福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

四国八十八所の霊験その37

2014-06-06 | 四国八十八所の霊験
日和佐から室戸までは約75kmあります。ここは大体歩かないで土佐くろしお鉄道とバスを乗り継ぎ「室戸岬」で下車しています。
バス停から歩いていくと24番最御崎寺手前にみくろ堂があります。
 みくろ堂はお大師様が18歳の時、21番太龍寺で求聞持を行じられたあと、ここで成就されたとされるところです。四国遍路必拝の場所です。しかしここにはお大師様の像もなく、ただ注連縄が張ってあるだけです。 神社の管理となっているようなのです。もうひとつとなりに神明窟という洞窟があり、ここはお大師様が寝起きした洞窟といいます。


 道端の売店のおばさんに「お大師様はお祀りしてないのですか」と聞きました。
すると「お大師様は洞窟の中や岩壁いたるところにいらっしゃいます。見える人は多いですよ」といいます。岩壁を見渡しましたが私には見えませんでした。しかし見えないというのも癪なのでだまっていました。なにかアンデルセン寓話の「王様の裸」も似たような話だと後で気がつきました。今から思うと一本とられたような感じもして一人で笑ってしまいました。

 新古今和歌集にお大師様の歌「法性の室戸と聞けど我すめば有為の波風たたぬ日ぞなき」が残っています。
この日も台風並の強風が吹き寄せ、鉛色の海からは山のような大波が恐ろしい唸り声で押しよせていました。 「室戸岬・みくろどの波音」は環境庁認定の日本の音風景百選にも選ばれているそうです。しかし「音」と云う概念を遥かに超えています。まさに海鳴りです。観音経に「梵音、海潮音」とありますがここの海潮音、海鳴りの音は思い上がった我々の日常感覚を吹き飛ばすような迫力です。仏様のお諭の声かもしれません。

 大師の作といわれるいろは歌に「色はにほへど ちりぬるを わがよたれそ つねならむ ういのおくやま けふこえて あさきゆめみじ えひもせず」とありますがこの「うい(有為)」はこの世に現れた仮の現象ということです。仮の現象とはいえここの「有為の波風」は相当に壮絶なものです。大自然の巨大さと自分の矮小さを徹底的に自覚させられます。壮絶な濤と風に自分の存在そのものが足元から否定されるようです。こういう壮絶な環境のもと大師は求聞持法の成就をされ「明星来影」したのです。想像を絶する精神力です (「三教指帰」に「阿国大瀧岳ニ躋リ攀ヂ、土州室戸ノ崎ニ勤念ス、谷響キヲ惜シマズ、明星来影ス」とあります。)。 私も21年の太龍寺での求聞持成満の時、次はこの近くの不動岩で求聞持法を修しようとおもいましたがこの壮絶さになかなか決心がつかないでいます。
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