日の暮れるのが早くなり、秋の夜長を感じさせる昨今、皆さんいかがお過ごしでしょうか。
さて、冒頭から物騒な話で恐縮ですが、会話の中に「畳の上で死ぬ」という言葉を耳にすることがあります。「畳の上で死ぬ」とは、「事故などで不慮の死を遂げるのではなくて、家で穏やかに死ぬ」(大辞林 第三版)といった意味のようです。
現在では病院で亡くなる方が多く、この言葉を耳にしても違和感を覚えることが多かったですが、最近の診療報酬改定の議論を見ていると、在宅での看取り(畳の上で亡くなること)が今後、増えていくと思われます。
2017年9月6日開催の第106回社会保障審議会医療保険部会で、平成30年度診療報酬改定の基本方針に関する議論が開始されました。
改定の基本的視点や具体的方向性等を厚生労働省が提案し、12月上旬に同部会で基本方針が決定する見通しです。
これらの議論も踏まえ、12月中下旬に診療報酬の改定率を内閣で決定する予定です。
特に今回は、6年に1度の診療報酬と介護報酬の同時改定であり、医療と介護の連携等を含めた様々な視点からの議論が行われるものと考えられます。
前述の厚生労働省が提案した基本的視点のうち、重点課題と掲げたのが、「地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化・強化、連携の推進」です。
国は従来から、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けられるよう、医療・介護・生活支援等が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を目指しておりました。
また、その構築のためには、地域における医療・介護機関の連携による、包括的かつ継続的な在宅医療・介護の提供が必要との考えを示しておりました。
今回の基本方針の具体的方向性としても、
・医療機関間連携、医科歯科連携、病診薬連携、医療介護連携等の多職種連携の推進
・かかりつけ医、かかりつけ歯科医、かかりつけ薬剤師・薬局の機能評価、
・質の高い在宅医療や訪問看護の確保 等
が提案されております。
この方向性からすれば、今後は近所のかかりつけ医師・歯科医師・薬局や介護施設に通院・通所し、それが困難となってきたら、複数の医療従事者等による訪問診療・介護等が行われるという流れになり、結果として在宅での看取りが増えていくと思います。
直近の社会保障審議会医療保険部会でも、「地域包括ケアシステムが実現するような報酬改定」や「医療・介護の連携および医療機能の分化・連携を実現する一層メリハリのある報酬体系の策定」といった意見が出されており、この方向性に大きな転換はないものと考えます。
家族の看護負担増大や医療機関・介護機関の情報共有等の課題はあるものの、財政負担の削減や団塊世代の高齢化(いわゆる2025年問題)等の諸問題に対処するためには、地域包括ケアシステムの実現が必要になってくると思います。
医院経営においても、医療・介護の方向性やこれに対応する診療報酬に関する今後の動向から目が離せません。
弊所でも、訪問診療に取り組まれている医院様や歯科医院様のお手伝いができるように頑張って参りますので、よろしくお願いいたします。
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監査部 波多江誠一