春庭Annex カフェらパンセソバージュ~~~~~~~~~春庭の日常茶飯事典

今日のいろいろ
ことばのYa!ちまた
ことばの知恵の輪
春庭ブックスタンド
春庭@アート散歩

ぽかぽか春庭「源氏物語絵巻・徳川美術館」

2013-02-05 00:00:01 | エッセイ、コラム
2013/02/05
ぽかぽか春庭@アート散歩>お金持ちのコレクション(5)徳川美術館、源氏物語絵巻

 五島美術館のミュージアムショップに源氏物語絵巻の絵はがきとか額絵を売っていたので、「源氏絵巻」見たくなり、江戸東京博物館に出かけてきました。「尾張徳川家の至宝」展をやっていることは知っており、先日、見てみようかと両国で下りたのに、大相撲のほうを見てしまった。それで、1月29日に再び両国へ行きました。

 ちょうど「尾張徳川家の至宝」展第二期展示の新聞広告が出たところなので、会場は平日なのに、けっこう大勢の人が見学していました。人の頭越しに見るようなときは見学をしないことにしているのですが、まあ、なんとか人の間をぬって見ることができました。

 尾張徳川家のお宝は、徳川美術館に所蔵展示され、水戸徳川家のは、水戸市の徳川ミュージアムに。しかし、将軍であった徳川宗家のお宝はというと。江戸城引き渡しの際、13代徳川家定御台所であった天璋院は、城内のお宝のほとんどを持ち出さず、家具調度などを残したまま引き渡しを行ったと伝えられています。代々の将軍が集めた書物の保管庫「紅葉山文庫」もそのまま新政府に渡され、現在の「国立公文書館」に引き継がれています。 累代の宝物は、宗家の「徳川記念財団」よりも尾張家の「徳川黎明会」のほうが豊富に残っているのではないかと思うのですが、どうでしょうか。

 尾張徳川家のお宝のうち、鎧や刀剣、茶道具はちゃっちゃと見てとばし、源氏物語絵巻と、国宝「初音(はつね)の調度」をじっくりと。

 「初音の調度」は、3代将軍家光の長女千代姫(母・振の方)が尾張の徳川光友に嫁する際の嫁入り道具のひとつでした。嫁入りと言っても、千代姫が尾張の光友に輿入れしたときはわずか2歳半。家康の側室お亀の方(尾張徳川家初代義直の母)は、 15歳になる孫の光友の嫁として、家康の孫3代家光の長女千代姫を望みました。家光も御三家との関係を強化する必要がありました。いわば政略結婚なのですが、光友と千代姫は仲むつまじく、千代姫が15歳ころまでには、実質的な結婚生活に入り、千代姫は2男2女を産み、長男は尾張徳川家3代目、次男は高須藩主(2女は早世)。62歳で亡くなると、2年後には夫の光友もあとを追うように亡くなりました。

初音の調度より化粧道具


 展示されていたのは、初音の調度の数々のうち、化粧道具入れです。鏡は展示されていませんでしたが、姫君を美しく飾り立てるためのおしろい入れだの髪油入れだのが、美しい蒔絵の箱に収められています。そのほかにも、徳川美術館には、厨子棚・黒棚・書棚などの三棚や貝桶、文房具などが収蔵されています。幕府のお抱え蒔絵師である幸阿弥家十代長重が千代姫誕生に際して父の将軍家光から注文を受けたと、文献に書かれてあるそうです。

 戦後の混乱期に相続税の支払いに困って伝来の宝物を売り払った大名家が多い中、尾張徳川家は、財宝を戦前から「法人所有」に移管していたため、相続税を逃れることができ、ほとんどの財物を保存することができました。

 源氏物語絵巻は、東屋の巻が本物、柏木の巻が現状模写の展示でした。芸大で現状模写展を見たときも思いましたが、模写もすばらしい出来です。
 柏木の巻は、光源氏が女三の宮の産んだ男の子(のちの薫大将)を抱き上げているシーンです。光源氏自身が父親の妻を盗んで男の子を産ませた経験を持ち、今度は柏木に盗まれた妻が産んだ子を、我が子として育てることになった苦悩の場面。

柏木の巻


 更級日記の孝標女がおばさんにもらった「源氏」を夢中になって読みふけったとき、この絵巻もあったでしょうか。この絵巻を目にすることができた乙女達は、どれほどうっとりとし、夢中になったことでしょう。紫式部が「源氏物語」を完成させたとされるのは、1009年。絵巻が描かれたのは12世紀。千年のときをへだてて、私もまた、絶世のイケメンがなやましげに、妻の産んだ不義の子を抱いているようすに、あら~、イケメンは悩み深くっても、いい男なんだわぁと、うっとり見とれてきました。

<つづく>
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする