つぶや句

夢追いおっさんの近況および思うことを気まぐれに。

アイすべきやつら

2006-06-10 19:10:49 | 思ひ出ぼろぼろ
私は元漫画家という、普通の仕事に
つぶしのきかないキャリアの持ち主である。
それが曲りなりにも就職し、社員として働いている。
勤めている会社の従業員はパートを含めて総勢約百人。
私は元漫画家のせいか“面白い”キャラクター
の人に目が行ってしまう。すぐに二人の人が目に止まった。
一人は、会社の忘年会で面白い司会をしていた。
うちの会社の忘年会は従業員全員が一同に介し、
役員全員(五人)が前に居並ぶという恐るべきものだが、
彼がマイクを持てば怖いものなし。
役員なんてなんのその、痛快にぶった切る。
身長は180を越す巨漢で、当時は四十代にして頭の
天辺がツルリといっていたが、今は完全に剃りあげて、
私に「ラスプーチン」と呼ばしめる風貌となっている。
この彼が実はものすごくシャイで、普段は借りてきた猫のように
おとなしい。一体あの司会をやっているのは
何者だ、と思える程である。またこの落差がいいのだ。
しかし、私の目に止まるだけあって平気で無断欠勤する
まっとうな人でない一面を持ち合わせている。
私たちは時折り飲み会で酒を酌み交わすが
「オレは人を楽しませるのが好きなんだ」と言うだけあって
実に楽しい。私は彼の風貌を見るたび、まじまじと眺めて
「描きたーい」と思っていた。
彼も「描いてくれよ」と言うので、写真だけは
撮っていたのだが、なかなかイメージが
固まらず、一年ほど経ってやっとイメージが浮かんだので
描いて彼に渡した。その絵は、彼の顔が怒涛の海に
沈んでいく中、まわりをカモメが飛んでいる、というものだ。
一瞬ぎょっとしたような表情を浮かべたが、
「サンキュウ」と言って受け取った。
その後の飲み会で、「あれって彼の人生が沈むっていうこと?」
と、飲み仲間の女性が言うのである。「おうオレって沈むのかあ」
とラスプーチン、「いやあそんなんじゃなくて、
ああいうイメージが浮かんだから…」と私。
どうも不評だったようである。
この飲み仲間は同じ会社でも、部署が違っていて、
彼や彼女らはドライバーである。
そんなラスプーチンが常々「個展とかやるとき教えてくれよ絶対
行くから」と言ってくれていたので、今回の個展を
教えたら、早速初日に来てくれた。
そして彼らと会話が弾むうちに、例の絵の話になった。
「あの絵悪かったね」と私が言うと「何が?」ラスプーチンは
怪訝な顔をして聞き返した。「だってすごい不評だったもん」
と私が言うと「そんなことないよオレ今でも部屋に飾ってあるよ」
と言うのである。「エエ…だって絵を渡したとき一瞬ヤな
表情したじゃない」と私が言うと「あれはあんまり良かったんで
ビックリして声が出なかったんだよ」とラスプーチンは言い、
「オレあの絵気に入ってるんだよ」と言うのである。
なーんだ早く言ってくれれば…これでけっこう気に病んで
いたのである。とにもかくにもこんな気のいい連中なのである。
アイしてるよ~これからもよろしく~。


コメント
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