第49章 指導者は無心でなければならぬ
聖人は、無心である。だから、人々の心がそのまま映る。人々が善とするものは、善であろうと
なかろうと、善とする。それが聖人の徳である。人々が真とするものは、真であろうとなかろう
と、真とする。それが聖人の徳である。
聖人は天下を洽めるに際して、自己の心を是非善悪に片寄らせず、ひたすら無心になりきってし
まう。人々がいかに耳目を集中して、聖人の意志を探ろうとしたところで、探れるものではない。
とどのつまり、人々は赤子のように無心にさせられてしまうのだ。
〈誠心である〉 原文は「常心なし」。一定不変の心がないの意。
〈人々〉 原文は「百姓」。君主に対して、それ以外のすべての一般大衆を表わす。
聖人は常心なし 指導者が無心であれば、人民大衆も無心な本性に返る。これを手段化して、も
っとも作為的な臣下操縦術に変質させたのが、韓非である。『韓非子』ご㈹篇にいわく、「君主
が好悪を見せなければヽ臣下は生地をあらわす・臣下が生地をあらわせばヽ君主はだまされはし
ない」と。
【新弥生時代:最新クロマグロ完全養殖技術】
● クロマグロの稚魚用に開発した「アンブロシア」
10月16日、フィード・ワン(横浜市、山内孝史社長)はクロマグロの完全養殖用に開発した
稚魚向けの餌「アンブロシア」を月内に発売する。餌にはホタテから抽出したエキスを使用。食
いつきが良くなり、稚魚の摂餌量を増やすことで生存率を底上げする。成魚の生産量の拡大を狙
う。同商品はふ化後1~2週間を目安に与える。消化に良く、水を汚さない顆粒(かりゅう)タ
イプで展開。摂餌量が増えれば消化器官の発達を促すことができ、生存率アップにつながるとい
う。従来1%といわれる稚魚の生存率を数%上げる。販売は春のふ化シーズンに合わせて強化。
仕向け先はクロマグロの完全養殖に取り組む極洋やマルハニチロ、日本水産などの大手水産会社
の他、大学などを予定する。同社は現在ふ化後2~3週間に与える餌の開発を進めている。「ふ
化から成魚に至るまで、それぞれの段階に合った餌を開発する」(同社)。給餌の効果や販売す
る価格帯の調整などを行っている。同社は極洋との合弁会社、極洋フィードワンマリン(愛媛県
愛南町)でクロマグロの完全養殖に取り組んでおり、11月に「本鮪の極 つなぐ〈TUNAG
U〉」として出荷する。尚、この摂餌法ででのクロマグロの生存率は、従来の2倍にアップした
とのこと(フィード・ワンがマグロ稚魚餌発売へ/完全養殖向け月内に ホタテ抽出エキス使用
/ みなと新聞 電子版、2018.10.16)。
※アンブロシア(ambrosia):ギリシア神話における神々の食べ物に由来。
”Anytime, anywhere ¥1/kWh Era”
【エネルギー通貨制時代 Ⅳ】
Figure 2. Average cradle-to-gate life (Ectg) per watt hour basis with one standard deviation for NiMH, lead-acid
(PbA), Ni-Cd, Na/S, and Li–ion batteries.5
●蓄電池篇:最新ニッケル水素電池技術Ⅱ
先回のつづき、Innolith社は、革新的電力網/産業向け蓄電池技術を公表。これにより、従来バッテ
リに比べ、寿命スループットが2倍以上に向上。 Innolith GridBankシステムで使用される新し
い蓄電池技術は、50,000回のライフサイクル(=60GWh超エネルギー出力を保持、電力網用蓄電
池の使用コストを劇的な削減を実現。 性能の飛躍的向上は、従来のLiイオン電池と比較して、
Innolith電池のサイクル当たりのコストが3分の1から10分の1になる。この蓄電池を配置す
ることで再生可能エネルギー回収し、電力の周波数規制に安定供給できる。蓄電池の循環容量の
向上は、消費電力増加と蓄電池の劣化逓減をj実現。同社はスイスのバーゼルに本拠を置くエネ
ルギー技術企業であり、高出力、長寿命で安全な蓄電池を供給する無機蓄電池技術事業のパイオ
ニア、またドイツのBruchsalにある研究室で一次研究を行い、その技術はすでに周波数調整に米
国のPJMネットワークに導入している。今回はニッケル水素電池の2つの技術について考察、さ
らに、Innolith社の保有する知財について調べた。
☑ 特開2018-092915 ニッケル水素蓄電池用バイポーラ電極及びニッケル水素蓄電池
【概要】
ニッケル水素蓄電池における電極として、金属箔と、この金属箔の一方の面に塗布された正極活
物質層と、他方の面に塗布された負極活物質層とを有するバイポーラ電極が用いられることがあ
る。正極活物質層には、正極活物質としての水酸化ニッケル(Ni(OH)2)が含まれている。
また、負極活物質層には、負極活物質としての水素吸蔵合金が含まれている。
バイポーラ電極では、金属箔に正極活物質層と負極活物質層とを塗布した後、これらの活物質層
をプレスして金属箔に密着させることにより、金属箔からの活物質層の剥離や脱落の抑制及び充
放電性能の向上を図っている。例えば、リチウムイオン二次電池に用いられるバイポーラ電極で
は、バイポーラ電極の全面にプレスが施されている。
しかし、ニッケル水素蓄電池では、リチウムイオン二次電池とは異なり、過充電時に正極から酸
素ガスが発生する。この酸素ガスは、通常、負極活物質層に吸収された後、充電リザーブとして
予め設けられた負極活物質中の水素と反応して水に戻されるが、負極活物質層の空隙率が小さい
場合には、正極から発生した酸素ガスが負極活物質層内に進入しにくくなるため、電池内に酸素
ガスが蓄積するおそれがある。また、酸素ガスの蓄積によって電池の内圧が上昇すると、場合に
よっては安全弁が作動するおそれがある。その結果、充電リザーブと放電リザーブとのバランス
が崩れ、電池の劣化を招くおそれもある。
しかし、かかる問題を回避するために、単純に負極活物質層の空隙率を大きくすると、負極活物
質層の金属箔からの剥離や脱落が起こりやすくなる、あるいは充放電性能が低下するなどの問題
がある。本件は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、優れた充放電性能を有し、金属箔
からの活物質層の剥離や脱落及び電池の内圧の上昇が抑制されるニッケル水素蓄電池用バイポー
ラ電極及びこのバイポーラ電極を備えたニッケル水素蓄電池を提供しようとするものである。
下図2のごとく、バイポーラ電極1は、金属箔2と、金属箔2の表側面上に設けられた第1活物
質層3と、第1活物質層3よりも面積が広く、金属箔2の裏側面上に設けられた第2活物質層4
とを有している。第2活物質層4は、金属箔2の厚み方向から見た平面視における周縁部に配
置された低密度領域41と、低密度領域41よりも内側に配置され、低密度領域41よりも空隙
率が小さい高密度領域42とを有する、優れた充放電性能を有し、金属箔からの活物質層の剥離
や脱落及び電池の内圧の上昇が抑制されるニッケル水素蓄電池用バイポーラ電極及びこのバイポ
ーラ電極を備えたニッケル水素蓄電池の提供である。
【符号の説明】
1 バイポーラ電極 2 金属箔 3 第1活物質層 4 第2活物質層 41 低密度領域
42 高密度領域
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における、バイポーラ電極の平面図
【図2】図1のII-II線一部矢視断面図
【図3】実施例1における、バイポーラ電極の製造方法の要部を示す説明図
【図4】実施例1の製造方法における、第2活物質層が一対の圧縮ロールの間に進入した時点で
の長手方向の断面図
【図5】実施例1の製造方法における、第1活物質層と第2活物質層の両方が一対の圧縮ロール
の間に進入した時点での幅方向の断面図
【図6】実施例2における、ニッケル水素蓄電池の要部を示す断面図
☑ US9786454B2 Commutating switch with blocking semiconductor:ブロッキング半導体スイッチ
【要約】
少なくとも1つのブロッキング半導体を通る経路のエネルギー吸収経路または一連の経路への電
流の転流によって動作して回路を開く機械的スイッチであって、少なくとも1つのシャトル電極
の少なくとも1つの 電極。尚、この開示は、回路を開くための少なくとも1つのブロッキング半
導体を通るエネルギー吸収経路または経路のシーケンスへの電流の転流によって動作する機械的
スイッチを備え、前記転流は、少なくとも1つのシャトル電極の少なくとも1つの固定電極。前記
ブロッキング半導体は、バリスタ(ポリマー - マトリックスバリスタまたは金属酸化物バリス
タ、MOV)、ツェナダイオード(一方向のみの阻止に有効、逆方向)、または過渡電圧抑制ダイ
オードブレークダウン電圧までの双方向遮断)。 前記ブロッキング半導体は、蓄積された誘
導エネルギーの少なくとも一部を吸収して、制御された最大電圧(過渡電圧抑制ダイオードは、
本明細書ではトランスオーブレータと呼ばれる)を有する回路の開放を可能にする。
摺動スイッチが電極分離に弧を描かないようにするために、これらの電極の少なくとも1つは、
スイッチを介してオン状態回路を規定する整合電極に電気的に接続するために、通常のオン状態
では、電流は整合電極の低抵抗部分を通過するが、スイッチが開くと、電流は、非線形の非オー
ミック抵抗を介して少なくとも1つの明確な第2のエネルギー吸収経路に整流される。バリスタ
(ポリマー - マトリクスバリスタまたは金属酸化物バリスタ、MOV)または過渡電圧抑制ダイオ
ードまたはツェナダイオードのような閾値破壊電圧以下の電流を遮断する。全てのこのような電
圧制限半導体デバイスは、ここでは「ブロッキング半導体」として参照される。
【技術背景】
DC回路を開くためには、流れる電流によって磁場に蓄積される誘導エネルギーを吸収しなければ
ならない。コンデンサに蓄えられていても、抵抗器で放散されていてもかまいません(この意味
で回路を開く際に形成されるアークは抵抗器の特別なケース)。整流回路遮断器の抵抗レベルを
定義するためにオーム抵抗器を使用することの大きな難点は、(1)各抵抗レベルの過渡電圧上
昇は、電流の流れおよび転流時に挿入される抵抗に依存し、(2)(障害時)または減衰(抵抗
挿入後)の電流増加の主な原因は、システム抵抗がほぼゼロになる最も深刻な種類の障害――バ
ッテリから電装部品への主電源ラインの途中に配置された電子部品や配線に、劣化、破断等に起
因する短絡(デッド・ショート)が発生すると、バッテリから昇圧回路や電装部品へ過電流が流
れることでこれら昇圧回路や電装部品が故障するインダクタンス依存性―――があり、インダク
タンスとシステム抵抗(サーキット・ブレーカの外側は、実際の欠陥では大きく異なる可能性が
ある。
したがって、回路ブレーカが動作して挿入された抵抗両端の目標最大過渡電圧差に達するたびに
挿入する適切な抵抗レベルを計算し定義することが理想的だが、これはオーム抵抗で対応では実
用的でない。
バリスタ、逆方向ツェナーダイオード、またはトランスポータが回路に挿入されると、フォルト
の蓄積エネルギーを吸収する対向起電力(EMF)が生成され、 これは典型的な非線形抵抗と見な
せ、充電中に全エネルギーを失う電池としてふるまうことは理にかなっているが、「充電電流」
の電圧を効率よく制御する。
短絡時に急速な電流注入により、誘導エネルギーは通常の全負荷時にシステムに蓄積されるより
もはるかに大ききエネルギーとなる。電流制御される前の通常の全負荷電流の5倍になると、誘
導エネルギーは通常時の最大25倍となる(短絡場所により異なる)。
最近まで、DC遮断器の試験規格は、アークシュート(Edison時代以降の標準的なDC遮断器設計)
に対応する低速動作を想定していたが、電極を開く時間は一般に3ミリ秒(ms)トリップ信号が
受信された後に、電流が減少し始める点に到達するまでにさらに長い時間(最大10ms)を要する
可能性がある。これは、高電流がアークシュートブレーカを介して短絡回路に蓄積し、潜在的に
DC電源の最大能力に達することを意味する。このため、米国では最大短絡電流電車の地下鉄シス
テムのDC障害などの電気列用の遮断器(ANSI / IEEE 37.20)に適用されているDC遮断器規格で
は、回路遮断器が200,000アンペア(200キロアンペア、 "kA")が該当する。
第2の種類の機械的に切り換えられるDC回路遮断器は、日立製の革新的で高速な高速真空回路遮
断器(HSVCB)DC回路遮断器(例えば、米国特許第4,216,513号を参照)を含み、インダクタおよ
びコンデンサを使用して、 LC共振回路をAC真空回路遮断器に接続して、電流がゼロを通過する
際に電流を遮断。これらの回路遮断器は、通常のDC回路の絶縁および回路構成要素を急速な電圧
反転および電圧スパイクに暴す。
低速アークシュート電動レールブレーカが耐えなければならない200kAと比較して、DCレール用
途に使用するL-C共振回路ブレーカは、日本のレギュレータ(標準JEC-7152)よりも低い最大電
流(50kA)が許容され、これは、L-Cベースの共振ブレーカのより速い回路開放動作で可能とな
る。本質的に、このようなブレーカでは、キャパシタ放電(電子的にトリガされる)によってL
-C共振発振が設定され、AC回路と同様に、電流がゼロまで発振するようになる。この発振は急速
に減衰するが、減衰中、電流がゼロになると真空回路ブレーカが回路を開く。最近の米国特許出
願、 No(13 / 697,204)は、この機構が高電圧DC(HVDC)回路にも適用でする。
DC電源を切る最も速い方法は、切り換え可能なパワーエレクトロニクスデバイスを使用し回路を
開放し、通常、サイリスタまたはトランジスタのいずれかの半導体や真空管を使用。これらの設
計は、全回路負荷がオン状態のスイッチを通過し、スイッチ自体の抵抗は重要参考事項となる。
最も一般的なタイプのパワー電子スイッチの場合、典型なポンプ式液体冷却剤を必要とする高出
力回路用の大形冷却負荷のように典型的なオン状態損失は、送信電力の0.25~0.50%であり、こ
れは多くの用途で容認できないほど大きい。能動冷却の必要性は、コストと環境への影響を増大
させ、スイッチの信頼性を低下させる。
ABB社は、パワーエレクトロニクスおよびメカニカルスイッチのハイブリッドである純粋なパワ
ーエレクトロニックサーキットブレーカよりも低いオン状態損失を維持しながら、回路ブレーカ
を含むDCスイッチの動作を高速化する別の方法の主な開発企業であるが、このハイブリッド法で
は、少なくとも2つのパワー電子スイッチと高速メカニカルスイッチが組み合わされ、第1のパ
ワーエレクトロニクススイッチは、高耐圧(ただし、オン状態の損失が大きい)の第2のパワー
電子スイッチを介して電流を第2の経路に転流する低損失、低電圧耐圧スイッチで構成されてい
る。
この第2電力電子スイッチは、IGBTトランジスタのスタック、ゲートターンオフ(GTO)サイリ
スタのスタック、または電流を遮断することができる様々な種類のチューブで構成でき、第2電
力電子スイッチを電子的にオフにする前に、低電圧耐圧の第1の電子スイッチが、直列接続され
た機械的スイッチにより、生じる電圧サージから保護しなければならず、第2高電圧能力遮断ス
イッチは、機械的スイッチの可動電極の最小分離に達するまで回路をはアークの再点弧を防止す
る。
この直列接続のメカニカルスイッチは、スイッチの中で最も遅いコンポーネントで、高速化によ
りハイブリッドスイッチを高速化する。現在使用されているトムソンコイル 電磁誘導金属環高
速メカニカルスイッチは、電磁石の反発またはトムソン(Thompson)コイルによるコンデンサ放
電(誘導磁気反発)により磁気的に加速される電極を有し、電極は真空中または六フッ化硫黄ガ
ス気体混合物中で分離する。
中電圧DC(MVDC)用のハイブリッドブレーカでは、前記第1低電圧耐圧スイッチは望ましくは
IGCT(集積ゲート整流サイリスタ)である。 前記第1の低電圧耐圧スイッチは、望ましくは、
IGBTアレイに電流を整流する単段IGBTであり、直列接続された多数のIGBTを有し、各IGBTは金属
酸化物バリスタ(例えば、 MOV)。
第2高電圧能力遮断スイッチは、直列接続されたIGBTトランジスタアレイ、ゲートターンオフサ
イリスタ(GTO)のスタック、冷陰極真空管、または電力の流れを遮断することができる同様の
電力電子スイッチを含み、接続された電極の機械的応答に、トムソン・コイル作動式機械的スイ
ッチが約100マイクロ秒の応答遅延時間であることが報告されている。
ハイブリッドスイッチが回路遮断器でもある場合には、電流によって生成された磁場に蓄積され
た誘導エネルギーを吸収するために、半導体遮断装置またはコンデンサバンクなどのエネルギ
ー吸収スナバもなければならない。上述のハイブリッドブレーカは、100メガジュールを超える
ことができるHVDC回路内の蓄積された誘導エネルギーの大部分が、回路遮断器の動作中に半導
体ブロックデバイスによって吸収される例である。
以上、大規模蓄電池技術の実用性を確認、まだ、Innolith社の保有技術の詳細は明らかにできなか
ったが、同社が言うように実用性が実証されれば、「再生可能エネルギー100%社会」は現実となる。
これは愉快である。
【社会政策トレッキング:バラマキは正しい経済政策である 17】
Yutaka Hrada, Wikipedea
第3章 ベーシック・インカムは実現できるのか
第2節 代替財源と考えられるもの
地方交付税交付金等は、地方への補助金であって、17・1兆円であるが、その多くが使途を変
えることが難しいものであり、かつ、民生費などすでに説明した他の予算項目として計上されて
いるものなので大きく削減することはできない。しかし、足りない分を支給するという地方交付
税の制度が、無駄な支出や地方の民間の人件費とかけ離れた公務員人件費を誘発している可能性
もある。うち、五%余の一兆円程度は削減可能であろう。
以上から、公共事業予算5兆円、中小企業対策費1兆円、農林水産業費1兆円、民生費のうち福
祉費六兆円、生活保護費1・9兆円、地方交付税交付金1兆円、合計15・9兆円が削除可能な
政府支出となる。これに削除可能な社会保障関係費19・9兆円を百計したものは35・8兆円
となる。これによってBIの導入で赤字になる32・9兆円を上回る代替財源が存在するとみな
すことができる。
なお、BIは20歳未満人口にも給付するので、これは奨学金に代替できる。ただし、奨学金の
貸与額は1兆円、利子補給、返済しないものへの穴埋め、事務費などは1000億円のレベルと
考えられるので(文部利学省高等教育局学生・留学生課「〔独〕日本学生支援機構JASSO〕奨学
金貸与事業の概要」2012年6月)BIの実現性を議論する際にはマージナルな意味しかない。
さらに重要なのは、成長によって所得が増え、税収が増えることである。2014年度の雇用者
報酬と混合所得の合計は、2012年度に比べて3%程度は増加するだろう。これにともない税
収も3%増加し、77・3兆円から79・6兆円に、すなわち2・3兆円増大しているだろう。
BIのために生まれる財政赤字額はすでに2・3兆円減少しているのである。
第3節 貧しい人々の人数とBIの水準
BI政策、あるいはより広く、所得再分配政策を行い、それらの政策が所得階層ごとにどのよう
な効果をもたらすかを知るためには、所得階級ごとにどれだけの人がいるのか、特に、所得の低
い階級で、どれくらいの人がいるのかを知ることがまず必要である。しかし、日本のデータは極
めて心もとない状況にある。
所得の低い階級に重点を置いて調査している統計として、厚生労働省の「国民生活基礎調査」か
おる(2013年版の「国民生活基礎調査」があるが、これには「世帯数、世帯人員、所得金額
階級別」のデータがないので、2013年版を用いている)。「国民生活基礎調査」での所得調
査は、7323のサンプルを調査しているが、日本全体の所得階級ごとの世帯数、世帯人数は発
表していない。「全国消費実態調査」は、5万~6万世帯の調査から2人以上および単身世帯の
世帯数001万という母集団を推計している。この世帯数と、「国民生活基礎調査」の所得階級、
世帯人数階級の分布比率を用いて所得階級、世帯人数階級ごとの世帯数を計算した。このように
推計すると日本の人口が1億3092万人となるので、さらに日本の人口1度2751万500
0人により平均世帯人員を調整した。日本には十分な統計がなく、それゆえ得られる結果は暫定
的ないしは試論的なものにしかならないということである。それでも、このような試算を積み重
ねていくことがBIの実現に資すると私は信じている。結果は、表3-2のようになる。
出所:厚生労働省「平成24年一国民生活基礎調査」,総務省「平成21年全国消費実態調査」(2
人以上および単身世帯).
註:「全国消費実態調査」の世帯数を「国民生活基礎調査」の所得階 級ごとの世帯分布比率を
掛けて計算.この結果から人口を推計する と1億3092万人となるので,2012年の人口1億2751
.5万人により,世帯当たり人数を補正.1人当たり所得は所得階級の中間の値を世 帯当たり平
均人数で割ったもの、50万円未満の中間値は25万円,2収拾万円以上の中間値は2a狛万円とした.
「平成24年国民生活基 礎調査」では、福島県を調査していない.
表に見るように、所得が年50万円未満は48万世帯、50万円から100万円未満は295万
世帯、100万円から150万円未満は320万世帯ある。所得階級別の平均所得を、所得階級
50万円未満の世帯は平均25万円、所得50万から100万円未満の世帯は平均75万円、所
得100万円から150万円未満は平均125万円とすると、50万から100万円未満の世帯
の一人当たり平均所得は年53・2万円、100万円から150万円未満の世帯の一人当たり平
均所得は年76・3万円である。世帯当たりの人数から、一人当たり所得平均23・2万円の人
は51万人、一人当たり所得平均52・2万円の人は416万人、一人当たり所得平均76・3
万円の人は523万人いる。この523万人のうちの最上位の人は世帯所得が150万円である
から、一人当たりは88・2万円(=150÷平均世帯人員1・6人)である。前述のように、
ここではBIの水準を年八四万円としているので、これ以上の所得階級
の人はBI以上の所得がすでにあることになる。そこで、BI未満(正確に言うと88・2万円
未満)の人数は世帯収入150万円未満までの所得階級の人の人数を足して990万人(=51
万+416万+523万)いることになる。
原田 泰著 『ベーシック・インカム 国家は貧困問題を解決できるか』
この項つづく
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