<3月の鑑賞予定映画>
~姫の犯した罪と罰~
2013年 日本映画 (2013.11.23公開)
配給:東宝 上映時間:137分
監督:高畑勲
製作:氏家齋一郎
企画:鈴木敏夫
原案&脚本:高畑勲
脚本:坂口理子
作画監督:小西賢一
色指定:垣田由紀子
音楽:久石譲
主題歌:二階堂和美 「いのちの記憶」
制作:スタジオジブリ/星野康二
声の出演:高倉あき・・・・・・・・かぐや姫 田畑智子・・・・・・・・女童
高良健吾・・・・・・・・捨丸 立川志の輔・・・・・・斎部秋田
地井武男・・・・・・・・翁 上川隆也・・・・・・・・石作皇子
宮本信子・・・・・・・・媼 伊集院光・・・・・・・・阿部右大臣
高畑淳子・・・・・・・・相模 宇崎竜童・・・・・・・・大伴大納言
古城環/中村七之助/橋爪功/朝丘雪路(友情出演)/仲代達矢
<見どころ>
数々の傑作を生み出してきたスタジオジブリの巨匠、高畑勲監督が手掛けた劇場アニメ。
日本で最も古い物語といわれる「竹取物語」を題材に、かぐや姫はどうして地球に生まれ
やがて月へ帰っていったのか、知られざるかぐや姫の心情と謎めいた運命の物語を
水彩画のようなタッチで描く。
声優陣には、ヒロインかぐや姫にテレビドラマ「とめはねっ! 鈴里高校書道部」などの朝倉あき、
その幼なじみを高良健吾が務めるほか、地井武男、宮本信子など多彩な面々がそろう。
<ストーリー>
今は昔、竹取の翁が見つけた光り輝く竹の中からかわいらしい女の子が現れ、翁は媼と共に
大切に育てることに。女の子は瞬く間に美しい娘に成長しかぐや姫と名付けられ、うわさを
聞き付けた男たちが求婚してくるようになる。彼らに無理難題を突き付け次々と振った
かぐや姫は、やがて月を見ては物思いにふけるようになり……。
<感想>
日本最古の物語『竹取物語』を、78歳の高畑監督が独自の解釈で描いています。
冒頭、「竹取物語」の序文から始まりますが、これで一気に絵本の中に入り込んで行く感覚が。
おとぎ話の絵本の挿絵のような、はたまた鳥獣人物戯画のような絵のタッチが繊細で
一気に引き込まれていきます。
とりわけ、背景の美しさにはため息がでるほど。水墨画風のタッチなのに、ものすごい奥行を
感じます。そして躍動感も半端ない。手描きの素晴らしさがスクリーンを通してビシバシ
伝わります。透明感のある背景に見惚れるばかりでした。
ジブリでいつも問題になるのは、アフレコですが、今作品は、先に収録したセリフに合わせて
映像を作って行くプレスコを起用しているおかげで、とても自然に聞こえ、全く違和感を
感じませんでした。「風立ちぬ」もこの手法でやればよかったのに~。
中でも、翁の声を演じた故・地井武男さんの演技は、素晴らしい!
人間味あふれる翁の声は、必見。遺作となってしまい、本当に残念です。。。
あと、宮本信子さんの語り手と媼の二役の声の演じ分けも素晴らしかったです。
かぐや姫を演じた朝倉あきさんも、人間味あるかぐや姫を演じ、良かったですね~。
月の人であるかぐや姫は、月の世界で罪を犯し、罰として人間界に下りてしまいましたが
やがて罰の期限が過ぎたため、月へ戻されてしまうわけですが、原作でも罪と罰が
描かれていないように映画もはっきりした原因は最後まで描かれていません。
ですが、映画を観ていて、個人的には穢れのない月世界のかぐやが、地球に興味を
持ってしまったことが罪だったのでは?その罰として、不浄の地球におとされ、地球に
嫌気がさしたら迎えに来てあげようと言うことだったのでは?
そう考えると、なるほどな~と思えてきます。
だが、月へ戻されるとわかった時、初めて虚飾にまみれたこの世界にも素晴らしいものが
たくさんあるということに気付き苦悩するかぐやの姿にとても共感できます。
「私は生きるために生まれてきたというのに・・・何をしていたのか!」
せっかく生を受けたのに、なにもせず受け身で行き、好きな人にもちゃんとうまく伝えられず
ただ単に生きていたことへの後悔が、この台詞に凝縮し、涙。
「いいえ、この世界は不浄ではありません!」
お釈迦様?から穢れのない月にいる方が幸せと言われたが、不浄の世界でも
素晴らしいことがたくさんあった、というのを目を見据えてはっきり言ったこのセリフに、また涙。
人間味あふれるキャラを通して、「生きる」ことをテーマにした作品と感じました。
一言で言うなら、高畑版「生きねば!」って感じ。そして、「風立ちぬ」が“矛盾”を描いている
のに対し、こちらは“対比”を描いているようにも感じました。
あと、音楽が素晴らしい。
特に、月の世界と地上世界と音楽で区別しているのが良かった。さすが久石譲さん!
全てにおいて、圧倒された作品でした。ぜひ映画館でご覧ください。
点数:10点 (10点中)