平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

♪ 勝ってくるぞと勇ましく~ ♪~軍歌「露営の歌」は〈短調〉の曲だった! 軍歌なのに短調ってすごくない?

2020年09月26日 | その他
 朝ドラ『エール』で紹介されていた愛国歌謡『露営の歌』。

♪ 勝ってくるぞと勇ましく~
 ちかって故郷(くに)を出たからは
 手柄立てずに死なりょうか ♪

 この曲、冒頭の一節があまりにも有名だが、『露営の歌』っていうのか。

 朝ドラのセリフにもあったけど、これ<短調>の曲なんですね。
 戦意高揚を意図する勇ましい軍歌なら<長調>がふさわしいのに敢えて<短調>を持って来る。
 悲壮なのに勇ましい。
 家族との別れはつらいのに確固たる強い意思。
 このコンセプトを表現するために<短調>を持ってきた。
 作曲家・古関裕而はこういう所が非凡だよね。

 同じコンセプトの曲にはアニメ『巨人の星』の主題歌がある。
 これも<短調>の曲。
 ………………

 現在のJ-POPと比べると、この時代の曲の構成は実にシンプル。

 現在のJ-POPの基本構成は──Aメロ→Bメロ→サビ。
 これをいろいろ組み合わせて複雑に構成している。

 しかし、この時代の曲は、ふたつのパートですぐ終わる。
『露営の歌』では先程の歌詞の後に、こんなパートが続く。

♪ 進軍ラッパ聴くたびに
 まぶたに浮かぶ旗の波 ♪

 曲の構成で言えば、Aメロ→Bメロがなくて、
 冒頭でサビをドーン! と打ち出して、次のパートで収束させている感じ。
♪ 勝ってくるぞと勇ましく~ ♪ は現代人の耳に残っているほど、実にキャッチーだから
 現在の作曲家だったら、Aメロ→Bメロを作って、♪ 勝ってくるぞと勇ましく~ ♪ をサビに持って来るだろう。
………………

 こんなふうに愛国歌謡・軍歌を音楽史的に捉えるのは面白い。

 僕は軍歌は嫌いなんですけどね。
 朝ドラ『エール』でも、鉄男(中村蒼)の書いた詞が「軟弱だ」と突き返されるシーンがあったが、音楽に多様性がなくなり、『忠臣愛国』『国のために命を捨てること』を高らかに歌う音楽ばかりになるのはまっぴらだ。
 人間の感情や思いはもっと豊かで、音楽のジャンルにはジャズやロックなど、さまざまなものがある。

『露営の歌』は最後まで聴くと、なかなかすごい。
 当時の人たちが、どういう価値観・死生観で生きていたかがわかる。
『露営の歌』はレコード50万枚の売り上げで大ヒットしたそうだから、多くの人の共感を集めたのだろう。

 音楽史・歴史学・社会学として面白い『露営の歌』はこちら。

『露営の歌』(YouTube)


コメント (4)    この記事についてブログを書く
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4 コメント

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Unknown (2020-08-15 21:07:49)
2020-09-27 13:18:50
この時代の軍歌や愛国歌謡は、むしろ短調が一般的だったように思えます。

わたしの勝手な思い込みかもしれませんが、紀元二千六百年の歌(本当の題名は違うかもしれませんが)以外のほとんどすべてが短調というイメージです。
同期の桜とか、若鷲の歌とか、短調しか思い浮かばないです。
返信する
「露営の歌」は先駆け? (コウジ)
2020-09-28 10:03:40
2020-08-15 21:07:49さん

教えていただきありがとうございます。

「露営の歌」の発表が昭和12年なので、おそらく「露営」がその後の短調演歌の先駆けになったんでしょうね。
「露営の歌」が大ヒットしたから、短調の軍歌はいけるぞ、ということで次々と作られた。
確認は取れていないので断定はできませんが。
返信する
哀愁ある軍歌が 結構 好き♪ (megumi)
2020-09-28 10:45:03
コウジさん  こんにちは  お久しぶりです。

私は 戦後生まれですが 
父が満州事変頃にで徴兵されて 満州の寒さで肺浸潤に冒され傷痍軍人になっために 
太平洋戦争は免除されて 生き延びました。

そのためか よく軍歌を聴いていたのですが
「暁に祈る」「若鷲の歌」が好きでした。
メロディだけで言えば「海ゆかば」も賛美歌的な曲調が好きです。
(歌詞は屍が頻出するので ちょっと・・・)

小関さんの曲でいちばん好きなのは 「あぁ 栄冠は君に輝く」。
元気が出ます!

小関さんは 実にさまざまなジャンルで曲を作られていますよね。
歴史学者の磯田道史さんは 小関さんのことを「誂える人」と評していました。
注文する側の要望に応じて「誂える」ことが出来る人。
生家が呉服屋だったから その精神が生きているのだと。


明智光秀は ついに リタイアしました。
足利尊氏は 今 面白いですよ。
返信する
応援する人 (コウジ)
2020-09-29 09:04:30
megumiさん

いつもありがとうございます。

「誂える人」
注文に応じて曲をつくる人。
的確ですよね。

「応援する人(エール)」でもあって、社会状況に応じて応援歌をつくっているんですよね。
戦時中であれば、戦地に行く人への応援歌。
戦後であれば、焼け野原で立ち上がろうとする人への応援歌。
ここに反戦思想が入ってくると、愛国歌謡など作らないという姿勢になるのですが、古関さんは職人なので、そういったものはないんですよね。

「光秀」は今のパートは引っぱりすぎですよね。
もう少し活躍・躍動する主人公を見たい気がしています。
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