■「イタリア五つ星運動」リカルド・フラカーロ下院議員(36歳)の講演会に参加して分かったこと!
①イタリアの総選挙は下院議員の任期が5年なので任期が終了するごとに5年に一度行われる。形式的には大統領が下院の解散権を持つが、日本のように首相が自分たちに有利な時を選んで勝手に衆議院を解散するようなことは決してない。
昨日の講演会の第二部では、参加者からの質問にフラカーロ下院議員が答える時間が二時間設けられたので、私は最初の質問者として「イタリアでは議会の解散権は誰が持っているのか?」を質問した。フラカーロ下院議員は「大統領が解散権を持っている5年の下院議員の任期以前に解散することはない」と答えた。私は「日本では首相が解散権を持っていて野党が弱い時や分裂している時を狙って衆議院を解散するので戦後に二回の例外を除いて自民党が常に選挙に勝ち政権を独占してきた」と説明した。主催者の一人の山田正彦元衆議院議員は私の説明を遮って不機嫌な顔をしていたのはなぜだったのか?
②イタリアには最高裁判所とは別に日本や米国や英国にない「憲法の番人」である「憲法裁判所」が存在する。イタリア憲法裁判所は2013年の総選挙で民主党が勝利した選挙制度を「憲法違反」との判決を出した。
③イタリアには政府の政策や議会で成立した法律を国民投票で否決できる「国民投票制度」がある。2011年6月12-13日の国民投票ではベルルスコーニ政権の原発再開発計画が投票者の95%が反対して否決した。→日本にはない「直接民主制」
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▲イタリア、原発再開を断念 国民投票で9割超が反対
2011/6/13 日経新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXNASGM1305E_T10C11A6MM8000/
【ジュネーブ=藤田剛】イタリアで12~13日に実施された原子力発電の再開の是非を問う国民投票が成立し、政府の原発再開の計画を否決した。内務省の発表によると、投票率は約57%に達し、成立の条件である50%を上回った。福島第1原発の事故後、主要国での原発政策に関する国民投票は初めて。他国からの電力購入や再生可能エネルギーの利用拡大など戦略の練り直しは必至だ。
暫定発表では投票者のうち95%が再開に反対票を投じた。欧州ではドイツが原発をすべて停止する関連法案を決定。スイスも既存原発の停止を決めた。ベルルスコーニ政権は1990年までに稼働を停止した原発の2020年までの復活を検討していた。
④「国民投票」によって「政党助成金制度」は一度は否決されたが、議会多数派の政権与党は同じ制度を復活させた。
⑤イタリアの国会議員選挙の立候補者は25歳以上であればだれでも立候補できる。日本のように衆議院で300万円、参議院で600万円の供託金制度は存在しない。フラカーロ下院議員が2013年の下院議員選挙に「五つ星運動」公認候補で立候補して当選した時に彼が使って選挙費用は全部で400ユーロ(約52000円)であった。
⑥現在の「五つ星運動」の国会議員は下院議員が90名、上院で40名計130名で政権与党の民主党に次いで第二党である。「五つ星運動」の地方議員は3000人くらいいる。2012年の統一地方選挙でパルマ市長が、2016年の統一地方選挙でローマとトリノで女性市長が誕生した。
⑥国会議員はプロの職業ではないとする「五つ星運動」の公約にしたがって所属国会議員の任期は二期十年としている。
⑦「五つ星運動」は公約にしたがって所属国会議員の年間議員報酬をイタリア国民の平均年収と同じ額にしている。差額は「マイクロクレデイット基金」に寄付している。
⑧「五つ星運動」は「政党助成金」4800万ユーロ(約62.4億円)を拒否している。
⑨イタリアでは政治家になるために会社を辞める必要はない。政治家の間は元の職場を休業して政治家を辞めた段階で職場復帰できる。
⑩リカルド・フラカーロ下院議員はもともとピサ職人だった。働いて大学資金をためて環境学を学びに大学に入学し卒論も環境問題を扱った。大学卒業後熱処理の会社に就職し2009年にべっぺ・グリッロが創設した「五つ星運動」に参加し自分でブログサイトを開設して地域の人々との討論の場をつくり徐々にその輪を広げていった。2013年の下院選挙で初当選して現在に至る。
⑪講演会後の懇親会で、私はフラカーロ下院議員に「日本にはイタリアのような「憲法裁判所」が存在しないために「憲法の番人」が存在せず日本の最高裁判所は「権力の番犬」でしかない」と説明した。彼の返事は「クレージー!」
(終わり)