つぶや句

夢追いおっさんの近況および思うことを気まぐれに。

恐るべき旨さの秘密

2007-03-10 08:00:08 | ちょっとした出来事
恥ずかしながら小料理屋で、まっとうなフグ刺しを
初めて食べた。

いや正確には若かりし頃、忘年会で食べた
記憶がおぼろげにあるだけである。

後はスーパーで売っているフグ刺しを気まぐれに
買ってきて食べるぐらいなのだ。

これは正直フグ刺しといえる代物ではない。
何フグだかわからないが、おいしいと思ったことはないのが
現状だ。

刺身・鍋・皮・それから頭の皮のなますみたいなもの
などが出てきた。

刺身は3センチ大に切ったあさつきを、
フグ刺し2~3切れにクルリと巻いてピリカラのたれで食べる。

さぞや旨かろうと食べたのだが、あさつきの刺激と
ピリカラの刺激で、フグそのものの味は正直よくわからなかった。

ただ貧乏性な食いっぷりで、ガツガツといってしまったのだ。

まあ…そいつはいいとして、刺身を食べてる間に
店主が「一人3切れづつね」と言って皿に並べたものを
持って来た。なんとフグの肝である。

どう見ても生に見える。「こ、こんなの食べて大丈夫なの?」
当然ながらの疑問をぶつける。時折り食通の有名人などが、
フグの肝を食べて亡くなったというニュースを耳にするではないか。

すると「これおいしいよ」と隣の常連がパクリ。
「めったに食べれないんだから」と催促され、
ゴクリと生唾を飲み込んだが、パクリといってしまった。

もうこうなれば3切れをパクリ、パクリ。
確かに口の中にとろけるような肝特有の旨みがひろがる。

一番のおいしさだったのだが、しばらくは体に変調がこないか
不安なままほかのものに手をだしていた。

すると「みんな3切れ食べたの?」と声がかかり
「食べたよ」とみんなからの返事である。

「余ってるよだれか食べて」と肝の乗った皿がまわってきた。
確か店主は一人3切れと言ったはずである。

当然ながら私は手でさえぎって拒否したのだが、「4切れ
食べても大丈夫でしょう?」と常連が店主に掛け合う。

店主はコックリとうなずく。うなずき終わるか終わらないうちに
私のたれの中へ4切れ目の肝が入れられてしまったのだ。

もうこうなったら覚悟するしかないなあ…と4切れ目を
苦笑いの口にパクリ。食べてしまったのだった。
このまま逝ってしまったら…なんだかなあ…と思いつつ帰宅した。

一夜明けた今、なんの変調もなくパソコンに向かっている。
そこで思い出したのだが、実は一度ものすごく旨いフグ
を食べたことがあったのだ。

もう10年以上前になるが、千葉の大原というところに
フグ釣りに出かけたことがあって、そこで釣れたショウサイフグ
を食べたのである。

船長が船の上で私が釣ったばかりのショウサイフグを
無造作にさばいてくれ、「ほれ!」と皿にのせて差し出したのである。

当然ながら恐る恐る食べたのだが、その美味しかったこと。
その記憶がまざまざとよみがえったのである。

しかし後で聞いた話によると、なんとその船長の縁戚の人がフグの
肝を食べて亡くなっていたそうである。
それは知らずに食べてしまった事故らしいのだが、
げにフグの恐ろしさをあらわしているではないか。

こうして考えてみると、フグの旨さの恐るべき調味料は
あの毒の恐怖ではないかとさえ思えるようになった。

もしもフグに毒がなかったなら、ただのおいしい
魚だったに違いない。
関西で“てっぽう”と呼ばれるほどの恐るべき旨さの
存在感はなかったに違いない。

旨さを味わうということの奥深さを思ったゆうべだった。




コメント
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