つぶや句

夢追いおっさんの近況および思うことを気まぐれに。

無人野菜売り場

2021-08-09 04:58:43 | ちょっとした出来事
我が住まいの近くに、無人野菜🥦🥬売り場
がある。

一見普通の民家で、格子戸の出入り口
から中が見え、野菜が小分けにされて、
ザルに乗せて並べられている。

大根、ナス、胡瓜、トマト🍅など、10種類ほどと、
品数は大したことはないが、自家栽培の野菜を
売っていて、基本100円均一の小銭入れが設置
されている。

通常は、スーパーで買い物を済ませているが、
夕食時、どうしても欲しい野菜が切れていた
場合などに利用している。

自家栽培のせいか、野菜に個性があって、
以外に旨いのだ。

ある時、トマト🍅が欲しくて、店内に入り、
見ると、150円と書かれてある。

何も書いてないのは、100円なのだが、それ以外は
値段が書いてあるのだ。

設置されてるビニール袋に入れ、お金を入れようと
財布の小銭を探したが、100円玉が見つからない。

しまった、入ってない、あるのは500円玉、
その他10円、1円ばかり…。

500円玉を出してはみたが、お釣りは
ありそうにない。

しょうがない、一旦家へ引き返して、
100円玉を持って来るか…と、500円玉を
仕舞おうとした時、店の奥から、「お釣りはありますよ」
と声がして、おばあちゃんが顔をのぞかせた。

70〜80歳くらいのちょっと腰の曲がった
人だったが、にこやかな表情をしていた。

「いつもありがとうございます」と言って、
350円のお釣りを手渡したのである。

ちょっと驚いてしまった。

先ほどまで、まったく人の気配を感じなかった
からである。

しかも、こちらの様子がよく分かっていたのだ。

尚且つ、いつもありがとうございます。
というフレーズである。

ワタシが時折り買いに来るのを、分かっていた
という事なのだ。

お釣りを受け取り、「どうも」と一言言って
店を出て、ちょっと振り返ったら、もう
姿は無かった。

以来、その店に行く度、ちょっと奥を
チラ見して、耳を澄ますようになったが、
相変わらず奥の引き戸は閉まったままに
なっている。

今回、3個買ったので、100円玉を入れると、
「カシャ、カシャ」と落下する音が響く、
その時、ちょっといたずら心が起き、3個目を
しばし間を置いてみたが、奥はやはり気配なく、
深閑と静まり返っている…。

諦めて落とした最後の100円玉が「カシャリ」
と無人野菜売り場に響き渡った…。

買い終えし 無人売り場の 秋深し
               Issei




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