味わうのが正解ですよね。

「土岐源氏の誇り」という伏線も今回、回収されましたよね。
「土岐源氏の誇り」=「足利将軍の家臣」「征夷大将軍のもとでの平和・安寧」
光秀の思想には、これが根強くあるようです。
返信する
見えて来た物語の図式 (コウジ)
2020-09-29 09:32:24
ロギーさん

いつもありがとうございます。

>室町幕府に固執している
これが今作の光秀の限界なのでしょうね。
一方、信長を既存勢力を打破した「改革の英雄」としてしまうと、光秀がマイナスイメージになってしまうので、信長を「褒められたい」幼児性のある人物として位置づけた。
染谷将太さんも童顔ですし。

いくさが好きで褒められたい信長は、おっしゃるとおり、「日本を平定したら、スペインやポルトガルみたいに海洋帝国を築こう」とするんでしょうね。
つまり、いくさの場を海外に求める。
そして光秀はこれに反発する。

物語の図式が見えて来ましたね。

まあ、光秀を是とするか、信長を是とするかは、東庵先生が言ったとおり、「両方とも正しい」んでしょうね。
時代状況によって、何が正しくて何が間違いなのかは変わってきますから。
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