ある日、会社の3階にあるロッカーに入ろうと、外階段を上っていくと、手すりにカラスが止まっていた。そこを通らなければロッカーに入れないのだが、カラスがそこを動こうとしない。距離にして2~3m。突つかれそうな距離である。
「オイ!ちょっとそこどいてくれよ」と、思い切って声を掛けてみた。
ちょっと顔をそむけたようだが、知らん顔をしている。
「あのなぁここは人間の通るとこなの。そこどいてくれよ!」
…また知らん顔。正直ちょっと怖かったが、なんとかにらみつけていたら、渋々といった感じで飛んで行った。
ホッとしたが、あんなに近づいても逃げないとこをみると、もしかして人に飼われていたのかもとも思ったが、まさかね…。
とろが、翌日もそこに止まっていたのである。
その嘴の太さといい、図々しさといい、あいつだ。再び声を掛けてなんとか追っ払った。
それからしばらく見なかったので安心していたのもつかの間、また止まっていた。
「この間の奴か!」声を掛けると、
なんだかてれくさそうに足踏みすると、口にくわえていた黒々としたものを、ポトリと我が足元に落として去って行った。?恐る恐る顔を近づけて見ると、なんと、サンマの頭だった!
「それ、お近づきのしるしですよ」と、同僚達は大笑い。
ま…気持ちだけ受け取っておくことにした。その後しばらくあいつに会っていない。
会いたいような会いたくないような…、ウ~~~~ム。
■ ハシブトの跳ねてゆずらぬ冬日向 by issei