なぜ米国債売却しない?ドル高で「25兆円」の含み資産
2014年12月21日 日刊ゲンダイ
1ドル=120円にまで急ピッチで進んだ「円安・ドル高」。輸入物価が上昇
し、庶民生活はどんどん苦 しくなっている。そこで、円安の弊害を一気に解決
する“ウルトラC”が浮上している。
ズバリ、財務省が保有している「米国債」の売却だ。いま米国債を売り払って
しまえば、急激な円安にブレーキがかかるうえ、巨額の儲けが転が り込むのだ。
10月16日の参院財政金融委員会での麻生太郎財務相の答弁によると、
2014年3月末現在、財務省が所管する「外為特会」は、円換算で 116兆
円の米 国債を保有している。3月末当時、為替が1ドル=104円と「ドル
安」だったために米国債の価値が下がり、9兆9000億円の“評価損”が発 生
していた。 しかし、1ドル=120円まで「ドル高」が進み“含み益”が巨額に
膨らんでいるのだ。
「これまで日本政府は、ドル安によって“評価損”が発生しているため、米国債は
売るに売れないという立場でした。麻生財務相は、含み損を解消 するために
は、1ドル=112円までドル高が進む必要があると答弁しています。現在
120円までドル高が進行している。儲けは出ているのは間違いない。 売るな
ら今し かありませんよ」(民間シンクタンク研究員)
■消費税10%分相当
日本が保有する米国債の“含み益”はどのくらいに膨れ上がっているのか。財務省
は「3月時点での計算しかしていません」との回答だったが、 単純計算では
25兆円の儲けが出ているはずだ。消費税1%の税収は約2.5兆円だから、
10%分である。
米国債の売却は、決して突飛なアイデアではない。内閣府官房審議官だった谷内
満早大教授も、「80%くらい売ってもいいのではないか。 80%くらい売っ
ても、まだ他の先進国より多めの外貨準備を持っていることになる」とロイター
のインタビューに答えている。
政治評論家の山口朝雄氏が言う。
「庶民に消費税増税を強いているのだから、値上がりした米国債を売って利益を
出してもいいと思う。しかし、米国債の売却はアメリカに喧嘩を売 ることにな
りかねない。アメリカに弱い安倍首相には無理でしょうね」
「円高でも売れない」「円安でも売れない」のに、日本は100兆円を超える米
国債を持つ必要があるのか。