家の近くにいつも何やらズダ袋をぶら下げて歩いている人が居た。
いわゆるホームレスである。まだ若く30代ではないだろうか。日焼け顔に無精ひげ、ヤセ型でうつろな目をして腰を浮かして歩いていた。
たまに座っているときは新聞や本を読んでいる。
「この間英語の本読んでたよ」とカミさんが言う。ほう…インテリなのかな。その人に何があったのか、何者なのか知らないが、とにかくひたすら国道沿いなどを歩いていた。
「競歩選手になればいいとこいくかもね」
などと家族のネタにされたりしていたのだが、4~5年前からパッタリ見なくなった。
どこやらの道で行き倒れたのだとか、病気で死んだらしい…とかの噂は耳にしたのだが、真偽のほどは定かではない。
しかし…秋風を肌に感じたりすると、ふと、あの人の人生は…と思ったりする。
夢はあったのか、どこへ行きたかったのか、どこへ帰ろうとしたのか、こんなよけいな詮索を起こさせるけっこうな存在感だった。
そしてその存在感こそがあの人の生きた証なのかも知れない。
果たしてあの人は…気になるのだ。
■ 秋深したましい探し歩く人 by issei