讃観世音菩薩頌和釈・・16/20
諸悪業病
「鬼病熱病腹脹病 疳病黄病心痛病 癩病癲病霍亂病 血氣羸痩種種病 諸惡黒業纒其身 稱名繋念皆除愈」
鬼病と熱病と腹脹の病と疳病と黄病と心痛と癩病と癲癇と霍亂と血氣の羸痩など種種の病と諸惡業の報が其身を纒縛りて病を成すに観音の名を稱へ心に念ずれば皆なよく病愈んとや。
諸病の中に癩病は最も愈へがたき業報なり。昔湯浅権守といふ武士の癩を病みて種々に療治すれど効なし。長谷寺に詣でて三七日篭りて観音に祈りければ夢の告に紀州伊都郡の勝利寺https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=&cad=rja&uact=8&ved=2ahUKEwiCxrmMxviHAxV1rVYBHQ3eLR8QFnoECEIQAQ&url=https%3A%2F%2Fwww.wakayama-kanko.or.jp%2Fspots%2F66%2F&usg=AOvVaw2SGhW8yaTlUwo4t6FHr-ML&opi=89978449
の十一面尊に歎き申さば治すべしと仰せを蒙りて、急ぎ紀州へ還りて勝利寺に三七日篭りてあれば、夢に観音の現れて、汝が病は重き業報ゆえ癒へがたけれど、祈りの心の誠の憐れみて我ぞ代わりて苦を受けんとのたまふに夢は覚めて遍身に汗の流れて心地よく瘡は癒てありき。寔に喜びのあまりに尊像を拝み奉るに御胸の間に癩瘡の現れさせ給ひて在き。今に其侭に在とや。
江府におひて水野公の物語に予が家来の武士に若年の頃は唖にて一向に言ふこと能はぬ
江府において水野公の物語に、予が家来の武士に若年の頃は唖にて一向に言ふこと能ぬ者あり。種々に療治すれど少しも効なし。察するに先世の業報ならんと常に観音を念じ居けるが、三年を過ぎて四月十八日に懇ろに祈るりけるが、思はず、南無観世音と言ふに驚きて物語せんと餘人に語るに能くなりて其れより弁舌も勝れてよくなり恒に其の恩を忘れず今に信心おこたりなく勤めるとなん。(冥應集)