安倍の守り神<本澤二郎の「日本の風景」(3609)
<3分の2議席+莫大な工作資金=超軍拡予算スイスイ成立へ>
寒桜が満開である。庭先にフキノトウが出て、茶の間に高貴な香りを漂わせてくれる春目前だが、日本丸はいま難破する寸前だ。新型肺炎に日本だけでなく世界が震え上がっている。
20年デフレ不況に10%消費税という悪法の強行で、市民生活は生きも絶え絶え、そこにパンデミック大不況が追い打ちをかけたものだから、いよいよもって国民資産の年金基金と、日銀の無謀な株買い占めに、確実な危機が襲い掛かってきている。どうする安倍と黒田!
そうした中でも、不思議と日本の国会は、多少の風雨はあるが台風は来ない。昨夜、超軍拡予算が安倍の期待したとおりに可決、衆院を通過した。
安倍に神風が吹いたわけではない。神風など存在しないのだから。宮中・令和の祈り?も無縁である。自民党・森山裕国対の成果である。
そもそもは3分の2議席を与えてくれた公明党創価学会のお陰だが、それだけではなかった。もう一人の守り神が存在した。
<定時制高卒+農協職員=森山裕国対が野党を手玉>
無名に近い森山を、多くの国民は知らない。筆者も知らなかった。清和会OBが少しは知っていた。鹿児島県出身代議士の中馬辰猪から聞いていた。中馬は京都帝大卒業後、陸軍主計大尉としてインパール作戦に従軍、幸運にも生還して、戦後、吉田茂の後継者となった池田勇人らとともに政界いりした。他人に媚びを売る猟官運動は大嫌いだった、わりあいまともで地味な政治家で、一回だけ建設大臣を歴任した程度だから、金で地位を買うことを嫌った千葉三郎に似ていた。
そんな彼が「森山は農協職員で、わしの秘書もしていた」と証言している。94歳で2010年4月に亡くなっているが、この月は次男正文が、東芝病院で看護師の適切な介護を受けられず、タンがのどに詰まり窒息させられた時期でもあった。いまだに東芝は、反省も謝罪もしない財閥企業である。
森山も苦学生だ。高校は地元の定時制である。官房長官の菅義偉は、高校卒業後に上京して苦学、地方議員から這い上がった。森山は地元の地方議員から、政界に飛び込んだ。
田中角栄が興味深い話を、清和会OBに語っている。「地方議員は国政は務まらない」と。「地方議員は、手練手管ばかり体得していて、天下国家で行動できない」というものだった。的を射た説明である。
地方議員は、特に志がないか低いのだ。信念を貫く政治家になれない。確かに金で動く。菅もそうだが、森山も莫大な国対費を、上手に使える天才なのだ。
「国会の潤滑油」としての国会対策委員会は、国会法の規定に存在しない。それでいて、国会の運営は、すべて与野党の国対で転がしている。そこではすべて金、金である。
森山は麻雀ができるか、多分出来るだろう。海外旅行はどうか。間違いなく、野党議員に金を流し込む手練手管はプロに違いない。昔は国対というと、真っ先に竹下登を連想した。国対のプロが首相になった唯一の例である。
<1%財閥+長州国家主義=信念のない奴隷政治屋の汗かき>
安倍内閣は、1%の財閥のための、財閥傀儡政権である。
森山の実績は、すべて長州国家主義と1%財閥に恩恵を与えるだけのものである。鹿児島の貧農の出の政治屋が、せっせと奴隷よろしく、悪しき政権を支えている。間違いだろうか。
そこからこぼれだす金に、失礼ながら翻弄されるだけの野党議員もまた、哀れだが、必ずしもそうとは言えないらしい。なぜならば、日本の国会議員は、世界一高額の報酬を懐に入れている。本当であることに、国民の関心は薄い。
信念のない無節操な与野党の政治集団、そこで大活躍する自民党国対という政治構造にも目を向けないと、この国は安倍が退陣しても変わりない。
自民党議員の総入れ替え論の反響は小さくはない。安倍内閣7年が、腐敗勢力の正体を、国民に分かりやすく露呈しているのである。2・26は経過した。5・15に期待するほかないのか。
いかなる口実をもってしても、まともな国民であれば、安倍・自公を弁護する言葉はない。
2020年2月29日記(東京タイムズ元政治部長・政治評論家・日本記者クラブ会員)