極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

映画音楽をロールピアノで ③

2023年09月04日 | 環境リスク本位制

  
彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと
伝えられる"招き猫"と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え。(戦国時
代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした部隊編のこと)の兜
(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ。

 

 


【再エネ革命渦論 159: アフターコロナ時代 160

技術的特異点でエンドレス・サーフィング
    特異点真っ直中  ㊶
 



給電能力を有した高速光通信の実証に成功
8月29日、日本電信電話(NTT)と北見工業大学は,1本の通信用光ファイバ
を用いて、高速かつ良好な通信品質を維持したまま10km以上先の無電源地
点へ1W以上の電力を供給することに世界で初めて成功
【概要】
光通信技術と無線アクセス技術の進展・普及により、日常生活ではどこで
も高速のデータ通信が利用できるようになった一方で、電源供給が困難な
地帯では、無線アクセスの基地局を確保することが難しく、光通信の送信
器や受信器を駆動することが困難だった。また近年、大規模地震や台風な
どにより、広域かつ長時間にわたる停電が発生し、復旧までに時間を要す
る深刻な事態が頻発している。災害発生時には、被災地域との連絡手段を
いち早く確保することが重要となる。このため、通信用と給電用の2種類
の光信号を1本の光ファイバで伝搬し、無電源の遠隔地との光通信を実現
する技術が検討されている。

しかし、従来の技術では光ファイバの入力光強度限界※1により10km以上
離れた場所に、光通信装置の駆動に必要な電力供給は不可能。IOWN(Inno-
vative Optical and Wireless Network
)構想
IOWの大容量光伝送基盤を実現する
要素技術の1つであるマルチコア光ファイバ(以下「MCF」)の研究開発
を進めており、今回、MCFを使った光給電伝送について検討した。


IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想とは
【成果】
本研究では現在一般的に使用されている通信用光ファイバと同じ直径の細
さで4個の光の通り道(コア)を有するMCFを用い、世界最高の自己給電
伝送能力を実現

①マルチコア光ファイバ(MCF)➲下図1.にMCFを用いた光給電伝送
システムの概要を示す。今回使用したMCFは、既存の光ファイバと同じ細
さで、かつ各コアが既存光ファイバと同等の伝送特性を有するため、通常
の光通信(光給電を必要としない光通信)にも既存の伝送装置と組み合わ
せて使用することができる。また、各コアが独立して(コア間で光信号の
混信を生ずることなく)使用できるため、任意のコアを給電用にも通信用
にも、あるいはその双方に割り当てることができる。

本検討では光給電量を最大とするため、4コアに波長1550nmの給電用の光
源を入力した。更に、4コアのうちの2コアを用い、各コアに波長1310nm
の上りおよび下り信号を割りあてることで双方向の光通信を実現。また、
2コアの組合せを2セット設定することもでき、これにより2つの独立し
た通信システムを構成することが可能。


図1 マルチコア光ファイバを用いた光給電システムの概要

②世界最高の自己給電伝送能力
光給電能力は伝送距離と供給電力の積で表すことができる。本検討では、
MCFの適用で単位断面積当りの供給電力を最大化し、光給電効率の劣化要
因となるシステム内の戻り光を抑制することで、MCFを14km伝送後に約1W
の電力を得た。光給電能力は14W・kmで、これは世界トップの性能指数(
図2左参照)。さらに、本検討では自己給電による伝送速度10Gbit/秒の
双方向光通信も実証しました。10Gbit/秒の伝送速度は、現在、一般ユーザ
用にサービス提供している光通信の最高速の伝送速度。本検討では、2コ
アで上り下りの1システムの構成について検討を行い、14km伝送後で良好
な伝送特性を確認した。伝送速度と伝送距離の積を、自己光給電伝送にお
ける伝送性能の指標と考えると、本検討では140Gbit/秒・kmの世界最高の
伝送性能を実現した(図2右参照)。 光給電能力は伝送距離と供給電力
の積で表せる。


図2.光ファイバを用いた自己給電光伝送の実験例における、供給電力と
 伝送距離の関係(左)および伝送容量と伝送距離の関係(右)


本検討ではMCFの適用で単位断面積当りの供給電力を最大化し、光給電効
率の劣化要因となるシステム内の戻り光を抑制することで、MCFを14km伝
送後に約1Wの電力を得ることができました。光給電能力は14W・kmで、こ
れは世界トップの性能指数である(図2左参照)。さらに、本検討では自
己給電による伝送速度10Gbit/秒の双方向光通信も実証しました。10Gbit/秒
の伝送速度は、現在、一般ユーザ用にサービス提供している光通信の最高
速の伝送速度。本検討では、2コアで上り下りの1システムの構成につい
て検討を行い14km伝送後で良好な伝送特性を確認しました。伝送速度と
伝送距離の積を、自己光給電伝送における伝送性能の指標と考えると、本
検討では140Gbit/秒・kmの世界最高の伝送性能を実現することができ(図
2右参照)。
【展望】
現在の光ファイバと同等の特性を有するマルチコア光ファイバを用いるこ
とで、通常の長距離高速光通信にも、光給電型の双方向光通信にも対応で
きることを示したものです。これにより、災害時・緊急時には、電源回復
が困難なエリアに通信ビルから給電光を送出することで通信装置を遠隔駆
動しネットワークのレジリエンスが向上できます。また、将来的には平時
においても河川・山間部などの非電化エリアや、強電磁界や腐食などによ
る電化困難エリアなど、あらゆる場所で光通信を提供可能とすることがで
き、多様なIoT機器と連携したセンシングネットワークの実現にも貢献で
きる。
【補足】光ファイバの入力光強度限界➲光ファイバの出力光強度は入力
側の光強度に比例して増減するが、入力光がある光強度(閾値)を超える
と入力光が違う成分(波長)の光に変換される現象が生じ、出力側の光強
度が増加せず飽和する。この閾値が光ファイバの入力光強度限界となり、
入力光強度限界は、光ファイバの伝送距離が長くなるほど、また光ファイ
バ中の光信号を伝搬する領域(コア)が小さくなるほど低下。このため、
高速光伝送に適した小さなコアを有する通信用光ファイバでは、より遠方
により高強度の光信号を送ることが困難であった。


強光から光合成装置を守る仕組み
活性調節因子チオレドキシンの新たな役割の発見
9月1日、 京都産業大学と岡山大学は,植物の葉緑体において光合成の調
節因子として働くチオレドキシンタンパク質が,変動する光環境下で強す
ぎる光から光合成タンパク質を保護する働きがあることを明らかにした。
【概要】
植物は光エネルギーを用いて二酸化炭素から糖などの有機物を固定する光
合成反応を行なう。光合成反応のうち,光合成電子伝達反応では光を必須
だが,過剰な光は望ましくない。 光合成電子伝達反応において利用され
ない余剰の強光は活性酸素種などを生成し,光合成タンパク質の損傷を引
き起こし,光合成活性の低下につながる(光損傷)。このため,植物は強
光から身を守るためのさまざまなメカニズムを備えている。これまで,研
究グループは,チオレドキシンと呼ばれる光合成関連タンパク質調節因子
に関する研究を行なってきた。モデル植物シロイヌナズナの葉緑体には5
種類のチオレドキシン(f型,m型,x型,y型,z型)が存在し,光合成関
連酵素の活性化など光合成反応の調節に関与している。f型やm型のチオレ
ドキシンについてはその役割がよく理解されているが,x型およびy型のチ
オレドキシンの役割は明確ではなかった。 そのため,研究グループは,
x型およびy型のチオレドキシンタンパク質を欠失させたシロイヌナズナ突
然変異体を作成し,光合成機能や植物の観察を通じて解析を行なった。



【成果】
通常の一定な光量の光条件では,x型・y型チオレドキシン変異体と野生株
には明確な違いは見られなかった。しかしながら,光環境が変動する条件
下での研究では,x型・y型チオレドキシン変異体は光合成電子伝達反応が
阻害され,光化学系Iタンパク質が光損傷を受けることがわかった。これ
により,変動光照射後,x型・y型チオレドキシン変異体では光化学系Ⅰの
活性が野生株と比べて顕著に減少していた。 また,x型・y型チオレドキ
シン変異体では成長が阻害され,葉の色が薄くなるなどの変化も見られた。
さらに,x型・y型チオレドキシン変異体では植物の生重量が64%減少し、
光合成に不可欠なクロロフィル含量も29%減少していた。
この研究では,変動する光条件下において,x型およびy型チオレドキシン
が光合成タンパク質を光による損傷から保護する役割を果たしていること
を明らかにした。また、この2種類のチオレドキシンが光環境の大きな変
化において、植物の成長に重要な役割を担っていることも示された。
【展望】
研究グループは、今回の研究で明らかにされたメカニズムをさらに詳細に
理解することで,激しく変化する光環境に対する耐性をもつ作物の改良に
役立つことが期待されるとしている
【技術情報】
原 題:x- and y-type thioredoxins maintain redox homeostasis on photosystem
      I acceptor side under fluctuating light
掲載誌Plant Physiology  2023.8.22

DOI    : https://doi.org/10.1093/plphys/kiad466


レーザーが痛みを抑制することを実証
9月1日、富山大学らのの研究グループは、レーザーが痛みを抑制すること
を実証 低出力レーザー治療で痛みを伝達する神経活動を抑制することを
動物実験で実証。
【要点】
1.皮膚の上からレーザーを照射することで痛みを伝える神経細胞の活動
 を抑制することを、電気生理学的手法※1を用いた動物実験で検証した。
2.レーザーは皮膚で約90%減衰し約10%が坐骨神経に届くこと、約10%
 のレーザーでも痛みを伝える神経活動を抑制することを明らかにした。
3.経皮的レーザー照射の作用メカニズムや現象の詳細が解明されること
で、低出力レーザーのさらなる普及や適応疾患の拡大に期待。
【概要】
皮膚の上から坐骨神経にレーザーを照射(経皮的にレーザーを照射)する
と、痛みとして感じられる強い刺激(痛み刺激)による神経活動のみが抑
えられることを動物実験で実証。また、坐骨神経におけるレーザーの強さ
は皮膚上の約10%に減少していたにもかかわらず、坐骨神経に直接レーザ
ーを照射した場合と効果は同等であることを見出した。低出力レーザー治
療※2は、痛みの緩和、抗炎症効果、組織再生、傷の治癒など、さまざまな
効果が報告されている治療法。しかし、低出力レーザー治療がどのように
痛みを緩和するのか、ターゲットとする組織にどの程度のレーザーが到達
すれば効果があるのか、統一的な見解は存在そのメカニズムは不詳。
【成果】
成熟ラットの脊髄後角に記録電極を刺入し、皮膚に機械刺激※5を加える
ことで脊髄後角の神経細胞の発火を記録した。機械刺激を加えるために、
決まった圧力を加えることのできるvon Freyフィラメントを使用し、痛み
刺激にあたる太いフィラメント、痛みと感じない弱い刺激(触刺激)にあ
たる細いフィラメントを使用しました。波長808 nmの半導体レーザーを使
用し、臨床の使用方法と同様に、経皮的にレーザーを照射した。次に、成
熟ラットの坐骨神経にフォトダイオードセンサを埋め込み、経皮的にレー
ザーを照射することで、レーザーが坐骨神経に到達するのか検証。 坐骨神
経への経皮的レーザー照射は、触刺激による神経活動には影響せず、痛み
刺激による神経活動を選択的に抑えることが明らかにした。これは、
低出力レーザー治療が、触覚に影響を与えずに疼痛を治療できる可能性を
示す。さらに、フォトダイオードセンサによる計測で、レーザーは皮膚で
約90%が減少し、残り約10%が坐骨神経に到達したことが示された。興味
深いことに、過去に報告した坐骨神経に直接レーザーを照射した時と、本
研究の経皮的レーザー照射とで効果を比較したところ、神経活動の変化率
は同等。坐骨神経におけるレーザーの強さが皮膚上の約10%に減少したに
も関わらず効果は同等であった。
【展望】
低出力レーザー治療が神経活動を抑制する現象の理解が深まることで、治
療の適用範囲が広がり、より多くの人々に利用されることが期待されます。
そのために、現在は疼痛モデル動物を使用した基礎検討を行っており、低
出力レーザー治療がどのように痛みを取り除くのか、治療の仕組みを解明
していく。
【関係技術情報】
・論文名:Relationship between Laser Intensity at the Peripheral Nerve and Inhib--
    itory Effect of Percutaneous Photobiomodulation on Neuronal Firing in a Rat
  Spinal Dorsal Horn
・掲載誌:Journal of Clinical Medicine
・DOI   : https://doi.org/10.3390/jcm12155126

フェムト秒レーザー照射後の金属内部挙動観測
大阪大学の研究グループは,世界で初めてフェムト秒レーザー照射直後の
金属材料内部の応力,ひずみ,塑性変形の複雑な挙動を示すことに成功。
フェムト秒レーザーは一般的には固体材料の微細加工や眼科治療,外科手
術などに用いられるが,この数年の間に新しい加工法としてフェムト秒レ
ーザー衝撃加工が開発されている。金属材料にフェムト秒レーザーを照射
したときに工藤する衝撃波をフェムト秒レーザー衝撃波と呼び、このフェ
ムト秒レーザー衝撃波を利用した加工法がフェムト秒レーザー衝撃加工。


図1.フェムト秒レーザー衝撃波によって金属材料が超高速で変化する様
   子を捉える実験体系

金属材料にフェムト秒レーザーを照射したときに駆動する衝撃波をフェム
ト秒レーザー衝撃波と呼び、このフェムト秒レーザー衝撃波を利用した加
工法がフェムト秒レーザー衝撃加工。フェムト秒レーザー衝撃加工によっ
て、物質中に特異な微細構造が作り出され、また。金属材料は鍛えられ強く
なり壊れにくくなる。そのため,フェムト秒レーザー衝撃波の特性は,他
の衝撃波の特性とは異なる可能性があると思われてきた。しかしながら,
フェムト秒レーザー衝撃波による金属材料の変形は超高速であるため,そ
の変形挙動を正確に捉えることはこれまで困難だった。

【要点】
1.フェムト秒レーザー照射直後の金属材料内部の衝撃波伝播に伴う応力、
 ひず み、塑性変形の複雑な挙動を示すことに世界で初めて成功した。
2.フェムト秒レーザー照射直後の金属材料の変形は超高速であるため、
 その原 子スケールの変形挙動を正確に捉えることは困難であった。
3.長寿命材料の創成と構造物の延命を可能とするフェムト秒レーザー衝
 撃加工法のさらなる発展が期待でき、カーボンニュートラルおよび安全
 ・安心社会の実現に貢献する。

【概要】
過去100年以上にわたり、凝縮物質の衝撃圧縮の本質を理解することが大き
なテーマとして研究されてきました。20年ほど前に、フェムト秒レーザー
照射によって凝縮物質が衝撃圧縮されることが分かった。金属材料にある
程度高強度のフェムト秒レーザーを照射すると、照射された部分の金属材
料が瞬時に気化・プラズマ化し除去されるため、固体材料の微細加工や眼
科治療、外科手術などに用いられるが、この数年の間に新しい加工法とし
てフェムト秒レーザー衝撃加工が開発されている。金属材料にフェムト秒
レーザーを照射したときに駆動する衝撃波をフェムト秒レーザー衝撃波と
呼び、このフェムト秒レーザー衝撃波を利用した加工法がフェムト秒レー
ザー衝撃加工である。フェムト秒レーザー衝撃加工により、物質中に特異
な微細構造が作り出され、また、金属材料は鍛えられ強くなり壊れにくく
なる。そのため、フェムト秒レーザー衝撃波の特性は、他の衝撃波の特性
とは異なる可能性があると思われてきたが、フェムト秒レーザー衝撃波に
よる金属材料の変形は超高速であるため、その変形挙動を正確に捉えるこ
とはこれまで困難であった。
【成果】
X線自由電子レーザー施設 SACLAのX線自由電子レーザーを用いて、フェム
ト秒レーザーを照射し衝撃圧縮されて超高速で変形している途中の金属材
料の原子の動きを調べた(図1)。金属材料としては、鉄を用い、フェムト
秒レーザー照射後にX線自由電子レーザーを照射するタイミングを何通り
も変えて、それぞれのタイミングにおけるX線回折パターンを取得した。
こうすることによって、超高速の原子の動きを捉えることに成功する。そ
の結果、フェムト秒レーザー衝撃波による変形の初期過程は、意外にも、
従来の衝撃波によるものと同じであることが分かる。また、理論的に予測
されていた応力波と歪み波のピークの時間的なずれを、初めて実験的に発
見しました。さらに、応力波と歪み波のピークの間に塑性波のピークが存
在するという、理論的にも予測していなかった新しい発見をする。

【展望】
長寿命材料の創成と構造物の延命を可能とするフェムト秒レーザー衝撃加
工法のさらなる高度化と、それによるカーボンニュートラルおよび安全・
安心社会の実現が期待されます。さらに、二律背反の関係にある強度と靭
性を両立させる新規材料の設計に新たな道を切り拓くと期待する。

【関係技術情報】
原 題:“X-ray free electron laser observation of ultrafast lattice behaviour under
      femtosecond laser-driven shock compression in iron”
掲載誌:Scientific Reports
D O I   : 10.1038/s41598-023-40283-6


風蕭々と碧いの時













John Lennon Imagine

 

今夜の寸評:Yes, I Can Work it Out.

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映画音楽をロールピアノで ②

2023年09月02日 | 環境リスク本位制

  
彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと
伝えられる"招き猫"と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え。(戦国時
代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした部隊編のこと)の兜
(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ。

 スイレン
草津市水生植物公園みずの森

       父母のしきりに恋し雉子のこゑ  芭蕉

白秋・金秋・素秋の朝、彼女に近親者の命日を尋ねると、小さき備忘録を
取り出し読む声を聴きながら、芭蕉の俳句が過ぎり、輩(ともがら)の命
日をも思い出す一瞬があった。これも残暑疲れがなせる技かと、芭蕉をな
どる。

          輩のしきりに恋し風の盆 
                          



          天高しハイスピードバスケット
                              


 






図 一次元の欠陥が整列した新しい有機−無機ハイ
 ブリッド化合物の結晶構造

一次元の欠陥が整列した新しい有機−無機ハイブリッド化合物
ペロブスカイト太陽電池の耐久性向上に期待
6月31日、東京工業大学の研究グループは,ペロブスカイト太陽電池の材料
として有望視されるFAPbI3(FA = CH(NH2)2)にチオシアン酸イオンを導入し
た,新しい有機−無機ハイブリッド化合物の合成とその結晶構造解析。
【要点】
1.チオシアン酸イオンを導入した新しい有機-無機ハイブリッド化合物
の合成と結晶構造の解明に成功。
2.得られた化合物がペロブスカイト構造の安定化に寄与することを発見。
3.ペロブスカイト太陽電池の耐久性向上に期待。
【概要】
ペロブスカイト太陽電池の材料として有望視されるFAPbI3(FA = CH(NH2)2)
にチオシアン酸イオンを導入した、新しい有機−無機ハイブリッド化合物の
合成とその結晶構造解析に成功した。
ペロブスカイト太陽電池は、低コストでフレキシブルな次世代の太陽電池
として期待されており、再生可能エネルギー普及の一端を担う。ペロブス
カイト構造用語を持つFAPbI3はペロブスカイト太陽電池の主要な材料と
て知られているが、構造の安定化に150℃以上の高温が必要であり、室温
では徐々に発電効率の悪い別の構造に変化してしまうため、耐久性の向上
が課題とされていた。 本研究ではペロブスカイトFAPbI3のヨウ化物イオン
(I-)の一部をチオシアン酸イオン(SCN-)で置き換えた、新しい有機−無
機ハイブリッド化合物の合成に初めて成功した。結晶構造解析の結果、本
化合物はペロブスカイト構造に一次元の欠陥が周期的に整列した特異な結
晶構造を持つことが明らかとなった。さらに、今回合成に成功した化合物
はFAPbI3と共存することで、ペロブスカイト構造の低温での安定化を補助
する効果があることが明らかとなった。この知見を活かすことで、ペロブ
スカイト太陽電池の耐久性向上が期待できる。
【成果】
得られた化合物の単結晶構造解析を行ったところ、ペロブスカイト構造の
基本骨格は維持しているものの、チオシアン酸イオンがペロブスカイト構
造に一次元の穴を開け、その穴(欠陥)が周期的に整列していることが明
らかとなった(図1)。また、通常のFAPbI3ではペロブスカイト構造を安定
化するのに150℃以上の高温を要するが、今回発見された化合物と共存する
ことで、50℃以下でも安定化可能であることが分かった。研究グループは、
この結晶構造解析の結果の解釈から、得られた穴開きの結晶構造が足場と
して働き、ペロブスカイトFAPbI3を安定化するという機構を提案した。


図1.結晶構造解析によって得られたヨウ化物イオン(I-)の一部をチオ
  シアン酸イオン(SCN-)で置き換えたFAPbI3の結晶構造。

【展望】
今回得られた結果は耐久性向上のメカニズムを解く重要なカギとなる可能
性があり、今後のペロブスカイト太陽電池研究の発展に寄与すると考えら
れる。また、得られた新規物質の結晶構造は基礎研究の視点でも興味深く、
今後の新規有機−無機ハイブリッド化合物開拓にも寄与する結果であるとい
える。
【関係技術情報】
掲載誌 : Journal of American Chemical Society
論文タイトル : Thiocyanate-Stabilized Pseudo-Cubic Perovskite CH(NH2)2PbI3
                              from Coincident Columnar Defects Lattices
 
   DOI                :  10.1021/jacs.3c05390(External site)

✔ 
色素増感➲ペロブスカイト➲無機-有機化合物電子デバイス➲
 タンデム(多層化とこの20年間で飛躍積進化。特に代表格のタンデム
 型ハイブリッドペロブスカイト太陽電池デバイスは、タフで高い汎用性
 とローコストでフレキシブルな電子デバイスでありながらワイヤレスな
 電子器機の器機の中核電源に成長する。


ZEB市場規模予測
ZEBの市場規模は一貫して成長、2030年度には12兆300億円まで拡大
8月31日、
株式会社矢野経済研究所は、国内のZEB市場を調査し、要素技術
の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。ここでは、2030年度ま
でのZEB市場規模(建築物の工事費ベース)予測について公表。 政府によ
る「2050年カーボンニュートラル宣言」とそれを受けた脱炭素経営への進
展や、2021年10月に閣議決定された「第6次エネルギー基本計画」において
「2030年度以降の新築建築物へのZEB(ZEH)水準の省エネルギー性能確保
」、「省エネルギー基準の段階的な引き上げの実施」が明記されるなどの動
きがあったことで、近年は建築主の環境意識が一層向上している。 一方、
オフィスビル等を供給するデベロッパー各社においても、大手では自社の
開発物件について2030年度までにすべてをZEB化する方針を打ち出してお
り、今後はZEB設計が基本との認識が広がりつつある。また、ZEB Ready、
ZEB Oriented
については、非ZEB仕様の建築物と比較してイニシャルコスト
の増加分が低く抑えられるようになってきている。

【要約】
省エネ面で有利な個別分散方式空調が注目される  建物で消費されるエネ
ルギーは空調・換気・照明・給湯・昇降機等があり、建物用途による違い
はあるものの、主に空調のための温熱・冷熱をつくり出す熱源が概ね2~4
割を占める。空調には主に2つの方式があり、1つはセントラル空調方式(
中央熱源方式)で、もう1つは個別分散方式(個別熱源方式)である。近
年、特にZEBを目指す建築物件においては個別分散方式空調を選択する傾
向が見られる。個別分散方式はセントラル空調方式と異なり、フロアや部
屋ごとに稼働状況をコントロールできることから、無駄な電力消費を抑え
られる。従来、個別分散方式は配管の長さの制約から小~中規模の建築物
件を中心に施工される方式であったが、現在では改良が進んで対応可能な
配管長が延び、より大規模な物件にも適用できるようになっている。

【展望】
2030年までに新築建築物の平均でZEBを実現するとした政府目標などを踏ま
え、2030年度のZEB市場規模は12兆300億円まで拡大すると予測する。現在
計画中の新規建築プロジェクトについても、設計の初期段階からZEBとなっ
ているものが目立つことから、市場は右肩上がりでの推移が続く見通しで
ある。


2030年のワイドバンドギャップ半導体単結晶世界市場を3,176億円
矢野経済研究所は,世界のワイドバンドギャップ半導体単結晶市場を調査
し,製品セグメント別の動向,参入企業動向,将来展望をまとめ調査報告。
【要約】
SiC(炭化ケイ素)などのワイドバンドギャップ(WBG)半導体単結晶の世
界市場に関する調査結果を発表した。2023年の世界市場は前年比47.1%増
の268億8500万円になる予測だ。市場は拡大を続け、2030年には3176億120
0万円に達する見込。
【要点】
1.2023年は前年比47.1%増、SiCが4分の3を占めるSiC、
 GaN(窒化ガリウム)などのワイドバンドギャップ半導体単結晶は、パ
 ワー半導体デバイスを中心に採用が進んでおり、市場も堅調に拡大。Si
 C市場は本格的な成長期に入っていて、2025年以降の車載用途への採用が
 急成長のポイントになるという。LEDやLDなどの照明用途で採用が進む
 GaNは、パワーデバイスや高周波用途では優れた特性を持っており、従来
 の課題だったウエハーの大口径化や大量供給にメドが立ったことから、
 GaN on GaNデバイスとして展開される時期が近づきつつある。
  Ga2O3はSiCデバイスと比較してコストや性能のポテンシャルが高いこ
 とから参入プレイヤーも増えてきており、パワーデバイス市場に食い込
 む勢い。AlNは深紫外線のLED用単結晶として一定の需要を獲得。一方、
 サファイア基板を用いたタイプの深紫外線LEDの性能が向上。AlN基板の
 強みを発揮できる領域への展開が課題とされる。 

2.ダイヤモンド、市場拡大の鍵はニッチ需要への対応
 同研究所は2023年の注目トピックとして、ダイヤモンドの研究開発が加
速していることを挙げる。ウエハーメーカーのIPO(新規公開株式)や共同
研究などの成果が増え、材料やデバイスの開発が進んでいるという。2023
年現在、オーブレー(旧アダマンド並木精密宝石)から直径2インチのダイ
ヤモンドウエハーの供給が始まるほか、大熊ダイヤモンドデバイスでもダ
イヤモンドを使用した電子デバイスの量産化に向け準備が進む。同研究所
はダイヤモンドの市場拡大について、ニッチかつ付加価値の高いデバイス
に搭載され、他の材料が対応しきれないニーズに応えることが必須。

3.2030年の市場は3176億円1200万円規模へ
主にパワーデバイスでの採用がけん引力となり、ワイドバンドギャップ半
導体単結晶の世界市場は、2030年には3176億1200万円に達する見通しだ。
材料別ではSiCが3073億4800万円、GaNが52億8000万円、Ga2O3が30億5600万
円、AlNは13億5000万円、ダイヤモンドが5億7800万円。材料別構成比はSi
Cが96.8%を占めており、ワイドバンドギャップ半導体の中でもSiC市場の
成長予測が突出して高い。
※同調査は2023年4~7月、ワイドバンドギャップ半導体単結晶メーカーや
 関連企業、研究機関などを対象に行われた.


図.ワイドバンドギャップ半導体単結晶世界市場推移・予測 2023.8.28
via EE Times Japan 2023.8.31

アップルが製造に「3Dプリンター」導入
ブルームバーグのマーク・ガーマン記者によると、アップルはApple Watch
Series 9
の一部のモデルで使用されるステンレススチール製ケースを3Dプリ
ンターで製造するテストを行っている。アップルはSeries 9の生産量の10%
を占めるステンレススチール製ケースで、この取り組みを開始する。現在
Apple Watchのケース素材は他にアルミニウムがあり、Apple Watch Ultra
にはチタニウムが使われ、現行のステンレスチール製モデルには、従来の
製法である「鍛造」が用いられている。この製法は、材料である金属のブ
ロックをデバイスのサイズに近い小さな塊にするために用いられる。その
後、CNCマシンを使って切削加工を行い、部品を完成させる。3Dプリンタ
ーを用いることで、生産ラインを合理化し、製造にかかる時間を短縮すると
同時に、より少ない材料で製造が可能になる。 ガーマンによれば、新たな
技術はバインダージェット方式と呼ばれるもので、粉末状の物質を3Dプリ
ンターで噴射して、ケースサイズに近いものを作り上げ、その後、焼結と
呼ばれるプロセスで仕上げを行う。3Dプリンターへの移行は、開発段階で
は高価なようだが、時間の経過とともにコスト逓減。現状では、新たなプ
ロセスによるケース1個あたりのコストは、以前の方法と同等。今のとこ
ろアップルは3Dプリンターを用いた製造を一部の製品に限定されているが
将来的にはより多くのデバイスに用いることを検討。チタン製部品も3D
リンターで製造可能とされ、将来のApple Watch UltraiPhone Proがこのプ
ロセスで作られる可能性もある。 通常のApple Watch Series 9は、現在のと
ころアルミニウム製になることは間違いないが、アップルはこの素材で3D
プリントしたケースを大量生産する技術をまだ確立出来ていない模様。
via Forbes JAPAN

✔ システムもプロセスもアクティブティもネオ・ネオーテック時代。

代替タンパク質 (植物由来肉、植物由来シーフード、培養肉、培養シー
ード、昆虫タンパク)世界市場 世界市場規模は6,395億7,300万円
8月30日、前出研究所によると、2022年の代替タンパク質の世界市場規模(
植物由来肉、植物由来シーフード、培養肉、培養シーフード、昆虫タンパ
ク計)は、メーカー出荷金額ベースで、6,395億7,300万円と推計。​世界の
人口増加に伴い、食肉需要は増加している。農林水産政策研究所「2031年
における世界の食料需給見通し」(令和3年度)によれば、2018~20年の需要
と比較して、2031年の世界の食肉需要は増加傾向での推移が予測される。
牛肉では約0.62億トンから約0.71億トンへ増加し(2018~2020年比15.2%
増)、豚肉では約1.06億トンから約1.21億トンへの増加(同14.1%増)、
鶏肉では約1.05億トンから約1.28億トンへ(同21.8%増)増加することが
見込まれる。一方で、畜産由来の温室効果ガス排出や飼料・水資源の大量
利用など、畜産業が地球環境に与える影響が背景となり、将来的に従来の
動物由来の食肉のみで需要を満たすことが困難になる可能性が出てきてい
る。加えて、2022年から2023年に掛けては、不安定な世界情勢の影響から、
食品の供給不安定化や価格高騰が発生し、食料安全保障の強化が世界的な
課題となっている。 こうしたなか、豆類や野菜などを原材料とした植物由
来肉、動物細胞を培養して製造する培養肉、昆虫由来の代替タンパク質が
注目されている。加えて、水産物の持続可能な需給バランスの観点から、
植物由来シーフードや培養シーフードなど、代替シーフードの研究開発が
進んでいる。

1.植物由来肉・植物由来シーフード市場
日本では2023年・2024年に掛け参入事業者新工場稼働へ。これに対しアメリ
カでは、2020年に新型コロナウイルスの感染拡大の影響で外食産業が大き
な打撃を受けた反面、小売業が急成長した。2021年から2022 年にかけては、
食品産業全体がコロナ禍以前の状況に徐々に回復。一方で、2022年に発生
した急激なインフレーションはアメリカを含め世界の食品産業全体に影響
を与えた。食品価格の上昇は、買い控えなど、消費者の購買行動に影響し
た。このような背景から、アメリカの植物由来肉小売市場も影響を受けた。

2.展望
植物由来肉では、すでに一定規模の市場を持つアメリカ、欧州が今後も堅
調な伸びを見せると考える。加えて、中国などアジア圏では健康志向の高
まりとともに、植物由来肉の技術も飛躍的に進歩しており、今後は伸長す
るとみる。日本では、小売店舗における常温・チルド商品の販売拡大、冷
凍食品のラインナップ拡充や外食へのメニュー導入などが進むことで、消
費者の認知度が高まるとともに、JAS規格制定を受けた導入促進、SNSを活
用したマーケティングなどが追い風となり、需要が伸長する見通しである。
培養肉では、2020年12月にシンガポールで初の上市が行われた。2023年6月
にはアメリカでも生産・販売が認可され、スタートアップ企業を中心とした
研究開発が、アメリカ、シンガポール、イスラエル、欧州、日本などで行
われている。一方で、生産コストの高さが課題とされており、コスト低減
に向けた生産技術開発や効率化について、継続的な取り組みが進むとみる。
こうしたなか、2027年の代替タンパク質の世界市場規模(植物由来肉、植
物由来シーフード、培養肉、培養シーフード、昆虫タンパク計)はメーカ
ー出荷金額ベースで、1兆7,220億200万円を予測する。また、その後も拡大
基調で推移し、2035年には4兆9,064億5,900万円になるものと予測。

✔ 1993年前?鯰の養殖をかんがえていたころ、水産試験場を見学して、
 ニゴロブナの骨の柔らかさは琵琶湖の推進百メートル付近の北湖で棲息
 することによるとの説明で「水圧可変養殖試験槽」の試作を構想したを
 このブログで掲載した。それが実現していれば、深海魚の小食や水圧変
 動による食感、成長速度



『目次』
プロローグ 衝撃の海外レポート
第1章 一億人国家シナリオの行方
第2章 高出生率国と低出生率国の違い
第3章 出生率向上のための「3本柱」
第4章 「地方創生」と「移民政策」
第5章 議論百出の人口戦略法案
第6章 波乱の「人口戦略国会」
エピローグ 
「始まり」の終わりか、「終わり」の始まりか
【著者略歴】
山崎 史郎(やまさき しろう、1954年〈昭和29年〉12月17日 -)は、日本
の厚生・厚労官僚。リトアニア国駐箚日本国特命全権大使等を経て、内閣
官房参与(社会保障・人口問題担当)。
-------------------------------------------------------------------
第2章 高出生率国と低出生率国の達し
3 出生率低下の構造・要因の分析   
 野口の妹は、2ヵ月前に子どもが生まれたばかりである。非正規雇用で
育児休業制度が利用できなかったため、出産前に退職した。これから別の
職場でパートの仕事に就きたいので、ゼロ歳児保育を考えているらしい。
 「生まれたばかりで心配だけど、ゼロ歳のうちに保育所に入れば、その
まま持ち上がりでいられるから有利でしょ」という。住んでいる自治体の
認可保育所を希望しているが、現在は無職だし、勤めてもパート勤務だと
労働時開か少なく、入所選別の点数が低くなるので、選ばれるかどうか心
配している。非正規やパートは、育児休業だけでなく保育所の入所でも格
差がある。  
「お義姉さんは正社員だから恵まれているわよ。非正規は損だと、つくず
く思う。2人目は欲しいけど、このままじゃ無理」とあきらめ気味に話す。  
それでも、妹夫婦がどうにか子育てができそうなのは、野口の母親が近く
に往んでおり、何かと手伝ってくれているからだ。野口自身の子育ても妻
の親族の助けが大きな力になっている。これが、もし地方出身で、近くに
親族がいなかったらどうなるのか----と思ってしまう。  
友人の岩橋夫妻は、子どもが欲しくて以前から不妊治療を受けているが、
30代後半になると妊娠が難しいらしい。不妊治療は考えていた以上に、身
体的精神的、経済的につらいので、そろそろやめようかと思っているとい
う。野口夫婦にとっても、年齢的に見て2人目の決断をいつすべきかは、
悩みの種である。  

「20代後半から30代前半」の出生率の格差  
週明けから、子育て支援策の本格的な検討が始まった。野口は、部内会議
で議論を始める前に外部有識者を招いて、2回に分けて話を聞くこととし
た。
1回目の勉強会の講師は、人口学者の壱岐孝一である。壱岐とは、百瀬の
朝食勉強会に参加してもらって以来、連絡を取り合っている。出生率向上
のための子育て支援策を検討する前提として、壱岐には、スウェーデンな
どの高出生率国と、日本のような低出生率国の違いについて、分かりやす
く説明してほしいとお願いしていた。壱岐は、資料を配布しながら説明を
始めた。

「国民希望出生率のことは、すでにご存知だと思うので詳細は省くが、わ
が国の若年世代が結婚し、子どもを持つ希望が実現すると出生率は1・8
にまで向上すると試算されている。ところが、わが国の現状はというと、
1・34(2020年)という低出生率である。そこで、1・8程度の出生率を
維持している「高出生率国」のスウェーデンやフランスなどと「低出生率国
」の日本などとでは、どこがどう違うのか、その状況を比較分析してみる
こととしたい。  

 図(2-1)は、女性が何度の時に子どもを出産しているかを示す「女
性年齢階層別出生率」を 国別に比較したものである。これを見ると、国に
よって出生率が大きくバラついているのは「20代後半から30代前半」(図
の灰色の部分)であることがよく分かると思う。  
スウェーデンやフランスなどの[高出生率国1‐は、この年齢層の出生率
が、日本やイタリア、韓国といった「低出生率国」に比べて相当高い。ド
イツは、両者の中間に位置している。米国はやや特有で、20代前半から高
い。そして、いずれの国も30代後半になるとバラツキは縮まり、40代以降
は一様に非常に低い。
 なお、韓国の場合は、30代前半の出生率は日本などと大きくは変わらな
いが、20代の出生率が前後半を通じて非常に低いことが、出生率全体を大
きく引き下げている。
 このように元代後半から30代前半」にかけての格差が、出生率全体に大
きな違いをもたらしているのである。
 では、なぜ、このような格差が生じたのか。その答えを知るためには、
1970年代以降、各国で起きた現象をまず理解する必要がある。

出産の先送り(晩産化)」と「生み戻し(キャッチ・アップ)」
 実は、1920年ごろまでは各国の出生率の構造には、それほど大きな違い
はなく、女性の出産のピークはおしなべて25歳前後たった。ところが1970
年代降、各国では社会経済の変化、とりわけ女性の就業機会の増加によっ
て、一斉に出産時期の高齢化が始まり、それに伴い出生率は、人口置換水
準を大きく下回る水準まで低下していった。
 「出産の先送り(晩産化)」という現象である。この現象を、人口学の
専門家の中には、晩産化を 特徴とする「第二の人口転換」と呼ぶ人もい
る。
 ただし、出産の先送りは、それだけでは「実質的」に出生率が低下する
ことにはならない。
 「実質的」という言葉がミソなのだが、出産の先送り、すなわち女性が
子どもを生むタイミングが遅れていった場合には、その時点の出生率は当然
ながら低下する。
 しかし、もし出産を先送りした女性が何年かのちに出産し始めれば、そ
れ以降から出生率(正確には、女性ダ生で生む子ども数を意味する「合計
特殊出生率しは上昇し始め、最終的には同じ水準に回復する。
 したがって、この場合は出生率の「実質的」な低下ではなく、「一時的
」な低下となる。この現象を人ロ学では、出産の「タイミングの遅れ」に
よる効果であるとして、「テンポ効果」または「タイミング効果」と呼ん
でいる。この言葉は重要なので、覚えておいていただきたい。
 わが国も1970年代半ばから出生率が低下し始めたが、当時は、これ
はテンポ効果に過ぎないだろう、というのが専門家の支配的な見方だった。
やがて先送りの動きが止まり、以前より高い年齢で出産し始めれば、「生
み戻し(キャッチ・アップという)」が始まる、そうすれば出生率は再び
回復するだろう、と考えたわけである・しかし、わが国では、キャッチ・
アップは起きなかった----。

日本の出生率の構造的な変化
 ここで、わが国の出生率の動きを、構造面から見てみよう。わが国の出
生率は、1970年代半ば以降、ほぼ一貫して低下し続け、2005年には過去最
低の1・26となった。その後、持ち直したが、最近は再び低下に転じてい
る。

 図(2-2)は、こうした出生率の動きを、女性の年齢別出生率の視点
から分析したものである。これを見ると、わが国では出産の先送りをめぐ
って、次のような3つの動きがあり、出生率の構造そのものが大きく変わ
っていったことが分かる。
【Aの動き】20代は、前後半を通じて出生率が大幅に低下した。惣威の出
生率は、0・22(1975年)から0・05(2019年)へと、4分の1にまで大
幅に低下した。
【Bの効き】出生率のピーク年齢が25歳(1975年)から30歳(2019年)へ
と、5歳高齢化した。30歳の出生率は、1975年と2019年を比べると、途中
でわずかな上下動はあったものの、最終的にはほとんど変化がなかった。
 その結果、ピーク年齢時の出生率は、1975年の0・22(四域)から、
2019年のO∴目(四域)へと半減した。
【Cの動き】 一方、30~40代の出生率は上昇した。ただし、西成の出生
率を見ても、0・03(75言から0・08(2019年)へと、その上昇幅は限ら
れたものだった。こうした結果、20代の出生率の大幅な低下によるマイナ
スの影響を、30~40代の出生率の上昇ではカバーし切れず、わが国の出生
率は、全体として大きく低下していったのである。

「キャッチ・アップ」があった国と、なかった国
----次の図(2-3)を見ていただきたい。これは、前の図(2-2)と
同じく、女性の年齢別出生率の動きを、スウェーデンやフランス、そして、
低出生率国のイタリアについて示したものである。
 これによると、スウェーデンやフランスのような高出生率回では、出産
の先送りによって20代
前半の出生率は大幅に低下したが、その後、▽短期間をおいて「20代後半か
ら30代前半」の出生率が大幅に上昇した。まさに、テンポ効果によって、
出生率はいったん下がったが、1980年代後半以降、再び回復していく「キ
ャッテ・アップ」が起きたのである。
 ところが、日本やイタリアといった低出生率国の状況は異なった。同様
に、出産の先送りによって20代前半の出生率は大幅に低下していったが、
「20代後半から30代前半」の出生率のほうも低下、または、ほとんど上昇
しない状況が続いた。そのため、30代後半以降の出生率は若干上昇したも
のの、本格的なキャッチ・アップとはならず、その結果、出生率全体が非
常に低い水準にまで低下していったのである。



 つまり、スウェーデンやフランスの場合は、出生率の「山」は、同じピ
ークの高さと形を保ったまま平行移動したため、全体の出生率を表す「面
積」は変わらなかった。これに対して、日本やイタリアは、出生率の「山
」のピークの高さが大幅に低くなり言本の場合は、半分の高さになった)、
山の形全体が変形したことにより、「面積」(出生率)が小さくなったの
である。先ほど図(2-
11)で示したように、各国の「20代後半から30代
前半」の出生率(すなわち「山」のピークの高さ)に大きな格差が存在し
ているのは、こうした歴史的な構造変化の結果である。
 そうなると、この20~30代の年齢層に、1970年代半ば以降、何か起きた
のか、そして、今なお何か起きているのかが焦点となる。それを解明すれ
ば出生率向上の方策が見えてくるかもしれないからである----。
 
                          この項つづく

風蕭々と碧いの時












John Lennon Imagine

今夜の寸評:Yes, I Can Work it Out.

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映画音楽をロールピアノで

2023年09月01日 | 環境リスク本位制

  
彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと
伝えられる"招き猫"と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え。(戦国時
代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした部隊編のこと)の兜
(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ。



核融合エネルギーも俺に任せろ ②
さぁ、ポジティブ・シンキングで新時代を開拓?ひらこう
核融合エネルギー解放に未来を託せるか

1.特開2008-64641 鋼又はフェライト鋼中の窒素同位体濃縮による放
 射
性核種の低減方法 独立行政法人 日本原子力研究開発
前回の続き ➲
【実施例】
(2)アウトボード側フェライト鋼中の炭素14濃度
  窒素15を95%濃縮したフェライト鋼を用いた場合の炭素14濃度およびそ
れぞれの核種の寄与度を図5(a)(b)に示す。窒素15濃縮後の窒素14濃度は5
%である。窒素15濃縮により第一壁における炭素14濃度は7.8 × 107から
3.2 × 107Bq/kgに減少した。窒素15濃縮により炭素14の生成量は41%に減
少した。この41%と窒素14の濃度である5%との差は窒素15に起因する炭素
14によるものである。図5(b)において、窒素15の寄与度は第一壁において
は支配的であるが、深くなるにつれて減少している。フェライト鋼中の窒
素15濃度(95%)は窒素14濃度(5%)よりもかなり大きいが、深い領域では窒
素15の寄与度は小さくなり、窒素14の寄与度を下回っている。未濃縮窒素
に対する窒素15濃縮窒素における、炭素14濃度の比を図6に示す。もっとも
大きかったのは第一壁表面で、その値は0.4であった。この比は深くなる
につれて減少し、深い領域では0.1以下になった。炭素14の生成量を減ら
すためには、深い領域での窒素15濃縮が、より有効であったのは注目に値
する。 これに関する議論を以下に示す。15 N(n,np)14Cおよび15N(n,d)14C
核反応にはそれぞれ11MeVおよび8.5MeVの閾値がある。 それにより8.5MeV
以上エネルギーを持つ中性子のみが窒素15から炭素14を生成することが可
能である。図7にアウトボード側のそれぞれの位置(第一壁、銅製の導体シ
ェルおよび固定ブランケットの外側表面)における中性子のエネルギースペ
クトルを示す。第一壁表面から離れるにつれて低エネルギー側と比較して、
高エネルギー中性子束が顕著に減少している。全中性子に対する8.5MeV以
上の中性子束の比を図6に示す。これらの結果から高エ ネルギー中性子の
減衰により、窒素15から生成される炭素14は、第一壁表面からの距離が大
きくなるにつれて減少することが分かった。

図6.天然存在比窒素に対する窒素15濃縮した場合の炭素14濃度の比、お
よび全中性子に対する8.5MeV以上の中性子束の比を示す図であり、炭素14の
生成量を減らすためには、深い領域における窒素15濃縮が、より有効であ
った。


図7.アウトボード側のそれぞれの位置(第一壁、銅製の導体シェルおよ
び固定ブランケットの外側表面)における中性子のエネルギースペクトル
を示す図であり、第一壁表面から離れるにつれて低エネルギー側と比較し
て、高エネルギー中性子束が顕著に減少している。

(3)低レベル放射性廃棄物に分類するための窒素15濃縮の効果
図8にアウトボード側フェライト鋼における炭素14濃度を示す。窒素15濃度
は天然存在比(0.37%)と95%濃縮である。実証炉における交換および固定ブ
ランケットの運転期間は、それぞれ2年(稼働率:80%)および30年(稼働率:5
0%)である。日本における低レベル放射性廃棄物分類のための炭素14濃度
の規制値は3.7 × 107 Bq/kgである。未濃縮窒素を用いた場合には、炭素1
4濃度はこの規制値を大きく超えているが、窒素15濃縮の場合には、第一
壁および固定ブランケット内表面における炭素14濃度は、それぞれ 3.2×
107および1.0 × 107Bq/kgであり、規制値を下回った。一方、上記(1)
で示したとおりインボード側においては、中性子束がアウトボード側より
小さい為に、炭素14濃度もアウトボード側より小さくなる。そのため炭素
14に関しては、窒素15濃縮によりインボートおよびアウトボードのすべて
のブランケットが低レベル放射性廃棄物に分類可能である。ブランケット
の交換頻度を考慮すると、交換および固定ブランケットに用いられるフェ
ライト鋼の全体積は1200 m以上になると見積もられる。図8に示すとおり
ブランケットの背後に設置された機器(ブランケット支持材など)の炭素1
4濃度はブランケットよりもかなり小さい。それゆえ炭素14濃度に関しては、
窒素15濃縮により実証炉に用いられるすべてのフェライト鋼 が低レベル放
射性廃棄物に分類することが可能である。実証炉と同様に商業炉などの将
来の核融合装置でも窒素15濃縮は炭素14の生成を抑え低レベル放射性廃棄
物に分類するための有効な手段である。


図8.アウトボード側フェライト鋼における炭素14濃度を示す図であり、
窒素15濃度は天然存在比(0.37%)と95%濃縮であり、日本における低レベル
放射性廃棄物分類のための炭素14濃度の規制値は3.7 ×107 Bq/kgである。
 
これに関する議論を以下に示す。 15N(n,np)14Cおよび15N(n,d)14C核反応
にはそれぞれ11MeVおよび8.5MeVの閾値がある。 それにより8.5MeV以上エ
ネルギーを持つ中性子のみが窒素15から炭素14を生成することが可能であ
る。図7にアウトボード側のそれぞれの位置(第一壁、銅製の導体シェルお
よび固定ブランケットの外側表面)における中性子のエネルギースペクト
ルを示す。第一壁表面から離れるにつれて低エネルギー側と比較して、高
エネルギー中性子束が顕著に減少している。全中性子に対する8.5MeV以上
の中性子束の比を図6に示す。これらの結果から高エネルギー中性子の減
衰により、窒素15から生成される炭素14は、第一壁表面からの距離が大き
くなるにつれて減少することが分かった。 

(3)低レベル放射性廃棄物に分類するための窒素15濃縮の効果
図8にアウトボード側フェライト鋼における炭素14濃度を示す。窒素15濃
度は天然存在比(0.37%)と95%濃縮である。実証炉における交換および固定
ブランケットの運転期間は、それぞれ2年(稼働率:80%)および30年(稼働率
:50%)である。日本における低レベル放射性廃棄物分類のための炭素14濃
度の規制値は3.7 × 107 Bq/kgである。未濃縮窒素を用いた場合には、炭
素14濃度はこの規制値を大きく超えているが、窒素15濃縮の場合には、第
一壁および固定ブランケット内表面における炭素14濃度は、それぞれ3.2
× 107および1.0 × 107 Bq/kgであり、規制値を下回った。一方、上記
(1)で示したとおりインボード側においては、中性子束がアウトボー
ド側より小さい為に、炭素14濃度もアウトボード側より小さくなる。その
ため炭素14に関しては、窒素15濃縮によりインボートおよびアウトボード
のすべてのブランケットが低レベル放射性廃棄物に分類可能である。ブラ
ンケットの交換頻度を考慮すると、交換および固定ブランケットに用いら
れるフェライト鋼の全体積は1200 m3以上になると見積もられる。図8に示
すとおりブランケットの背後に設置された機器(ブランケット支持材など)
の炭素14濃度はブランケットよりもかなり小さい。それゆえ炭素14濃度に
関しては、窒素15濃縮により実証炉に用いられるすべてのフェライト鋼
が低レベル放射性廃棄物に分類することが可能である。実証炉と同様に商
業炉などの将来の核融合装置でも窒素15濃縮は炭素14の生成を抑え低レベ
ル放射性廃棄物に分類するための有効な手段である。

[発明の効果] 
特に、核融合炉において、炭素14の生成量を減らし、浅地埋設可能なLLM
の割合を増やすためのフェライト鋼中の窒素15濃縮の効果を調べた。
(1) 炭素14濃度に関しては、200ppmの窒素添加したフェライト鋼にお
いて、窒素15を濃縮することにより、核融合炉に用いられるすべてのフェ
ライト鋼(第一壁やブランケットを含む)をLLMに分類することが可能であ
る。
(2) アウトボード側の第一壁におけるフェライト鋼中の炭素14濃度は、
窒素15濃縮により7.8 × 107から3.2 × 107 Bq/kgに減少した、この値は
日本のLLM分類のための炭素14濃度の上限値である3.7 × 107Bq/kgより
小さい。
(3) 固定ブランケットにおいては、窒素15濃縮した場合の炭素14濃度
の最大値は1.0× 107Bq/kgであり、日本のLLM分類のための炭素14濃度の
上限値である3.7 × 107 Bq/kgよりかなり小さい。また、15N(n,np)14Cお
よび15N(n,d)14C核反応の閾値のために窒素15濃縮の効果は交換ブランケ
ットより固定ブランケットのほうが大きかった。 
                                                      この項了
-----------------------------------------------------------------
2.特開2023-028231 核融合炉用ブランケット 京都フュージョニアリ
 ング株式会社
【概要】
核融合炉では、重水素と三重水素(トリチウム)を含む混合燃料を真空容
器内でプラズマ化して保持し、核融合反応で生じる14.1MeVの一次
中性子からエネルギーを取り出して発電を行う。トリチウムは自然界に存
在しないため、炉を継続的に運転するにはトリチウムの消費分を補いつつ、
増殖する必要がある。このため、核融合炉では、核融合反応により生成さ
れる中性子の捕獲によるトリチウム生成と、核融合反応により生じる熱の
回収とを行うために、真空容器の内面にブランケットが取り付けられる。

ブランケットの一例として、特別に成分調整された低放射化フェライト鋼
(例えば、F82H)で構成された箱形状の金属容器(筐体)に、リチウ
ムを含むトリチウム増殖材、ベリリウムを含む中性子増倍材の層を交互に
設けたものがある。筐体内部に冷却水が流通する流路が形成されて、発生
した熱が回収される。筐体には、冷却水を供給して、回収するための配管
、生成したトリチウムを回収するために搬送ガスを供給し、回収するため
の配管が取り付けられる(例えば特開2004-239807;核融合炉のブランケッ
トモジュール構造)。
しかしながら、発生した熱を回収するために冷却水を使用する場合、冷却
水が構造材の破損により高温部に吹き込んだ場合には、水素発生などのリ
スクが避けられない。特に、冷却水を循環させる配管や、精製したトリチ
ウムを回収するための配送ガスを供給・回収するための配管が複雑になる
と、プラント全体の安全上の懸念及び潜在的なリスクの一つになる。
そこで、本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、炉設計をシ
ンプル且つ軽量なものとすることによって、プラント全体の構造的な健全
性を維持しつつ、高いトリチウム増殖性能を実現する核融合炉用ブランケ
ットを提供することを目的とする。

【要約】
下図4のごとく、複数のブランケットモジュール4aのそれぞれは核融合
プラズマに臨ませて配置される第一壁41と、第一壁41の背後に配置さ
れSiC又はSiC複合材を含む構造材料により形成された内部が中空の
筐体40と、筐体40内部において核融合プラズマから離れる方向に複数
連設された内部槽421,422と、第一壁41側の構造材料と最前列に
位置する内部槽との間に形成された前面側流路45と、前面側流路45と
最前列に位置する内部槽421とを連通させる流入孔45aと、隣接され
た内部槽421,422同士を相互に連通させる連通孔43aと、筐体4
0の外部から前面側流路45に冷却材を供給する供給路46と、最後尾の
内部槽422から筐体40の外部に冷却材を排出する排出管47とを備え
ることで、炉設計をシンプル且つ軽量なものとすることによって、プラン
ト全体の構造的な健全性を維持しつつ、高いトリチウム増殖性能を実現す
る。

図4.実施形態に係るブランケットモジュールの内部構成を示す断面図

【符号の説明】 P…核融合プラズマ  Pc…コアプラズマ  Ps…ソ
ルプラズマ  1…核融合炉  3…真空容器  4…核融合炉用ブランケ
ット  4a…ブランケットモジュール  6…ダイバータ  40…筐体
40a~d…構造材  41…第一壁  42…内部槽  42a~d…構
造材  43…隔壁  43a…連通孔  44…供給管  45…前面側流
路  45a…流入孔  46…供給路  47…排出管  51…トロイダ
ルコイル  52…ポロイダルコイル  53…センターソレノイドコイル 
201…熱交換機  202…VST装置 203…電磁ポンプ  421,
422…内部槽

[発明を実施するための形態】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る核融合路用ブランケットの実施
形態を詳細に説明する。図1に本実施形態に係る核融合炉の構成を示す。
なお、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するため
の装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品
の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発
明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えことがで
きる。

(核融合炉の構成)
 下図1に示す核融合炉1では、重水素とトリチウムを含む混合燃料を真
空容器3の内部でプラズマ化する。発生した高温のプラズマは、各超伝導
コイル51~53などによる磁界によって真空容器3の内部に保持される。
そして、プラズマ内部では、重水素とトリチウムの核融合反応が発生する。
なお、ダイバータ6は、核融合反応により生じたヘリウムと燃料粒子の排
気を行うとともに、ダイバータ6に流れてきた熱エネルギーの排出を行う。
詳述すると、核融合炉1は、いわゆるトカマク型の核融合炉であり、ドー
ナツ状で、垂直な断面の形状がほぼD字形の形状の真空容器3が設けられ
ている。真空容器3の外側には、超伝導コイルが設けられており超伝導コ
イルは低温状態に維持される。この超伝導コイルとしては、真空容器3の
外側の空間に、トロイダルコイル51、ポロイダルコイル52及びセンタ
ーソレノイドコイル53が設けられている。

センターソレノイドコイル53は、真空容器3のドーナツの中心の空間に
設けられている。トロイダルコイル51は、真空容器3の大径に沿って互
いに間隔をあけて複数が配置されている。これら複数のトロイダルコイル
51のそれぞれは、真空容器3のドーナツ状の筒部分を囲むように配され
ている。それぞれのトロイダルコイル51においては、真空容器3の大径
沿って互いに同一方向の電流が流れるように構成されている。また、ポロ
イダルコイル52は、真空容器3の大径に沿って形成された環状をなし、
すなわちドーナツ状の大径と同心に、複数本が垂直方向に互いに間隔をあ
けて配されている。

そして、トロイダルコイル51によって形成されるトロイダル磁場は、設
置されている複数のトロイダルコイル51によって形成される磁場の合成
磁場である。トロイダル磁場は、真空容器3内で真空容器3の大径に沿っ
て形成される。このトロイダル磁場の方向を、以下、トロイダル方向と呼
び、磁場の外側の領域についても使用することとする。また、ポロイダル
コイル52によって形成されるポロイダル磁場は、プラズマ内に誘導され
るプラズマ電流によって形成される磁場の合成磁場である。このポロイダ
ル磁場は、真空容器3内で真空容器3のドーナツ状の筒部分の垂直断面内に
沿って形成される。 
これらの磁場を合成して形成される全体合成磁場は、トロイダル磁場、及
びポロイダル磁場の全体合成磁場である。この全体合成磁場は、ドーナツ
状の表面に沿って形成されプラズマの中心軸に向かうような捻れた磁場と
なる。
核融合炉1では、重水素とトリチウムを含む混合燃料を真空容器3の内部
でプラズマ化し、発生した高温の核融合プラズマP(図2に示すコアプラ
ズマPc及びソルプラズマPs)は、トロイダルコイル51及びポロイダ
ルコイル52などによる全体合成磁場によって、真空容器3の内部に保持
される。この核融合プラズマの内部では、重水素とトリチウムの核融合反応
が発生し、ヘリウムと中性子が生成される。 ポロイダルコイル52の鉛直
方向の下方には、ダイバータコイルが設けられており、ダイバータコイル
による磁場とポロイダル磁場が重なった結果、ポロイダル磁場がゼロとな
るヌル点及びヌル点を含む磁力面であるプラズマ境界が生成される。プラ
ズマ境界の外側では、磁力線が内部にとどまることはなく、このため、プ
ラズマ境界の外側の領域に存在するプラズマ粒子は、プラズマ境界に沿っ
て流出する。この粒子及び熱的エネルギーを真空容器3の内部で捕獲する
ために、ダイバータ6が設けられている。このダイバータ6は、核融合反
応により生じたヘリウム等の排気を行うとともに、ダイバータ6に流れて
きた熱エネルギーの排出・回収を行う。
なお、真空容器3の内側には、ダイバータ6の他に、核融合プラズマにエ
ネルギーを付与するための電子サイクロトロン共鳴加熱(ECH:Electron 
CyclotronHeating
)装置や、プラズマ中に高エネルギー粒子を注入する中性
粒子ビーム入射加熱(NBI:NeutralBeamInjectionheating)装置などの一部も、
設けられている。 


図1.実施形態に係るトカマク型の核融合炉の構成を一部切り欠いて示す。
  斜視図

図2.実施形態において真空容器の内面に核融合炉用ブランケットが配置
された状態を模式的に示す説明図

図3.実施形態に係るブランケットモジュールの外部構成を示す斜視図

(核融合炉の動作)
以上説明した構成の核融合炉の動作は、以下の通りである。 先ず、重水
素とトリチウムを含む混合燃料を真空容器3の内部でプラズマ化する。発
生した高温のプラズマは、各超伝導コイル51~53などのコイルの磁界
によって真空容器3の内部に保持される。そして、プラズマ内部では、重
水素とトリチウムの核融合反応が発生し、ヘリウムと中性子が生成される。
粒子及び熱的エネルギーの一部は、ダイバータ6によって真空容器3の内
部で捕獲され、ダイバータ6により核融合反応により生じたヘリウム等の
排気が行われるとともにダイバータ6に流れてきた熱エネルギーが排出・
回収される。 【0030】 一方、核融合炉用ブランケット4では、各ブ
ランケットモジュール4aにおいて、電磁ポンプ203により供給管44
を通じて筐体40内部へ冷却材(液体リチウム鉛)が供給され、供給され
た冷却材によって筐体40内において発生した熱及びトリチウムが回収さ
れ、排出管47を通じて真空容器3の外部へ排出される。この各ブランケ
ットモジュール4aから排出された冷却材を介して熱交換機201及びV
ST装置202により熱及びトリチウムが回収される。そして電磁ポンプ
203により冷却材は再びブランケットモジュール4aに供給される。詳
述すると、電磁ポンプ203により供給管44を通じて筐体40内部へ冷
却材(液体リチウム鉛)が供給され、筐体40内に供給された冷却材は、
内部槽42の周囲に形成された供給路46を通じて、第一壁41側の構造
材料40aと最前列に位置する内部槽421との間に形成された前面側流
路45へと流入され、次いで前面側流路45から、内部槽421の構造材
42aに穿設された流入孔を通じて、内部槽421内へ供給される。また、
内部槽42内において冷却材は、隔壁43に多数穿設された連通孔43a
を通じて、プラズマ側の内部槽421から後方の内部槽422へと流通す
る。このように、冷却材は、供給管44から供給路46、前面側流路45
を経て、内部槽421,422を通過する間に、筐体40内において発生
した熱及びトリチウムを捕捉する。 この間、冷却材は、液体リチウム鉛で
あり、増殖材の機能を有することから、核融合反応により生じた一次中性
子の照射を受けて、リチウム鉛に含まれる質量数6のリチウムの核反応を
発生させてトリチウムが生成されるとともに、同時に、冷却材に含まれる
リチウム鉛と一次中性子との核反応が発生して二次中性子が生成される。

この二次中性子も核融合炉用ブランケット4内の冷却材と核反応してトリ
チウム生成に寄与する。その後、冷却材は、熱及びトリチウムを捕捉した
状態で、最後尾の内部槽422から排出管47を通じて、筐体40の外部
に排出され、これら各ブランケットモジュール4aから排出された冷却材
を介して熱交換機201及びVST装置202により熱及びトリチウムが
回収される。 (作用・効果) 以上説明した本実施形態に係る核融合炉用
ブランケット4によれば、先進的な炭化ケイ素複合材料(SiCf/SiC)及び
自己冷却リチウム鉛増殖材を用いた高温運転可能なブランケット設計が可
能となる。具体的に核融合炉用ブランケット4は、第一壁41にタングス
テン薄膜、ブランケットモジュール4aの構造材として炭化ケイ素複合材
料(SiCf/SiC)を採用し、液体リチウム鉛は増殖材と冷却材を兼ねること
から、核融合により発生した熱の取り出し、トリチウムの生産及び放射線
の遮蔽の役割を果たすこととなる。また、リチウム鉛は非圧縮性流体であ
り、空気や水との化学反応性が低いため、漏洩等の想定しうる事故シナリ
オにおいても安全である。さらにはリチウム鉛を循環させて冷却するため、
加圧水やヘリウムガスといった冷却材をブランケット内部に入れる必要が
なく、シンプルなブランケット構造が可能となる。

また、本実施形態では、筐体42内部に内部42槽を複数連設する構造と
するとともに、筐体40、内部槽42,各流路をSiC又はSiC複合材
を含む構造材料により形成するたため、内部槽42のサイズや配置を最適
化することができ、核発熱分布に応じた冷却材の流路を制御することがで
き、熱の回収率及びトリチウムの増殖性能を適正に向上させることができ
る。また、本実施形態のブランケット6では、供給管44から排出管47
に至る各流路が水平方向に配置されており、小さいポンプ動力で冷却材を
流動させることができる。 また、筐体40の各構造材や配管に密度3.21
g/cm3のSiCf/SiC構造材を使用していることから軽量性に優れ、鉄鋼材(
約8 g/cm3)に比べて遥かに軽いうえ、鉄鋼材料の構造材と比較して水素
同位体の透過が極めて少ない。SiCf/SiCを構造材とするブランケットでは
トリチウム透過による燃料損失や放射性物質の漏洩による問題がほとんど
生じない。
さらに、SiCf/SiCは、高温・中性子照射下においても、熱化学的安定性と
損傷回復性に優れており、従来材料よりも交換の頻度を下げることができ、
メンテナンスコストも低減できる。また、SiCf/SiCは、他の鉄鋼材料と比
較して中性子の反射・吸収が非常に少ないことから、高いトリチウム増殖
比を達成できる。 また、本実施形態に係るブランケットモ
ジュールでは、その構造材は全て中性子照射によって放射性同位体を生成
し、放射性廃棄物として処理される。SiCf/SiCの放射化レベルは、低放射
化フェライト鋼などの他の構造材と比較しても著しく低く、SiCf/SiCは1
日に3桁以上放射能を低減するするため、放射性廃棄物量を大幅に低減す
ることが可能となる。さらには、鉄鋼材料にリチウム鉛を流動させる場合、
ブランケット中で液体リチウム鉛の流れに対して強いブレーキが働く現象
などのMHD圧力損失が問題となるが、SiCf/SiCでは原理的にMHD圧力損失が
生じない。また、シリコンとカーボンは自然界に豊富に存在するため、Si
Cf/SiC材料は環境負荷が小さく、安定して調達できる。
また、本実施形態の第一壁41は、タングステン薄膜が塗布されているた
め、高熱負荷耐性を有し、中性粒子のスパッタリングの発生を低減するこ
とができる。また、タングステンとSiCf/SiCは熱膨張率の差が小さく、第
一壁41と筐体40との接合性も確保することができる。 
また、本実施形態に係るブランケットモジュールでは、冷却材として液体
リチウム鉛を用いるとともに構造材として炭化ケイ素複合材料(SiCf/SiC:
SiC又はSiC複合材)を採用しており、これらは高温で優れた共存性
を示すことから、安定性が隠されている。すなわち、SiCf/SiCは、1000℃
を超える温度においても安定しており、他の冷却材と比較して遥かに高い
温度で循環させることができ、鋼構造材にとって重大な課題である化学的
な腐食を引き起こさず、また高温で利用可能であるため、高効率ブレイト
ンサイクルを用いると、55%を超える発電効率が達成される。
なお、冷却材に加圧水を用いる場合、熱効率は33%程度である。また、
加圧冷却水を使用する場合、加圧冷却水が構造材の破損により高温部に吹
き込んだ場合に冷却水損失事故時の水素発生など、事故のリスクが避けら
れない。これに対して、本実施形態に係るブランケットモジュールでは、
自己冷却で冷却水を使用しないため、この冷却水損失事故が原理的に生じ
ない。なお、冷却材に水やヘリウムを利用するシステムの場合、トリチウ
ム汚染を伴う一次冷却材の想定される漏洩の軽減は重要であり、起こりう
る環境汚染の脅威に備えて、ヘリウム又は水が体積膨張した場合のサプレ
ッションプールの準備が必要である。さらに、本実施形態に係るブランケ
ットモジュールでは、細かい配管を使わないためシンプルな構造とするこ
とができることから、複雑な炉設計によるプラント全体の安全上の懸念及
び潜在的なリスクを低減することができるとともに、プラント全体の構造
的な健全性を維持しつつ、高いトリチウム増殖性能を実現できる。さらに、
本発明において冷却材としてベリリウムを配合する場合には、ベリリウム
増倍反応(Be + n →2He +2n)を誘発する高速中性子束の高い位置に必要
量のベリリウムを配置できるため、トリチウム増殖比が調整できる。特に、
本発明では、自然比のリチウム鉛やベリリウムを配合することにより、非
常にコストが高い高濃縮リチウム鉛(6Li 濃縮度:90%程度)を不要とす
るか、或いは使用量を低減することができ、コストの低減が可能となる。 
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、
例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していな
い。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可
能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更
を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に
含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に
含まれる。 
                                                      この項了

風蕭々と碧いの時

 









John Lennon Imagine






家仕舞作業の一環の作業時、偶然に、「映画音楽名曲全集」(洋楽)1997
年版 山野楽器(325曲)と「ハンド・ロール・ピアノ」(新品)を発見。
そういえば、作詞作曲をすることが若い頃の夢だったんだったことを思い
つき。「J-POP のルーッ考察」も本日で終了したこともあり、ブログで回
想録をつづりながら(2年はかかる)、ピアノ演奏をしながら、折々に創
作活動をきすることにした。どうなることやら、「核融合発電エネルーギ
ーの考察でも大変なのに」とおもいつつ、その実行を決める。

今夜の寸評:Yes, I Can Work it Out.

コメント
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