▲黒田も安倍も詐欺師同然 ウソ八百だったアベノミクス
2013/11/5 (日刊ゲンダイ
「偽装したかどうかは別として、消費者から誤認されるような表示があれば、法
律に違反することになる」
阪急阪神ホテルズのメニュー表示問題について、森雅子消費者相がこう指摘し
た。メニューに表示された食材を使わなかったのが、たとえ故意でな かったと
しても、受け取る側が誤解すればアウトになる。そんな見解だ。
だとすれば、「アベノミクスで景気回復」と宣伝する安倍首相と黒田日銀総裁も
また法を破っていることになる。騙されているのはホテルの客とか、 レストラ
ンの利用者とかに限定されない。国民全員である。世界の人たちもそうだ。グ
ローバル社会が安倍と黒田にペテンに掛けられているの だ。
彼らが導入した「異次元の金融緩和」は、2%の物価上昇を目標に掲げている。
達成されるまで緩和を継続し、金融市場をジャブジャブにするという算段だ。通
貨供給量を増やすことで「物価が上がりそうだ」と思わせ、早 めの消費や投資
を促す。「必要なものは今のうちに買っておこう」「購入計画を前倒ししよう」
といった焦りを誘うのが狙いだ。そもそもが怪しいので ある。
しかも、実際に2%も上昇しなくていい。「インフレになる」と感じさせるだけで
効果は見込める。誤認は大歓迎で、むしろそれを期待しているような 政策だ。
法律違反を問われているホテルだって、「安倍政権には言われたくない」と思っ
ているのではないか。
もっとも、2人によるダマシは、半年以上経過しても、思うような効果を得られ
ていない。
最初の計画はバラ色だった。物価上昇を見越して消費や投資が膨らめば、企業業
績も回復して雇用は改善、賃金は上昇する。それで消費や投資が活発 になって
物価が上昇すれば、企業業績がさらに上向くという好循環が生まれ、景気が回復
するとされた。
◇外国勢に見限られた日本の景気回復
すでにシナリオは崩れている。9月の消費者物価指数は4カ月連続でプラスとなっ
たが、食料とエネルギーを除いた総合指数は横這いだ。上がって いるのは円安
の影響を受ける物品だけ。物価上昇が企業の業績を後押しする格好にはなってい
ない。
「日銀の黒田総裁と安倍首相は、明るい未来があるかのような言葉を口にしま
す。それが自分たちの役回りだと思っているのでしょう。でも、空のラッ パを
吹いているのと同じ。好景気に見せかけようと必死ですが、周囲には響いてこな
い。これだけ日銀が紙幣を刷り、REIT(不動産投資信託)だ 国債だと買いまくっ
ても、外国勢は完全に見限っています。信用していません。消費が活発化して設
備投資が盛んになり、本格的な回復が始まるとは思 われていない。だから、株
価は低空飛行を続け、1万4000円台で行ったり来たりしている。輸出が好調と
いっても、為替の関係で金額が少し増えた ぐらいのこと。海外生産が中心に
なっているのだから、実態はちっぽけなものです」(筑波大名誉教授・小林弥六
氏=経済学)
全国銀行協会によると、全国銀行の貸出金は今年上半期に0・7%増えた。しか
し、日銀の資金循環統計によると、6月末現在で増えたのは中央政府や 地方公共
団体、社会保障基金向けなどで、民間非金融法人向けは逆に0・1%減っている。
安倍政権は設備投資を増やそうと懸命だが、企業側にその気はなく、借り入れも
増やしていない。
設備投資と輸出は日本経済の両輪だ。そこが走り出さなければ、景気回復などで
きっこないだろう。
◇構造改革の本当の狙いは「日本人の賃上げ」
結局、アベノミクスで景気回復はウソ八百だったのである。安倍と黒田は詐欺師
同然だ。異次元緩和をやってみたところで、経済は停滞を脱していな いし、2%
の物価上昇も怪しい。国の借金だけが膨大に増え続けているのだ。
雇用と賃上げも見通しが立たない。異次元緩和の開始以降、今年の4―6月期に、
正社員は53万人も減っているし、所定内給与は今年の9月まで1年 4カ月連続のダ
ウンだ。この傾向は変わりそうにない。
前出の小林弥六氏が、こう指摘する。
「一部の大手企業は安倍首相の呼びかけに応じてベースアップするようですが、
賃上げが本調子になるわけではありません。むしろ賃金は今後も ダウンしてい
くでしょう。安倍政権は成長戦略の柱に規制緩和を掲げています。これは淘汰の
政策。いまあるものを潰し、新しいものに取り換えれば いい。そんな残酷な発
想に基づいたものです。例えば、TPPで農家は駆逐される。その代わりに株式会
社や外資が参入することになるでしょう。ま た、円安によるコスト増に耐えら
れない中小企業も倒れていきます。今回は見送られましたが、解雇の自由や残業
代ゼロもいずれ導入される。口では 雇用を守るとか賃金を上げると言っておき
ながら、やっているのは雇用を不安定化し賃金を下げさせる政策ばかり。彼らに
とって構造改革とは、日本人 の賃金を下げることなのでしょう。それが大企業
の国際競争力を向上させると思っているのです」
これでは、この先も景気が回復軌道に乗ることはない。
◇ホテルよりも悪質な「アベノミクス」の表示
アベノミクスで次々と矢を放ち、日本経済を成長軌道に乗せる――計画性や規模か
らすれば、この表示は、ホテルのメニューよりも悪質だ。経済 ジャーナリスト
の荻原博子氏が言う。
「成長戦略はロクでもなかったし、規制緩和は労働分野ばかり。発送電分離を実
現して、新たなビジネスを起こさせるような本当の規制緩和は手つ かずでし
た。TPPだって、最初から米国にすべてを差し出している。もはや手持ちのカー
ドはゼロでしょう。いったい、これから何をどう交渉す るつもりなのか。やは
り安倍政権には、日本経済を立て直すプランがないのです。サラリーマンは、ア
ベノミクスだ何だと浮かれない方がいい。給 料は上がらないのに、厚生年金の
保険料は引き上げられ、消費増税も迫っています。踊らされてはいけません」
先月18日、経済財政諮問会議と産業競争力会議のメンバーが懇談した。出席した
のは竹中平蔵慶大教授ら。2つの会議が共闘し、新たな目玉政策を 打ち出すつも
りらしい。
性懲りもなく安倍政権は、今後もニセ表示を続けるつもりだ。消費者を惑わす法
律違反をやめようとしない。やはり詐欺師同然、一日も早く牢屋にぶち 込むべ
きだろう。
(転載終わり)