大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 5月15日 床下(2)

2016-05-15 18:08:30 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 5月15日 床下(2)



 職人さんが何かに気が付いて、私ももう一度床下の擦り跡を見ると、擦った跡は一筆書きの様に一筋に連なっているようでした。
そして、その一端は先程拾い上げた人形の置いてあったところで止まっていました。
 私は、きっと前に施工に入った(もしくは建築当初の)業者が、床を塞ぐ前に仕掛けた悪ふざけだと思い、悪趣味なことをするものだ、と呆れていました。
取り敢えず作業を進めないとならないので、人形は出窓の上に置き、仕事を再開しました。
 結局、全て床を取り除いて躯体の隙間を探したが見付からず、一部防音材が入って無かった事が原因による、躯体とフローリングの間に出来た空間が他部屋の音を反響させたのではないかと結論付けました。
 夕方になり、家主の奥さんがパートから戻り、作業をしている私達の部屋に挨拶に来ました。
しかし、部屋の入り口に来るなり、そこの前で立ち止まりました。
どうやら出窓に置いてある人形を見て、硬直したように立ち竦んでいるようでした。
この時私は、部屋の入り口付近で作業をしていたのですが、奥さんが、

「 なんで、ここに?」

と、か細く呟いたのを聞き逃しませんでした。
 人形は今回剥がした床下に以前から放置されていた事を説明し、残材と一緒にこちらで処分する旨を伝えたところ、人形は自分らで処置したいので譲って欲しいと言われました。
断わる理由も無いので、私は出窓から人形を取り、奥さんに渡そうとしたときでした。
私の手から人形が逃げ出しました。
 逃げ出した、と感じたのは、明らかに手のひらの中で小さな突起物の様な感触が二つ、ぐいっと中から押されるのを感じたからです。
抱き抱えた子供がイヤイヤをして両腕を突っ張ねるような感じに似ていました。
 人形はそのまま下に落ち、奥さんの足下まで転がって行きました。
突然の出来事で私も動揺しましたが、奥さんは私以上に動揺なされたみたいで、小さく悲鳴を上げてその場でへたり込んでしまいました。
驚かしてしまった事を謝罪しましたが、奥さんは無言のまま人形を持ってふらふらと他の部屋へ入られてしまいました。











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日々の恐怖 5月14日 床下(1)

2016-05-14 19:22:33 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 5月14日 床下(1)



 かれこれ十年ちょい前の話です。
横浜にあった内装工事屋で見習工みたいな感じの仕事をしてた時の話です。
 都内のあるマンションの洋間の改修工事の依頼が来ました。
築年数はその当時で10年前後でしょうか、割と名のある通りに面したごく普通の外観でした。
依頼された方は二年前に購入されたそうです。
 現場は一階でした。
八畳ほどの洋間の床と壁紙の張り替えが主な内容です。
 依頼を請け、現調に行った時に家主から相談を受けました。

「 床下からたまに物音が聴こえる。」

現場は一階だった事もあり、躯体の隙間から鼠等が入り込むケース(鉄筋やモルタル工では稀ですが)もあるので原因を突き止めて補修します、と対応しました。
 工期初日。
依頼主が在宅のままでの改修工事でしたので、洋間にある家具等を廊下に運び出し、私はクロス剥がし、床職人がフローリングを剥がし始めました。
 作業を始めてしばらくして職人さんから呼ばれて、半分程剥き出しになったコンクリ躯体の床下を見ました。
躯体にフローリングを直に張る施工ではなく、躯体直から少し隙間を作り、フローリングとの間に防音材や断熱材を入れる施工でした。
 しかし、窓のある側の一列の部分だけそれら床下材が入っておらず、確かに何か引き摺ったような、這いずったような跡が埃やおが屑の上に残っていました。
鼠等の小動物を想像していたのですが、残っている跡は猫ぐらいの太さのものでした。
作業報告書用の写真を撮り、残りの床材を剥がす作業の手伝いをしていた時でした。
例の一画の一番角に何かがいました。
 人形でした。
市松人形とでも呼ぶのでしょうか、オカッパの黒髪の着物を着た人形です。
埃にまみれていたせいもあると思いますが年代物のような古めかしい印象を受けました。
 人形はうつ伏せの状態で置かれており、体に毛糸のような紐でぐるぐる巻きにされていました。
拾い上げて表に反してみると、巻き付けられた紐は細長い紙に墨字で書かれたお札か護符のようなものと人形を括り着けている事が分かりました。











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日々の恐怖 5月13日 東京暮らし(7)

2016-05-13 18:52:01 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 5月13日 東京暮らし(7)



 10年程前、アパートが新築して1年半経った時に、若い夫婦が引っ越してきたそうだ。
ほどなくして、その夫婦に子供が生まれた。
 だが、しばらくして旦那が事故で亡くなり、奥さんが一人で育てていたんだが、育児ノイローゼか旦那の死がショックだったのかわからないが、1才にも満たない赤ん坊と共に餓死して死んだそうだ。
 社長は、

「 保険金も入ってて家賃も滞納してないのに、餓死で死ぬなんてありえないんだけどね。」

と言った。
 俺は頭にきた。

「 なんでそんないわく付きの部屋を貸すんだ、説明も無しに酷いだろうが!!」

そこで、社長は言い訳にもならないことを言った。

「 いや、2年程前に御祓いをして、それ以降現れなかったんで・・・・。」

あきれて言葉が言えなかった。
 だが、落ち着いて考えてみれば、俺は今日地元に帰るんだし二度と部屋には行かない。
あの部屋に帰るのは、あの憎い上司だけだ。

“ ざまぁみろ、呪い殺されてしまえ!”

その時は、本気でそう思った。
 俺は社長に、この事は誰にも、上司にも話さないでくれと念を押し、部屋の鍵を渡した。
そして俺は、

「 鍵がかかってないんで、オタク達でかけてください。
鍵は俺の上司に連絡して、俺から受け取ったと報告しといてください。」

と伝えて不動産屋を出ようとした。
 扉を開ける時に社長が独り言の様に呟いた。

「 でも、おかしんですよね。
出るのは3階じゃなくて4階なんですけどね。」
「 じゃあ、アパート全体に御祓いをした方がいいですよ。」

俺は、そう言い残して外へ出た。
 地元に帰った次の日、会社に出勤して課長に事の顛末を話し、10万は後日、返してもらった。
もちろん、恐怖体験は言ってない。
 そのとき、俺は確信していた。

“ アイツ、絶対、呪い殺されるぞ。”

ところが、その後の上司は、本社にやって来て俺の斜め前の席で、今も元気に仕事をしている。
 俺はアイツを見る。
アイツはニヤッと笑った。












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日々の恐怖 5月12日 東京暮らし(6)

2016-05-12 18:28:42 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 5月12日 東京暮らし(6)



 俺は頭パニックになりかけてた矢先、右足の甲を何かに踏まれた。
例えるなら、犬か猫が踏んだ様なグニュとした柔らかいけど重みを感じる様な感じ。

「 ホヒャッ!!」

変な雄叫びを上げて跳び上がった。
すぐにテーブルの下に目線が行く。
 赤ん坊だった。
今度は、はっきりと見た。
裸の赤ん坊がハイハイしている。
色白の肌、生えそろってない髪の毛、顔は下を向いていたので見れない。
 完全にパニックだった。
赤ん坊から目が離せなかった。
恐怖で体も動かせなかった。
 と、その時、

“ ガタッ、ガタタ・・。”

と音がした。
瞬間的にガラス障子に目線を向けた。
 俺の部屋にいた何かが、障子を開けようとしていた。
2~3㎝空いた隙間から白い指をのぞかせていた。
 全身に鳥肌がたって、本能が、

“ 逃げろ!! ”

と叫んでいた。

「 うぅぅぅぅ、わゎぁぁぁぁ、あぁぁっぁっぁあ!!!!!」

ありったけの声を絞り出し、玄関扉をはね飛ばし、階段を駆け下りた。
 後ろを振り返る余裕もない。
全力疾走だった。
 前の道路を信号無視で横断し、不動産屋に逃げ込んだ。
不動産屋の従業員の姿を見るなり、まくし立てた。

「 なんなんだよ、あの部屋はぁーー!!
幽霊出るじゃねーかーー!!
てめぇ、どーゆーことか説明しろ、この野郎ぉ!』

胸倉をつかんで壁に押し付けた。
 今思えば従業員も驚いただろう。
顔面蒼白だったであろう俺から、胸倉を掴まれて泣きそうな顔になっていた。
 この騒ぎで奥の事務所にいた不動産屋の社長が出てきた。

「 どうしたんですか?」

という声に社長に向き直って、今体験した出来事をまくし立てた。
すべてを話し、少し落ち着いた俺は、あのアパートで何があったのか社長から聞いた。











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日々の恐怖 5月11日 東京暮らし(5)

2016-05-11 18:59:21 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 5月11日 東京暮らし(5)



 玄関扉はスチール製で形は昔の市営や県営住宅を想像してもらえばわかると思う。
やや中心より下にポストの差込み口があり、部屋内側は受けの箱が格子状になっている。
差込口から中の鍵までは、目視できない。
 角度的に、どーしても格子の隙間から玄関の床タイルしか見えなかった。
それでもハンガーの先を手探りで鍵に合わせ様とする。
 ガチャガチャと音はするものの、手ごたえは感じられない。

“ くそっ!どーなってんだ!?”

焦りがピークに達した時、チャカッと手ごたえがあった。

“ やった、とれたか?”

慌てない様に慎重に引きぬく。
 鍵がそろそろ見えるくらいの時、確認のためポストを覗いた、その時だった。

“ えぇっ??”

格子の隙間から玄関タイルが見える。
が、そこを何かが横切った。
 一瞬のことだったが、赤ん坊に見えた。
ぷっくりとした右足と右横腹、ハイハイをしている赤ん坊を想像した。

“ いやいやいや、ありえんやろ?”

躊躇はしたが、時間も無いし、金も惜しい。
意を決して鍵を抜き取り、鍵を開けた
 スチール製の扉は、重そうな音をたてながらゆっくりと開いた。
恐る恐る半分逃げ腰で中を覗く。

“ 大丈夫だ、何もいない・・・・。”

内心ホッとして、勢いにまかせて扉を開き中に入った。
ダイニングのテーブルの上の封筒を確認する。
 靴を脱ぐのもそこそこに、半分土足ぎみにテーブルに駆け寄る。
封筒を手に取り中を開く。

“ あった、よかったぁ。”

あるのは当たり前なのだが、この時は何故か安心した。
 10万を封筒に残し、残りの金をサイフにしまう。

“ これで忘れ物は無いな・・・・。”

と思って何気に自分の部屋の方を見た。

“ うわっ?!”

腰が抜けそうになった。
 俺がさっき部屋を出た時に磨りガラス障子を閉めてたんだけど、そのガラス越しに誰かが立っている。
いや、正確には、白い人型が立っていた。
 輪郭からして背丈は150~160ぐらい。
体部分は白い服っぽい。
頭部分と思われる所は輪郭がアヤフヤだが黒髪で長いのか短いのかわからない。
それが俺の部屋の窓からの光でボヤァと浮かびあがってる。











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しづめばこ 5月10日 P430

2016-05-10 20:09:44 | C,しづめばこ


しづめばこ 5月10日 P430  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
下記のリンクに入ってください。
小説“しづめばこ”




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日々の恐怖 5月9日 東京暮らし(4)

2016-05-09 13:27:43 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 5月9日 東京暮らし(4)



 気分洋々と恵比寿駅に向った。
時間はAM11時頃。

“ 今日の最終の新幹線に乗ればいいんだから、それまで最後の東京観光してもいいなぁ・・・。”

なんて思ってた。
 緑の窓口に行き、切符を手配した。
そして、代金を払う時に気が付いた。

“ やべぇ、アパートに、金忘れた!?”

 それからアパートまで全力疾走。
もうすぐ12時になる。
上司は、たまに昼休みにアパートに帰る時がある。

“ マズイ!
それだけはマズイ!!
あれだけ啖呵きったんだ。
顔を合わせるのはマズイ!!”

3階の部屋の前まできて愕然とする。

“ 鍵を玄関ポストに放り込んだんだった!
やべぇ、手が入らねぇぇ!”

どうしても手首より先に入らない。
 必死で考えた。

“ 不動産屋だ!
不動産屋に行けば、鍵があるはず!”

ダッシュで階段を駆け下り、斜め前の不動産屋に飛び込む。

「 3階の○○ですけど、鍵を忘れてしまって・・・、あの・・・鍵、貸してもらえませんか?」

だけど不動産屋は、担当者が鍵を持って食事に出ていて1時まで帰って来ないと言う。

“ 昼飯早えーし!!”

と突っ込んでみても1時までは待ってられない。
上司が帰って来るかもしれない。
 さすがに焦った。
ふと、ココからアパートを見る。
クリーニングの看板。

“ そうだ!
ハンガーだ!
針金のハンガーを真っ直ぐに伸ばして引っ掛けよう!!”

考え自体は幼稚だったが、その時はそれが最善だと思った。
 すぐにクリーニング屋へ。
事情を話しハンガーをもらった。
 時計を見ると11:45頃。

“ 時間が無い!”

すぐさま3階に駆け上がる。
ハンガーを真っ直ぐにして先のフックを玄関扉のポストに差し込む。












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しづめばこ 5月8日 P429

2016-05-08 18:46:51 | C,しづめばこ


しづめばこ 5月8日 P429  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
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日々の恐怖 5月7日 東京暮らし(3)

2016-05-07 20:36:59 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 5月7日 東京暮らし(3)



 東京に来て11ヶ月経った頃には、上司のイビリで精神的にもピークがきてた。
仕事も大詰めを迎えていて、帰宅がAM3:00が続いたり、徹夜なんてザラだった。
 そんなこんなで、嫌になっていた俺は3日間無断欠勤をした。
気分はすでに地元に帰る気満々。
 4日目に仕事場に行き、地元の本社に連絡した。
会社の課長はウダウダ言っていたが、聞く耳は無い。
 仕事場の上司に、

「 じゃあ、今から帰りますんで・・・・。
もう2度とココには戻りません!」

って言ってやった。
 すると上司は、

「 お前がココで失敗して損失した分を責任かぶるのは上司である俺だ。
それじゃ不公平だろ?
お前にも責任をかぶってもらわんとなぁ・・・。
 帰る前に10万をアパートのテーブルの上に置いていけ!
少しは誠意をみせてみろ!!」

なんて言いやがった。
 まぁ確かに、ココで失敗して出した損失は30~40万ぐらいになる。
それに比べたら10万なんて安い方だ。
速攻で銀行に行き、10万+帰りの電車賃+土産代を下ろしてアパートに帰る。
 金の入った封筒をテーブルの上に置き、荷造りをした。
ダンボール5箱分を郵送して、俺自身、身軽になった。
アパートの鍵をかけ、鍵を玄関扉の郵便ポストに放りこんだ。











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日々の恐怖 5月6日 東京暮らし(2)

2016-05-06 19:40:16 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 5月6日 東京暮らし(2)



 ある休みの日のこと、買い物からアパートに帰ったら、隣りの部屋の玄関扉が開いていた。
興味本位で廊下から中を覗いてみたら、玄関には黒い革靴が一足あった。
それ以外はガランとしていた。
 ふと中から、不動産屋の担当者が顔を見せた。

「 こんにちは・・・。」

まぁ一応、お世話になってるのと覗いていた後ろめたさもあって挨拶をした。

「 あぁ、こんにちは。」

靴を履きながら担当者も挨拶を返してきた。

「 お隣さん、引越しされたんですね?」

玄関先とはいえガランとしていたからそう思った。
 俺は6時にはアパートを出て、帰宅は夜の10時過ぎという生活をしていたので、

“ 俺が仕事に行ってる間に引越ししてても、わかんねぇわな・・。”

と思っていたが、担当者は、

「 えぇ、来週の土日に引越しされます。」

なんて言っている。
どうも話しが噛み合わない。
 よくよく話しを聞いてみたら、いままで空家だったが入居者が決まったので、来週、引越しに来るとのことだった。

“ じゃあ、赤ん坊の声は・・?
コンクリートの壁を伝わって、下か上の住人か・・?”

なんて思ったが、担当者が、

「 じゃあ、これで・・・。」

と言いながらその場を離れ様としたので、呼び止めて、

「 このアパートに、赤ん坊のいる住人さんいますか?」

って尋ねた。
 担当者は少し考えた後、

「 さぁ・・・、私は、わかりませんね~。
他の担当者なら知ってるかもしれませんが・・・。」

と、釈然としないまま、お互い挨拶を交わしその場を離れた。










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日々の恐怖 5月5日 東京暮らし(1)

2016-05-05 21:57:24 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 5月5日 東京暮らし(1)



 今から11年前、仕事で東京に1年近く暮らしてた時の話しです。
恵比寿駅から徒歩5分ほどの場所で、うろ覚えだが5~6階建てのアパートだった。
 1階にはクリーニング屋、通りを挟んで斜め前に不動産屋があり、その不動産屋がアパートの管理者だった。
築10年以上は経ってるだろうか、1フロア4戸で周りは雑居ビルで囲まれた狭苦しく、暗いというのが第一印象だった。
 不動産屋の担当者に通されたのは3階の一室、1LDKでユニットバス付。
玄関から6畳程のダイニングキッチンを突っ切って、すりガラスの障子で仕切られた6畳程のリビングが俺の部屋となった。
 家賃が月20万。
地方の田舎者の俺には信じられない額だ。

“ まぁ、会社が払うんだから関係ないんだが・・・。”

と思いながらも、そこで会社の上司との共同生活を送ることになった。
 私事だが、この上司ってやつが超がつくほど嫌な奴で部下を何人も辞めさせた事で有名だった。
慣れない都会生活+上司のイビリがストレスに感じてきた4ヶ月ぐらい経ったある夜の頃だ。
いつもの様に丸めた布団を壁際に押しやって、背中をあずけマンガを読みふけっていた。
 ふと耳をすますと、表の車の往来の音に混じって微かだが赤ん坊の泣き声が聴こえる。
布団を押しやった壁がコンクリートの壁にクロスを貼ってたんだが、どうやらこの壁から聴こえる。
耳を壁に当てるとよりはっきりと聴こえた。

“ あぁ、隣りの住人か、赤ん坊の夜泣きだな・・・。”

ぐらいにしか思わなかった。
 猫のサカリの声かとも思ったが、正直どうでもよかった。
隣りの住人がどんな人かも知らないし、そもそも住んでいるかどうかも興味は無かった。
その日を境に度々、赤ん坊の泣き声を聴くこととなる。











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日々の恐怖 5月4日 信号機赤

2016-05-04 19:19:18 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 5月4日 信号機赤



 岡山に渡ろうと高松のフェリー乗り場に行ったけど、なんとなく気が乗らず、徳島から明石海峡大橋をわたろうと思いついたのが午前一時だった。
 時間指定も無く、なんとなく次の日に尼崎に着けばよいって程度の日程。
思いつきだけで香川から徳島へと、海沿いの道を只ひたすらと南下した。
 しばらく走れば寂れた漁村って雰囲気になってきて、対向車は大型トラックが時々って状況だった。
 まあ住んでるところが信号機一つ無い寂れた漁村だったわけだから、点滅とはいえ、信号機のあるその道を田舎道だと思ったりはしなかった。
 ふと、その点滅信号機が黄色に変わりすぐに赤になった。
信号機にしたがって止まり、青になってからもう一度車を走らせた。
そのとき、

“ あれ?
なんで今信号機赤になったの?
誰も渡らなかったし・・・。”

という疑問と不安を感じた。
 するとすぐ次に見えてきた点滅信号が不意に青に変わった。
なんともいえない気持ち悪さを隠せない。
それで、スピードを出して通り過ぎようとアクセルを強く踏みなおした。
だけどその瞬間、信号は黄色に変わり、そして赤に変わってしまった。
 仕方なく止まる。
こんどこそ誰かが押したのだろうと右を見ても、左を見ても横道から進入する車があるわけでもなく、信号機に人が立ってるわけでもなく。
そして異様に長い時間変わろうとしない赤信だった。
 その時、運転席側の右後ろの車の外、視界に入るかは入らないかのその場所で、黒い何かが動いた気がした。
声にならない声を出してあわててアクセルを踏んだ。
 体中に鳥肌がたったまま、おそるおそるバックミラーを確認すると、赤信号だったはずの信号機は黄色の点滅を繰り返しているだけだった。
 睡魔に襲われて、一瞬夢を見ただけなのかもしれない。
むしろそうだと思いたい。











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日々の恐怖 5月3日 電車の幽霊

2016-05-03 21:17:07 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 5月3日 電車の幽霊



 幽霊を見た事があると言う知人の話です。
彼が電車に乗っていた時の事。
途中の駅から若い女性が乗り込んで来た。
 凄い美人でミニスカートから綺麗な足が伸びている。
女性は空いている席を探している様な、知人を探している様な様子で車両を歩いていたらしい。
 彼が鼻の下を伸ばしながら女性を見ていると、隣の席に座る老女がいきなり話しかけて来た。

「 あんたにも見えるんだね。」
「 ・・!?」

 彼が、

“ 何を言うんだこの婆さん・・?”

と言う顔で見返すと、

「 周りを見てごらん。
あんた以外に、アレを見てる者はいるかい?」

 彼はハッとしてしまった。
老女の言う通りである。
あれだけの美女が、あんな短いスカートをはいているのに誰も女性を見ていないのだ。
頭の悪そうな男子高校生さえも一瞥もしない。
 老女は独り言の様に話を続けた。

「 あたしはプロだから見えるんだけどね。
でも、あんた見たいな素人にも見えるとは珍しいね。
アレはかなりタチの悪いモノだよ。
この近くで電車に飛び込んで、成仏できずに彷徨っているんだろうけど・・。」
「 飛び込みですか?
でも・・・・。」

彼は思わず聞いてしまったと言う。
 老婆は女性が電車に飛び込み自殺をしたと言うが、女性は生きているかのように綺麗だったからだそうだ。

「 あんた、映画の見すぎだよ。
アンなモノでも昔は女だったんだよ。
女ってのはね、死んでも尚、綺麗でいたいものなんだよ。
あたしがこれまで手がけた女モノは皆、生きてたときの一番綺麗な姿で出て来たよ。
 そんな事より、ホラホラ、アレが来るよ。
あんた絶対にアレと目を合わせちゃ駄目だよ。」

 女性は彼と老女に気付いたのか、歩調を速めやってくると彼の前に立ちはだかった。
彼は本当に生きた心地がしなかったそうだ。
目をギュッと瞑りジッと下を向いたままであったと言う。
 電車が次の駅に着いた時、やっと隣の老婆が声を掛けくれたらしい。

「 もういいよ。
ほら、アレは獲物を見つけて出て行くところだよ。」

 彼がゆっくりと目を開けて顔を上げると女性は、二十歳そこらの、見た目の良い男と電車を降りるところだった。
残念ながら、彼はハゲ、デブ&オヤジのスリーカードを持っている。
 老女は、

「 女の性なんだろうね。
捕りつく男もカッコ良いいのがいいのかね。」

と言うとニヤリと笑い言葉を続けた。

「 今日はサービスしといてあげるよ。
依頼なら一本は貰っているところだけどね。」

 彼はそれ以前もそれ以後も幽霊は見ていない。
なぜ、あの時だけ彼にアレが見えたのか?
一本とは十万円なのか?
百万円なのか?
未だ彼には分からないと言う。










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日々の恐怖 5月2日 二十歳の頃(2)

2016-05-02 20:23:53 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 5月2日 二十歳の頃(2)



 更に時は流れ、成人式を迎える年の冬、祖母が癌で亡くなった。
煙草などは全く吸わない人だったが、肺癌だった。
俺は喪服を持っていなかったため、成人式の為に作ったスーツで葬儀に参列した。
 夏になり、祖母の法要のために両親だけ帰省。
3日後両親が帰ってくるなり深刻な顔をして話をしている。

“ なんだ?遺産相続で揉めてんのか?”

と聞き耳を立てているとどうやら違う。
 どうやら法要で親戚が田舎の庭先で集合写真を撮影したそうなのだが、そこに写ってはいけないものが写ってしまったらしいのだ。
集合した皆の後ろにある石灯篭。
そこに、明らかに顔と分かる、だが人ではない般若のような形相の'何か'が写ってしまったらしい。
 その灯篭は子供の頃祖母の家に遊びに行った時に見たことがある。
苔むしてかなりの年月の経過を伺わせる灯篭だった。 
 法要に来ていた住職にその写真を見せるなり、住職は祖父にこう言ったそうだ。

「 あの石灯籠、どこから持ってきた?
相当怒ってるぞ。
アレは供養塔だ。」

聞けば数十年前に祖父が田んぼの拡張をした際、灯篭が邪魔だったので庭に勝手に持ってきてしまったらしい。
 何の供養塔かは分からないが合戦地が近いので落ち武者でも祀っていたのか。
その話を聞いて小学生だった自分が体験した男の語りかけの意味がわかり、改めて背筋が寒くなった。
 二十歳の時に死ぬのは自分ではなく祖母だったのだ。
あの男の声はそれを予知していたのだ。
 聞き取れなかった部分をもし、もっとちゃんと聞きとれていたら、祖母はもう少し長生きできたのかもしれない。
祖母にも申し訳ないが、わざわざ注告しにきてくれたのに、応えられなかったのが申し訳なかったと今でも思っている。

〟そもそも誰だったのかねぇ?供養塔の人?ご先祖様?“

今となっては自分にとって、唯一の心霊体験でした。
 ちなみに写真と灯篭はお寺で供養してもらったそうです。
勝手に供養塔を移動した母方の実家はやはり祟られていたのか、長男が腸捻転で幼いときに亡くなり、次男がうつ病で自殺、三男は子供が生まれると同時に奥さんが逃げる、四男は離婚2回、3回目の結婚相手が祖父をいびり倒すといった男系に不幸が重なる家柄となっています。










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日々の恐怖 5月1日 二十歳の頃(1)

2016-05-01 19:04:31 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 5月1日 二十歳の頃(1)



 東京在住のMさんの話です。

 自分の実体験です。
俺はいわゆる甘えんぼ、というやつで小学校高学年くらいまで、夜寝るときは父親のベッドで一緒に寝ていた。
 ある夏の夜、いつものように父と一緒に寝ていたのだが、夜中に急に目が覚めてしまった。
トイレに行きたくて起きる、とかではなく完全に覚醒する感じ。
窓の外はジーっという虫の声と月明かりが照らす幻想的な雰囲気。
 窓から月を眺めながらボーっとしているとあることに気がついた。
窓の外から男の低い声でボソボソ喋る声が聞こえる。
 我が家は新興住宅地で窓の外は3mほど離れて隣の家。
最初は隣の家の人が起きてるのかなーなんて考えていたが、耳を澄ますとその声がかなり近くから、しかもどうやら一人で喋り続けているのに気づく。
 父の寝室は2階。
父は隣でかすかにいびきをかいて寝ている。
我が家には父以外にそんなに低い声を出せる人間はいない。
 意識を集中して耳を澄ませる。
だんだん喋っている内容がところどころ聞き取れるようになったとき、全身に鳥肌が立った。
 声は窓のすぐ下から聞こえてきている。人が立つスペースなんてありはしない。
そして何より恐怖だったのはその男が自分の名前を呼んでいる。

「 ○○・・・、○○・・・・。」

低いというよりはしゃがれて潰れたような声。
そして断片的に聞き取れたのは以下のような内容だった。

「 お前が・・・二十歳・・・・・死ぬ・・・だから・・・・・。」

これを男はずっと繰り返し繰り返し窓の外から自分に向かって語りかけていた。
 気がつくと意識を失ったのか、眠ってしまったのか朝になっていたが、窓の外の男の声ははっきりと覚えており、子供だった自分は、

“ あれは死神だったんだ、自分は二十歳で死んでしまうんだ。”

というように、妙に納得してしまった。
 その後、その男の声がまた聞こえることはなく月日が流れ、やがて怯えは薄れ、中学生に上がる頃にはその窓の外からの語りかけは、仲間内で自分の体験した恐怖体験ネタとしてよく使っていて、

「 俺、二十歳でヤバイらしいよ!?」

なんて言っていた。











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