風が吹けば桶屋が儲かる

2013年04月08日 | Weblog
とあるCM。


・・・夏休みの学校。陸上部の練習を校舎から応援している女の子。視線の先にはひとりの陸上男子。そんな女の子のほっぺに、友達が後ろから冷たいペットボトルをピタッ!外に出てみんなで走りだして一斉にジャーンプ!そしてジャーンプ!透き通る青空!はじける炭酸!キュンとなる恋心!


そう。三ツ矢サイダーである。


三ツ矢サイダーなのである。三ツ矢サイダーが売れまくっているというのである。安倍政権は、金融政策・財政政策・成長戦略の三つを経済再生への「三本の矢」と称し、デフレからの脱却の切り札として緊急経済対策を取りまとめたが、この三本の矢の効果が、「三本の矢」つながりということで早速三ツ矢サイダーの売れ行きに波及しているというのだ。1‐3月期前年比20%増という売れ行きにアサヒ飲料広報は、「直接、販売増に結びついているわけではないと思います。ただ、これから暑くなり、炭酸飲料の需要も伸びる。景気にあやかれればうれしい。」と期待を語ったとのこと。(他のメーカー他の清涼飲料水の1‐3月期販売高がどうなのかまでは調べがついていないが本題ではないのでここでは割愛させていただく。)


さて一般的には何事も、理由なく売れているということはなく、我々が理由までたどり着けないだけで、必ず大なり小なりの売れているワケがそこにはあるといえる。風が吹けば桶屋が儲かると言うが、今回の三ツ矢サイダーのように因果がはっきりとつかめない例と違い、大抵の場合というのは因果がはっきりしており売れている理由まで立ち戻ることができる。


「ハブラシとかの販売って、一か月どれくらいの金額だったら良いのでしょうか?」という質問をいくつかの歯科医院の院長先生方から頂いたことがある。一般的な目標金額としては、月に3万円・4万円・5万円などといったこのあたりの数字がよく使われている。自費特化等でない歯科医院ならば、金額でいうところの月4万円(年50万円)あたりを目標にしていただければ問題ないのだが、アドバイスをさせていただく際には「スタッフの皆さんへの指示の出し方を間違えると、反感を買ったり、ストレスを与えてしまうことになるので気を付けてくださいね」と付け加えるようにしている。


これは、目標金額を設定するにあたっては月4万円や年50万円という金額だけではなく、自費率と販売単価の二つの影響を考慮しないといけないという理由があるためである。自費率が高い歯科医院はそもそもデンタルIQが高い患者さんが多く、必然的に口腔ケア用品への関心が高い患者さんも多くなるという事情がある。販売単価も高めであり、結果として特に意識しなくても不満足とはならない程度の販売品の売り上げが立つ。このような背景を無視して自院よりも自費率が高い歯科医院を目標に、「あそこは物販が月に○万円らしいぞ!ウチももっと頑張れ!」とスタッフの皆さんを叱咤激励でもしようものなら、実情とかけ離れた目標設定のために反感を買うこと必至となる。自費率の高低といった自院の特徴と患者層、そして現在の販売品ラインナップ等をしっかりと把握しておかなければ判断を誤ることになってしまうので注意しなければならない。


次に販売単価の考慮であるが、これは販売額のみで自院の状況を判断しないようにするために必要となる。極端なことを言うと、1万円が4個売れて月4万円なのか、日に2千円が20日続いて月4万円なのか、この二つはどちらも月に4万円だが、4万円に到達する過程が全く違う。高自費率の歯科医院ならば販売単価の高い商品でも売れ行き好調かもしれないが、そうでないならば、月4万円とか年50万円という金額を目標にする前に、一度「月間販売数量」に注目していただければと思う。3万円だから悪い5万円だから良いではなく、どういう過程で3万円なのか5万円なのか、その部分に注目していただきたいのである。たとえ月の販売額が3万円でも、毎日コツコツと数百円の商品を売りさばいている結果としての3万円ならば、それは単に販売単価が低いだけのことであり、スタッフの皆さんの販売スキルとコミュニケーション能力は高いことを示している。陳列方法等を抜きに単純にアドバイスさせていただくならば、対策は患者さんの口腔ケア用品への関心向上を誘発することと販売品のラインナップの見直しということになる。これを誤って金額しか見ずに「なんだ。ウチは3万円しかないじゃないか。あと1万円上乗せできるように頑張れ!」とでも発破をかけようものなら、低単価である以上販売数量を今以上に伸ばさなければならない毎日に、スタッフの皆さんは強いストレスを感じることになるだろう。


もし、販売額アップを当年の目標のひとつとするならば、損益計算書の雑収入の内訳として「ハブラシ等の販売額」をしっかりと分離把握できるように今の顧問税理士さんにお願いすることをおすすめしたい。売れている理由、または売れていない理由をつかもうと考えた場合にまず最初に簡単に見ることができるポイントであるからだ。そこを見れば(仮に月に3万円の販売額がある歯科医院ならば)3万円に到達する過程がわかる。過程がわかれば理由まで立ち戻れる。理由まで立ち戻れば、そこを工夫・改善することで新たな風を吹かせることができる。3万円が5万円に、5万円が10万円に、桶屋が儲かるというわけだ。


雑収入の中のハブラシ等の販売額(販売単価×販売数量)はその歯科医院のスタッフの皆さんのコミュニケーションスキルを表しており、財務諸表から読み取れる情報の中でも面白い項目のひとつだ。数字の羅列で無味乾燥に見える財務諸表も視点を変えれば様々なことを我々に教えてくれるというわけである。


個人事業主の皆様は平成24年分の確定申告を終え、顧問先の税理士事務所さんから確定申告書をお受け取りになられたことでしょう。その際にどのようなアドバイスをしていただけましたでしょうか。申告して終わり、未来の話がしたくても「利益がでていますからこのまま続けてください」としかアドバイスをくれない税理士事務所さんと決定的に違うのが弊所のこのような分析でございます。弊所には決算診断という強い武器がございますが、それとともに貴社・貴医院の財務諸表を丸裸にし、何が足りなくて何が余計なのかをアドバイスさせていただきます。弊所に興味をお持ち頂き「なるほど。それではちょっとウチの財務諸表も見てもらおうか」と、そのお気持ち頂けましたなら、ご遠慮なくご連絡をいただければ幸いでございます。


来月25日(土)26日(日)に行われる九州デンタルショーにおきましては、弊所福田による講演が予定されております(25日)。詳細は弊所ホームページ右上の最新情報からご覧いただけますので、歯科関係の皆様はこの機会に是非ともお越しくださいますようお願い申し上げます。


■参考リンク
首相官邸
http://www.kantei.go.jp/jp/headline/conference2013.html
アサヒ飲料
http://www.asahiinryo.co.jp/
アサヒ飲料 三ツ矢サイダー特設サイト
http://www.asahiinryo.co.jp/mitsuya-cider/sp/


監査部一課 原浩恭