いいことを照れもせずにいう奴は、みんな疑ったほうがいいぞ。
Takaaki Yoshimoto 25 Nov, 1924-16 Mar, 2012
流離にも飽いて、彼らは今や望郷の念に焦がれる。彼らの目は
群青(ウルトラマリン)の、一番星が穿った暗闇に向けられた。
暗い寄せくる波に映し出された暗闇に。
――デレク・マーソ「ゲイブリエル山」
『南極大陸』(1985年ギャラリー・プレス刊)より
今 朝
今朝はまったく見事な朝だった。地面には少し
雪が残っていた。クリアな青い空に太陽が
浮かんで、海はどこまでもブルー、そしてまた
ブルー・グリーン。
さざ波ひとつなく、穏やか。服を着替えて
散歩に出た-自然のさしだすものを
しっかりと受け取らずにはおくものかと。
身をかがめるように曲がった、古木のそばを通った。
あちこちの岩陰に雪が吹き溜まった
野原を横切った。断崖まで
歩いていった。
そこで僕は海を、空を、はるか眼下の白い砂浜の上に
輪を描いているかもめたちを、じっと
見つめた。すべてがすばらしい。すべてが、混じりけのない
ひやりとした光を浴びている。でもいつものように、僕のあたまぱ
ふらふらどこかにさまよっていこうとした。僕は
今、目の前にあるものだけを見るように、
それ以外のものを見ないように、気を引き締めなくては
ならなかった。自分にこう言い聞かせた。
大事なのはこれなんだ、ほかのことは忘れろと(そして事実
ひとしきりそれを見ていたのだ!)。そのひとしきりのあいだ、
日常のあまたの雑念は、僕のあたまから放逐された。何が
正しくて何か間違っているか-責務、
美しい追憶、死についての思い、別れた妻を
どうしよう。そんなものみんなどこかに
消えてしまえばいいのにと、今朝願っていたことすべて。
毎日まいにち、僕が抱え込んできたあれこれ。生きていく
ために、踏みつけにしてきたあれこれ。
でもそのひとしぎりのあいだ、僕は自分のことも、ほかの
いろんなことも、きれいさっぱり忘れた。完全に。
その証拠に、ふり返ったとき、自分がどこに
いるのか、わからなかった。何羽かの鳥たちが、
こぶだらけの木からさっと飛びたち、僕が行かなくては
ならない方向にむかって行く、そのときまで。
【ナショナルトレッキング・スタートアップ】
● 安土山をトレッキング起点に
滋賀県の「トレッキングの山」の電子パンフレットによれば、赤坂山からスタートしているが、ここを起点(スター
トアップし反時計回りで一筆で戻って来るのは、また綿向山から北に縦走し次の霊仙山を目指すルート――三重の鈴
鹿・北鈴山系、御在所岳~藤原岳~御池岳(滋賀)~三国岳――のように鈴鹿山系を入れには、公共交通機関の利便
性を考えると繋ぎが悪そうだ。そこで、JR安土駅をポイントに安土山~箕作(みつくり山~竜王山~綿向山~雨乞
岳~御在所岳のコースがベターに思える。織田信長の「天下布武」にあやかり「天下高踏」とちょっと気取り過ぎも
するが悪くもない。尚、「ナショナル・トレッキング」の呼び方での「ナショナル」は「ナショナル・パーク」との
意味である。今年は1泊2日の関東の百名山の踏破も予定している。
コース距離は、JR安土→安土城趾→観音寺城趾→五個荘清水鼻町間で約17キロメートル、弾丸登山で2日にわけ
試踏(点線の赤と青)。天候次第だが16日(土)、23日(土)、30日(土)は吉野山、これは県外で関係ない。
5月6日(土)は箕作山。
【ちょっとだけ量子ドット工学講座 4】
● カイラル対称性とグラフェン
素粒子物理学の生成子Τの基本表現:SU(n)={g∈U(n);detg=1}で定義――ここで U(n) はユニタリ
群、 det は行列式――したとき、SU(3)は、Ta=1/2λa――ここでλはゲルーマン行数として表現したゲー
ジ対称性に基づき強い相互作用を記述される量子色力学(quantum chromodynamics、略称: QCD)、色つまり色荷(
カラーーチャージ)と言っても光の三原色で説明するための記述上の話。因みに、白色はカラーチャージを持たない状
態を表現で、SU(3)リー代数を表したもので、「白色」状態を作るには、三原色を持つクォークと「補色」となる
カラーチャージをもつ反粒子とでペアを作る(メソン)か、3つのクォークにつき、3つの三原色を重ねて「白色」と
なるようにトリオを作る(バリオン)かが考えられる。SU(3)の表現論では、3×3=1+8/3×3×3=1+
8+8+10に現れる1がそれぞれメソンとバリオンに対応すると説明される。
QCDには、クォークのフレーバー(素粒子)を入れ替える対称性が存在する。クォークの質量がゼロである場合は、
クォークの右巻きスピン成分と左巻きスピン成分の間の転換を表す項が理論のラグランジアンに含まれず、右巻きと左
巻きで別々にフレーバーを入れ替える変換でラグランジアンが不変となる。例えば、アップクォークとダウンクォーク
のみの理論を考える場合、カイラル対称性は SU(2)L×SU(2)R となる(ここでは U(1) 部分は考えない)。一般にフレー
バーが Nf 種類の場合、対称性は SU(Nf)L×SU(Nf)R であるが、通常は Nf=2、またはストレンジクォークを加えて
Nf=3 の場合を考え、実際は、クォークの質量は完全ゼロでなく、アップクォークは1.5~3.3 MeV、ダウンクォーク
は3.5~6.0 MeV であり、現実のQCDのカイラル対称性も厳密な対称性でない、近似的な対称性でQCDの非摂動ダ
イナミクスが重要になるエネルギー領域(200 MeV程度、QCDスケールと呼ばれる)付近では、この対称性の存在や、
その破れが大きな影響(ハドロンの質量など)を及ぼす。
つまり。このカイラル対称性の自発的対称性の破れが凝縮し真空期待値を持ち、理論が元々持っていた対称性 SU(2)L
×SU(2)R が破れ、右巻き成分と左巻き成分を同時に変換する、対称性 SU(2)V のみが残る。陽子や中性子などのハド
ロンが、構成要素であるクォークの質量の和よりもはるかに大きな質量は、ハドロンの内部で、クォークが凝縮したク
ォーク・反クォーク対との相互作用であると説明される。
グラフェンは単位胞に2原子(上図の白、黒の格子点)をもち、各格子点に1軌道を考えれば2バンドとなり、並進
対称性であれば、波数表示に移ったとき2行2列のハミルトニアンH(k) で記述し、グラフェンの基本的な特徴として、
蜂の巣格子上でA、B部分格子に分けたとき、図のように、主要な飛び移り積分はAB格子間にのみ存在し、一般に
bipartite と呼ぶ。この性質により、グラフェンのハミルトニアンは、γ=σ3 として、{ H, γ }= H + H =0 と
いう関係式を満たし、グラフェンのカイラル対称性と呼ばれ、このカイラル対称性はグラフェンの一つの重要特性で
あるフェルミオン・ダブリング(Fermion doubling) において本質的な条件なのである。
グラフェンは、実際に存在する試料には必ず乱れが存在し、グラフェンの物理における重要な一側面をつくる。グラ
フェンの乱れは、種々のタイプが考えられ、これらを上表にまとめる。この表では、乱れが存在するとき系のカイラ
ル対称性が保たれるか否かを示す。カイラル対称性を保つ乱れに関しては、ゼロ・エネルギーが特別な意味をもち、
後で説明する磁場中のn=0ランダウ準位は大きな影響を受ける。表にあるように、不純物原子等からの乱れの効果
はカイラル対称性を破り、フリースタンディング・グラフェンと呼ばれる空中に浮かんだグラフェンを想定すると、
この系では不純物以外に、2次元固体の安定性要求の必須であるリップル(さざ波・揺動)には内的要因の乱れが存
在する。実験的に極限的に乱れを減らしてもリップルだけは取り除けない。このリップルの主な効果は、原子間の距
離を変更し、π軌道間の重なりの角度変更に寄与する。これは格子模型には長周期の空間相関を持つランダム・ホッ
ピング、ランダム位相として系に影響をあたえ、また、連続模型としてはゆらいだゲージ場をもたらす。
このような特異な物性をもつグラフェンシートに、グラデーション量子ドットを挟み込み二層(≦数十ナノメートル)
のシートの周りをシリコン結晶のバンドギャップエネルギーより大きいバンドギャップエネルギー化合物で閉じ込め、
水平から、孔径の小さい方を受光面、大きい方をバックコンタクト下に垂直に方向転換し、光電変換素子とすれ一番
小さく軽い高変換効率な太陽電池が誕生する。構成・構造に多様な形態が考えられる。
レニー・トリスターノはイリノイ州シカゴに生まれる。白人。十歳で失明。十二歳で既にサロンでピアノをひいたり、
デキシーバンドでクラリネットやテナーを吹いていたという。アメリカ音楽院を経て46年にニューヨークヘ。60
年の〈ニュー・トリスターノ〉(アトランティック)を聞いていると、来るべきモダンジャズの原型が確認出来る。