ある日、車で信号待ちをしていると、車道脇に雀が飛び出してきた。
「な、何だ」よく見ると雀の回りをしじみ蝶が舞っている。いや正確にはしじみ蝶が雀に追われていたのだ。
私はいつもあのとらえどころの無い蝶の飛び方に感心していたのだが、今まさにその威力を発揮していたのだ。雀が食べようと嘴を向けるのだが、あの飛びで巧みにかわしてゆく。
ついに雀は交差点の真ん中まで出ているのに気づき、あわてて飛び去ってしまった。
しじみ蝶は何事もなかったかのように飛び回っている。
「パーパーッ」後ろからのクラクションに我に返った私は車を発車させた。
バックミラーに目をやると、しじみ蝶の姿はすでに無く次々と後続の車が映っているのみだった。
■ 書きゆける変幻自在と黒揚羽 by issei
私がバイクで出勤していた頃、家の近くのゆるい坂道を登っていくと、何やらポトリと落ちてきた。
バイクを止めてよく見ると雀の子供である。
まだ羽根になっていない羽を、上げてヒョコリヒョコリと歩こうとしている。次に羽根をバタバタさせて飛び立とうとしているのだが、当然飛び立てなくてボール状になって坂道をコロコロ転がり落ちていく。羽ばたかなければ止まり、羽ばたけばまたコロコロ。
そのまま空溝に落ちてしまった。
私は拾おうとしたが会社に持っていくわけにもいかず、家に持って帰るには時間が無い。
後ろ髪を引かれる思いだったが、振り切って会社に向かった。
誰か…拾って…育てて…くれ。
帰りに溝をのぞいたのだが、なにもなかった。わたしは、ゆっくりゆっくり坂を下りて帰った。
■ 地に落ちて木漏れ日ころぐ雀の子 by issei