つぶや句

夢追いおっさんの近況および思うことを気まぐれに。

事件ですよ!

2006-11-11 04:06:01 | ちょっとした出来事
会社の工場の三階に従業員のロッカーがある。
その日は早番なので、午前4時に出勤である。

ロッカーで着替えていると、何だかうめき声のようなものが
聞こえる。この三階の奥には、前経営者の関係者Sさんという80歳
近い女性が一名住んでいて、よくTVを付けっぱなしにしているのか、
微かに声が聞こえる事があるのだ。

それかな…と思って着替えを続けていると、
さらにその声がとぎれとぎれにつづく…
「こりゃあやっぱり変だ」スワッ!事件か。
サスペンスドラマの冒頭シーンが、頭をよぎる。

入り口まで行って耳を澄ますと「痛い痛い…!」と聞こえる。
「どうかしたんですか!」声を掛けてみるが、「痛い痛い」の
繰り返しである。入り口に手を添えて引いてみると、鍵は掛かっていない。

「失礼しますよ!」私は声を掛けてから、開けて中に入った。
付けっぱなしのテレビの前にSさんが布団に寝たまま「痛い痛い!」
と唸っている。
「どこが痛いんですか?」「脚が痛いよう」と悲痛な声だ。

私にはどうすることもできないので、「救急車を呼びますよ!」
と声を掛けてから救急車を呼んだ。

私は仕事があるので、救急車が到着するまで、仕事の準備を急ぐ。
今日の仕事の段取りをつけるべく、一人先に出社していたのである。
何があるか分からないので、少し早めに出るのが常で、それで
仕事も遅らすことなくできた。

やがて救急車が到着し、事情を説明して病院に搬送してもらった。
ほっとして、後から出社してきた連中と仕事の準備を急ぐ。

そろそろ仕事を始めるべくスタンバイしていると、「さき…ひとは…」
どっかで聞いたような声が聞こえる、それもついさっき。
「エッ…ま・まさか」

なんと先ほど救急車で搬送されたはずの女性が立っているではないか。
一瞬幽霊かと思ってしまった。が、あの痛がっていた足で立っていたのである。
まだ1時間も経っていない。

「あなたが救急車を呼んでくれたの」「エ・エエ、だ・大丈夫なんですか?」
「ウンお蔭さんで、ありがとう」。わざわざお礼を言いに来たのである。

その足で三階への外階段を手摺りに摑まりつつよろよろと登っていく。
私はたまらず、片腕を肩にまわして手伝った。

それにしてもまだこんな状態の人をよく病院が外に出したもんだと
思ってしまった。

Sさんを抱えつつ我が母のことを思った。
母は我が家の一階に住んでいるのだが、氷川きよしのDVDを
付けっぱなしで寝ていることがよくあるのだ。

お年寄りの生活は似たり寄ったりなのかもしれない。
しかも今年の春、同じように倒れて入院したのである。
脳梗塞の疑いがあったが、幸いMRA撮影では異常はなかった。
こんなこともあって、ただの人ごとではないのだった。

ともあれ大したことなくて、まずはほっとした。その後
Sさんは検査入院して元気に帰ってきた。

しかしこのことで、日常に潜むアクシデント、ちょっとした
事件が、常に身の回りにあることを思い知らされたのだった。






コメント
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