所得拡大税制

2014年11月17日 | Weblog

 さて、今回も今が旬な年末調整ネタではありませんが、経済産業省が個人の所得水準の底上げを推進します!というスローガンで従業員の給与等支給額の増額を実施・検討されている皆様を応援する「所得拡大税制」という税額控除についてご紹介させていただきます。
まず、どのような制度かというと、青色申告書を提出している法人(または個人事業主)が、国内雇用者に対しての給与等支給額を規定の割合上増加させる等の要件を満たした場合に、雇用者給与等支給増加額の10%を法人税額(または所得税額)より税額控除(税額の10%(中小企業者等は20%)が上限)できる制度です。

 この制度は平成25年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する各事業年度において適用との事でしたが、平成26年度税制改正において、制度の要件緩和・延長(平成30年3月31日まで)が行われ、以前に比べ適用がしやすくなっております。また、制度創設当初の要件等は割愛させていただきますが、現行の要件は以下のようになっております。

要件①:基準事業年度と比べて、従業員への給与の総額( 雇用者給与等支給額)が2%以上増加していること。
※平成27年4月1日より前に開始する事業年度については2%
平成27年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する事業年度については3%
平成28年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する事業年度については5%以上と段階的に変更。
要件②:前事業年度と比べて、従業員への給与総額(雇用者給与等支給額)が減っていないこと。
要件③:前事業年度と比べて、1人あたりの平均給与(平均給与等支給額)が減っていないこと。
 
 う~ん、何だか難しいですね・・・。まず皆様には要件①についてのみご理解いただけると幸いです。要件①該当するのであれば、適用の可能性は広がります。要件②についての詳細は割愛致しますが、今であれば要件①に該当すると同時に要件②にも該当する事になります。要件③は少し複雑になりますので税理士事務所等の協力が必要となってくると考えられます。特に個人事業主で確定申告をご自分でされている場合で黒字かつ雇用をしており、要件①に該当するのであれば今回は税理士事務所等に申告を依頼しても良いケースもあるかと考えられます。
また、要件①の2%以上というのは何と比べればいいの?とお考えになると思いますが、例えば平成26年12月決算の法人は、平成25年1月から平成25年12月までが基準事業年度=前事業年度となり、それに比して平成26年1月から平成26年12月までに支払った給与総額が2%以上増加していればOKです。※平成26年分の個人事業者の確定申告についても上記と同じ取扱いとなります。
何となく理解が出来ましたでしょうか?所得拡大税制の適用について税理士事務所へ申告依頼をお考えの際は是非当事務所に御連絡ください。

 それでは最後に、所得拡大税制についていくつかキーワードを以下に記載させていただきます。

1.国内雇用者
  使用人のうち、国内の事業所に勤務する雇用者で、雇用保険法の一般保険者に該当する者に支給した給与等(パートや日雇い  労働者、アルバイトを含む)。

2.雇用者給与等支給額
 ①役員の特殊関係者や使用人兼務役員に対して支給する給与は除かれます。
  (医療法人においての分院長=管理責任者=理事=使用人兼務役員も同上)
 ※特殊関係者とは役員の親族を指します。親族の範囲は6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族までが該当します。また、当該  役員と婚姻関係と同様の事情にある者、当該役員から生計の支援を受けている者も特殊関係者に含まれます。
 ②雇用者給与等支給額に含まれるもの・・・賃金、残業手当、通勤手当等。
 ③雇用者給与等支給額に含まれないもの・・・退職手当など給与所得とされないもの。
 ④決算賞与については、損金算入される事業年度の雇用者給与等支給額に含まれます。
 ※上記の通り決算時に未払計上した賞与も含まれますが、損金算入する為の要件が3つほどあるので注意が必要です。

3.中小企業者等
  資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人でその発行済株式又は出資の総数又は総額の一定割合(1つの法人により50%  又は複数の法人合計で3分の2)以上を大規模法人(資本金の額が1億円超の法人、その他一定の法人)に所有されていない法  人、及び資本又は出資を有しない法人又は個人で常時使用する従業員の数が1,000人以下のものをいいます。


 監査部 1課
  梅北 聖人