『李衞公問対』 (りえいこうもんたい)
七世紀唐の将軍事情の説を記したものとされる。「問対」とは「問答」のこと。
『李衛公問対』は、唐の太宗と名将李靖の対話の形で構成されている・古代の兵法が成立して
から千年近い歳月を経ているだけに、強烈な主張はないが、各兵法書のエキスをとりいれてい
運勢を信ずべきかどうか
「吉凶を判断したり占ったりする運命学は、戦いの場合、無視してもよいだろうか」
太宗の問に、李靖はこういった。
「それはいけません。そもそも、戦術とは、心理的な操作です。吉凶を予知する運命学を利用
することによって、貪欲な者だろうと頭の悪い者だろうと、思うように使うことができます。
ですから、無視するわけにはまいりません」
「だが、そなたは前にこういったことがある。名将は、時日や方角による吉凶の予知などには
従わない。愚将ほどこうしたものを気にする、とな。無視してもいいわけではないか」
「殷の糾王が、周の武王に滅ぼされたのは甲子の日です。つまり、同じ甲子の日でも、討王に
とっては滅亡の凶日となり、武王にとっては興隆の吉日になりました。また、宋の武帝は、『
勁くは凶なり』とされる往亡(おうぼう)の日に、軍事行動を起こしました。ひきとめた部下
にたいし帝は『往亡とは、こちらが往き、敵が滅びる日だ』といったのです。果して宋は勝ち
ました。こうみてくると、縁起など無視すべきことははっきりしております。しかし一方では
、こういうこともあります。戦国時代、斉の将であった田単は、敵の燕軍に包囲されたとき、
ひとりの部下を神として祭り上げ、その口から『燕は敗れるであろう』といわせました。こう
しておいて、火牛の計をもって出撃し、燕軍を大破しました。これこそ心理的な戦術でありま
す。吉日・凶日などというのも、同じようなものです」
「なるほど、田単は神のお告げを活用した。だが、反対に周の軍師であった太公望のように、
占いの道具を焼き捨てることによって士気を鼓舞し、討を滅ぼした例もある。縁起をかつぐの
とかつがないのと、全く相反するが、どちらをとるべきだろうか」
「目的は同じことなのです。片やこれを逆手にとり、片やこれをそのまま利用する。それだけ
のこと李衛公問対です。太公望の故事について串し上げましょう。
太公望が周の武王を補佐し、殷の討王を撃つべく、牧野の地に至ったとき、大言雨にあい、の
ぼりや太鼓がこわれてしまいました。そこで、散宜生なる者は、占って吉と出てから進撃しよ
うとしました。のぼりや太鼓が破損したため、将兵が不安動揺しているので、占いによって神
のお告げを得ようとしたのです。
ところが太公望は、『占いには草の茎や動物の骨を用いるが、枯れ草や骨にきいてどうなるも
のか。しかも、どのみち、臣下の身で君主を撃つのだから、迷ってはいられない』として、占
いの茎や骨を捨ててしまったのです。散宜生と太公望のやり方は、逆のようでありますが、根
本は同じであります。わたくしが、縁起を無視しないほうがよいと串し上げたのは、これを活
用する時機があるという意味です。成功の基本が、神や縁起のせいでなく、人間の行動にかか
っていることはいうまでもありません」
〈運命学〉原文は「陰陽術数」。陰陽は、時日や方角による吉凶判断のことであり、術数は回
耶神託などによる吉凶占いのこと。中国の伝統的な運命学であり、古代においては絶対に近い
権威をもっていた。
〈心理的な操作〉読み下し原文「兵は謳道なり」は孫子の有名なことば。本書『孫子』の部で
は「敵をあざむくこと」と訳出してある(始計篇、三八頁)が、解説にも記したように、トリ
ック、心理操作といった意味あいも強く、ここでは前後の関係から訳文を変えた。
※次回から『中国の思想 第六巻 老子・列子』へ。
【スマートな農場事業篇:革新的な潅水システムにビジネスチャンス!】
8月9日、「守る会日誌:暑気払いで気炎を上げる」(『ロシア疑惑と異常気象』)で、世界
的な異常気象下での猛暑による作物の不作と灌漑水温度の上昇対策について触れたが、IBMが
「スマート農場」事業――増加の一途を辿る世界人口。このままでは、約30年以内に世界の食
料供給量を上回ることが予測されている。農業従事者はWatson IoTを活用し、天候、気温、土
壌pH、その他農業に関わる環境要因など、さまざまなデータを分析。状況に応じた最適な意思
決定が可能になるので、生産性を向上し、収穫高を飛躍的に高めることが可能になる――東日
本大震災以降、農業園芸団地を造り、再生可能エネルギーやICT(情報通信技術)を活用して野
菜を栽培する「スマート農場」の試みも始まった。2011年12月に仙台市と地元農業法人の舞台
ファームなどが、日本IBMやカゴメとともに「仙台東部地域6次化産業研究会」を立ち上げ、計
画を推進している(日本IBMが作る「スマート農場」は何が違うのか:日経ビジネスオンライン
2012年03月14日)。あるいは「環境データの見える化で『スマート農業』を実現!」(2016年
11月)、あるいは、「若者よ農業に来れ井関農機、半自動「スマート農園」(日経カレッジカ
フェ 大学生のためのキャリア支援メディア、2016.07.05)などとして掲載されている。さて、
IBM日本の「スマート農場」の特徴(事例)は、❶データとAIが導き出す最適な水量供給:ブ
ドウの生育には、水がなによりも重要なリソース。そこで創業80年をこえるE.&J.Galloワイナリ
ーは、ブドウ畑の注水管理にAIを活用。さまざまなデータを活用して各ブドウ畑に必要な水量
をAIで把握し、優れたブドウの育成と節水を実現。❷クラウド上でAIが多用なデータを分析:
人工衛星から送られるブドウ畑の赤外線画像、畑に設置されたIoTセンサーのデータ、ワイナリ
ーが経験で培った各種情報、The Weather Companyの気象データなど。この多種多様で、膨大な
データを、AIに必要なワークロードに最適なIBM Cloud上で活用し、最適な注水管理を実施。注
水効率の最適化で、E.&j.Galloワイナリーは、水の使用量の25%削減とブドウの品質の向上を実
現している。
以上は、第1次産業の第6次産業化といて『デジタル革命渦論』の1つの産業ギャラクシーで
の変貌事例である。
【マイクログリッド事業篇:記録的な大成長、革新的ビジネスモデル誕生ラッシュ】
送電網関連の公的補助金がマイクログリッド市場の成長に寄与している。マイクログリッド市
場の世界売上高は2015年から2016年に29%増という大きな成長を記録。調査会社ナヴィガント・
リサーチは、世界のマイクログリッド研究&開発市場が220年までに200億ドル規模に達す
ると予想。米国の連邦政府や各州の自治体は、分散型の電力系統を実現に各種の補助金を提供
する。サウス・カロライナ州のデューク・エネルギーは、マイクログリッドに関する3年計画の
事業で連邦政府から720万ドルの補助金の一部を獲得。マイクログリッドで設置件数のもっ
とも多い種類としては、1)商工業用途のマイクログリッド、2)研究機関や大学キャンパス
に設置されるマイクログリッド、3)地域社会および公益会社向けのマイクログリッド、4)
送電網に接続されない遠隔地用マイクログリッド、5)軍事基地向けマイクログリッド、の5
種類がある。このように、世界は「1キロワットアワー1円時代」に突入するかのようである。
※マイクログリッドの定義はないが、一般的なイメージとして、独立した小規模系統てのPVや
蓄電池、発電機などの分散電源を制御することで、電源の品質を維持し安定して供給するもの
とされているが、国や地域によって異なるのが現状。一つの定義として、米エネルギー省(DOE)
が発表している、マイクログリッドの類型がある(上図参照)。
● 今夜の一曲
『ブルーハワイ(Blue Hawaii)』は、1937年のアメリカ映画「ワイキキの結婚(Waikiki Wed-
ding)」の挿入歌主演のビング・クロスビー(Bing Crosby/1903-1977)が歌っているが、後に
エルヴィス・プレスリー主演の映画「ブルーハワイ」(1961年アメリカ)の主題歌としてリバ
イバルヒット。映画「ブルーハワイ」では、タイトルの『ブルーハワイ(Blue Hawaii)』の他、
『アロハオエ(Aloha Oe)』、『ハワイアン・ウェディングソング(Hawaiian Wedding Song)
』などの南国ムード漂うハワイアンが用いられている。
“Hawaiian Wedding Song”Songwriters:Al Hoffman, Charles E. King, Dick Manning
This is the moment
I've waited for
I can hear my heart singing
Soon bells will be ringing
Of sweet Aloha
I will love you longer than forever
Promise me that you will leave me never
All my love
I vow dear
Promise me that you will leave me never
I will love you longer than forever
Pa-a ia me o-e
Ko a-lo-ha ma-ka-mea e i-po
Ka-'you ia e le-i a-e ne-i la
Clouds won't hide the sun
Blue skies of Hawaii smile
On this, our wedding day
I do love you with all my heart
8月5日、トレド大学の研究グループは、青い光、いわゆる液晶のバックライトのブルーライ
トだが、この曝露が増加すると失明が加速する可能性があることを公表。スマートフォン、ラ
ップトップ、タブレットを長時間使用していると、目の光感受性細胞に有毒な分子を発生させ
る。青色光に連続的に暴露することで眼の角膜および水晶体を透過する。代わりに、屋外で紫
外光と青色光をフィルタリングできるサングラスの着用を提案している。レチナール(ビタミ
ンA)に青色光を照射すると、膜上のシグナル伝達分子が溶解するにつれて、網膜は光受容体
細胞を破壊されるが、光受容細胞は自己再生できないとのこと(下図参照)。一刻も早い対策
が必要であろう。細心要注意。
doi.org/10.1038/s41598-018-28254-8
【世界の異常高温 2022年まで続く】
8月14日、、仏ブレスト大学らの研究グループ(英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Com-
munications)の論文によると、気候変動といわゆる自然変動のダブルパンチは、海洋表層水での「異常
な温暖化現象」の発生確率を2倍以上に高め、ハリケーンや台風の危険な温床を形成――この温暖期
は、長期にわたる気候変動を助長し少なくとも5年間は続くと予想さ――すると公表している。
この研究の要件は、❶第1に、大半の気象学者にとっては気候変動の特徴的パターンを見えにく
くする「ノイズ」のある自然変動に着目したこと。❷第2に、最も長期的な予測をもたらす包
括的な気候モデルではなく簡素化した統計的手法を用いた。気候における経年の(短期的な)
自然変動を予測するためのシステムを開発している。2018~2022年の期間は、平年値からの差
(偏差)が人為的温暖化の影響と同等であることを発見。すなわち、自然温暖化は今後5年間
で人為的気候変動とほぼ同程度の影響を及ぼすという(下図参照)。
これにより、海の熱波など、海の「温暖化現象」の発生確率は150%増加すると予測されている
が、確率予報(PRObabilistic foreCAST)を略して「PROCAST」と命名されたこの最新手法は、
過去の気温記録と比較して検証した結果、少なくとも標準的なモデルと同程度の予測精度を持つ
ことが判明。この最新手法は、過去の気温記録と比較して検証した結果、少なくとも標準的なモ
デルと同程度の予測精度を持つことが判明した。PROCASTはノートパソコン上で数秒間で実行可
能で、スーパーコンピューターでの数週間に及ぶ計算時間を必要としないという。
● 今夜のベストミックス
この夏は、暑さが応えたのかビールの飲む量が減っている(加齢もあるが、先日の暑気払いで
は沢山飲んでいるし外で気のおけない仲間だと飲んでいるが)。その代わり、ウイスキーハイ
ボールが欠かせない。そういえば炭酸ソーダが手頃に帰るようになっている。そのつまみにも
変化。枝豆にかわり、ヘルシーなミックスナッツ、酢納豆、茹で落花生。そして、今夜は鮭と
ば。